2013 Fiscal Year Annual Research Report
ストレスは痛みの伝達機構に影響をもたらすか?―不安による侵害刺激伝達変調の研究―
Project/Area Number |
23593009
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
坂本 英治 九州大学, 大学病院, 講師 (00295859)
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Keywords | 慢性疼痛 / ストレス / うつ / 不安 / 口腔顔面痛 |
Research Abstract |
(背景)慢性疼痛におけるストレス負荷の影響を行動学的に検討した。 (方法)8週齢雄性wisterラットに繰り返し寒冷ストレス(SARTストレス)を負荷する。SARTモデルの後に代表的な神経障害性疼痛の座骨神経結紮モデル(CCIモデル)を作成する。 ストレス負荷をCCI作成に対して1)4週間前(4wks群)2)8週間前(8wks群)3)作成と同時に負荷した群(0wks群)および4)対照群(sham 群)とで以下の行動を観察した。 疼痛関連行動として1)thermal hyperalgesia 2) mechano allodynia、不安うつ関連行動として 3)うつ関連行動(open field)4)不安行動(高架式十字迷路) (結果)疼痛関連行動においてはsham 群に対して、0wks群は神経障害側のみにhyperalgesia、allodyniaの増強を認めた。4wks群、8wks群は神経障害側と反対側にも疼痛関連行動を認めた。これは4wks群に比較して8wks群に強い相乗効果を認めた。不安うつ関連行動は4wks群、8wks群ともにsham 群、0wks群と比較して不安うつ行動の増強を認めた。特に不安行動が4wks群に比較して8wks群に強い相乗効果を認めた。 (考察)今回の研究では1)ストレスにより痛みは増強することが示され、それは組織障害とは関係ない部位にまで及ぶことが明らかになった。2)また併せて不安うつ行動も増強され、不安がより増強された。3)ストレス負荷の時期は過去にさかのぼって方が強い影響因子であった。臨床でも強いうつ不安に苛まれている慢性疼痛症例は多い。これら心療内科ではうつの発症においてその心当たりになるイベントを発症因子と位置づけている。これと同等かもしくはより重要視しているのがそれまでのストレス曝露の準備因子である。本検討ではまさにその準備因子としての過去のストレス経験が中枢性の慢性疼痛の原因になり、不安うつも増強することを示唆する。現在この現象を免疫染色法で病理組織学的に検討中である。今後各種薬剤や作用部位の検索を継続していきたい。
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