2012 Fiscal Year Research-status Report
生体膜脂質に関した新規薬力学的相互作用による麻酔薬の効果減弱・増強
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23593005
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Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
土屋 博紀 朝日大学, 歯学部, 教授 (30131113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝上 真樹 福井大学, 医学部附属病院, 講師 (10231614)
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Keywords | 麻酔薬 / 生体膜 / 脂質 / 相互作用 / 薬力学的 / 植物成分 / 膜流動性 / 麻酔機序 |
Research Abstract |
作用部位としての生体膜脂質に着目し、歯科用麻酔薬が新規薬力学的相互作用を示し得る可能性を追究することが本研究の目的である。平成24年度の研究においては、平成23年度に確立した膜作用解析法を活用して一連の応用実験を行った。その結果、以下のような成果を得た。 1.膜作用の立体選択性:生体膜脂質に対する作用が麻酔薬の効果と密接に関係するとの観点から、薬物立体構造に選択的な作用機序仮説を提唱するとともに、キラルな脂質二重層をもつ心筋細胞モデル膜に臨床濃度のブピバカイン立体異性体を作用させた後、膜流動性変化を測定して膜作用強度の立体選択性を実験的に検証した(成果発表雑誌:Medical Hypotheses; Anesthesia and Analgesia)。 2.膜作用と心毒性:生体膜脂質との相互作用が局所麻酔薬の毒性発現に関与することを実証するため、心筋細胞モデル膜やミトコンドリアモデル膜に心毒性濃度のブピバカインとリドカインを作用させて膜流動性変化を測定し、虚血で高まる心毒性の薬理学的背景を考察した(成果発表雑誌:Biological and Pharmaceutical Bulletin; Basic and Clinical Pharmacology and Toxicology)。 3.植物成分と麻酔薬の薬物相互作用:平成23年度の検索結果に基づき、植物成分と麻酔薬の薬力学的相互作用に関する予備的研究を行った。膜活性を示すフラボノイドとアルカロイドを特定し、それらが局所麻酔薬ならびに全身麻酔薬による膜流動化に対して協力・増強作用あるいは拮抗・抑制作用を示す可能性を検討した(成果発表雑誌:Pharmacognosy Communications; International Journal of Pharmacology)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.平成23年度に確立した膜作用解析法が応用性に優れていたため、計画した一連の実験を予想以上に円滑に進めることができた。 2.生体膜相互作用に着目して提唱した麻酔機序仮説が、研究を展開・促進する上で極めて有用な理論的基盤・道標となった。 3.研究分担者:溝上真樹が、平成25年度に米国へ留学する可能性がでた。そこで、平成24年度内に可及的大量のデータを採取・蓄積すべく実験の効率と実施速度を高めた。その結果、交付申請書に記載した研究実施計画のうち、平成24年度の応用実験Iが終了しただけでなく、平成25~26年度に予定した応用実験IIならびに応用実験IIIも先行して予備的に実施できた。 4.上記1~3の理由から、立案当初の計画より研究が著しく進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.平成23~24年度研究成果に基づき、局所麻酔薬ならびに全身麻酔薬の薬力学的相互作用に関する研究をより発展させる。リドカイン、ブピバカイン、プロポフォールと植物成分の薬物相互作用については、平成24年度に先行して一連の実験を進めた。したがって、それらの追試を行って実験結果に確証を得る。 2.平成25年度以降は先行実験の再検証とともに、研究を完成させるための道筋をつける。同時に、国内外の学会において研究発表を行い、実験結果を総括してテキストを編集し、専門雑誌へ論文を投稿する。 3.研究成果の公表に関する学会予定:The 49th Congress of the European Societies of Toxicology(Sep/2013, Interlaken; the abstract accepted)、The 23rd International Symposium on Medicinal Chemistry(2014)、日本麻酔科学会学術集会(2013~2014)、他。投稿予定:British Journal of Anaesthesia、Nova Publishing、他。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.【現在までの達成度】に記述したように短期間に集中して応用実験を実施する必要が生じたため、試薬や器具をより経済的に使用することができた。また、為替レートの関係から研究計画を立案した当時よりも外国製試薬がより安価に購入できた。 2.平成23年度研究実施状況報告書に記載したように所属研究機関に応募した海外出張費が別途採択されたため、生じた次年度使用額(192,562円)を平成24年度の研究経費として活用できた。また、The 3rd International Symposium on Medicinal Plant (Jordan)で研究成果を発表したが、平成23年度研究実施状況報告書の【次年度の研究費の使用計画】にはそのための旅費を申請していなかったため自費で出張した。 3.上記1と2の理由から次年度使用額(246,627円)が生じたが、これは研究の総括と成果の公表が主となる平成25年度以降の研究経費に充てる。
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Research Products
(11 results)