2012 Fiscal Year Research-status Report
ストレスは痛みの伝達機構に影響をもたらすか?―不安による侵害刺激伝達変調の研究―
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23593009
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
坂本 英治 九州大学, 大学病院, 講師 (00295859)
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Keywords | 慢性疼痛 / 不安 / うつ / ストレス |
Research Abstract |
23年度まではあらかじめストレス負荷を加えることで、後に生じる神経障害性疼痛が増強されることが明らかであった。 24年度ではこのモデルの不安・うつ関連行動を観察し、やはり増強されることが明らかになった。 マウスをもちいて慢性疼痛モデル(座骨神経結紮モデルCCI)を作成し、疼痛関連行動(機械的刺激に対する疼痛関連行動;allodaynia, 熱刺激に対する疼痛関連行動;hyperalgesiaおよびフォルマリン誘発炎症行動)を観察した。あわせてうつ(強制水泳)不安関連行動(高架式十字迷路、open field)も今回申請した資器材を用いて観察した。従来の報告と同じく、慢性疼痛の発症にあわせてうつ、不安関連行動も観察された。 このモデルを対照群として、ストレス負荷をあらかじめ加えたマウスに対してCCI処置を行った。ストレス負荷3週間後、8週間後のマウスではそれぞれ疼痛関連行動の増強が認められた。さらに不安、うつ関連行動でも増強が認められた。このstress-inducedの疼痛増強に対してグリア細胞を抑制するミノサイクリンをくも膜下腔に投与した場合に、疼痛の増強は認められなかった。また疼痛増強がみられなかったこれら治療群では不安、うつ関連行動の増強も抑制された。 これらの結果からストレス負荷に起因する疼痛増強、不安、うつ関連行動の増強はグリア細胞の活性化が関連しており、これは脊髄レベルでも生じていることを明らかにした。さらにこの結果は痛みが先かうつが先かという問題にたいして痛みが先ということを示唆しており、その増強にかつて経験した過剰なストレスが、時間的な要素に関係なく作用していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標として疼痛関連行動と不安、うつ関連行動の観察は行えた。 次の目標とするその神経学的メカニズムの解明を目指す。脊髄レベル、上位中枢レベルでのグリア細胞の関連を検討することが目標である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は行動学的なことに加え組織学的検討を行う。 取り出したマウスの脊髄、脳のグリア細胞の活性化を確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験の運営に60万円を見込んでいる。この結果は学会発表および論文として公表する。(その経費に旅費20万円、投稿料として10万円を見込んでいる)
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