2011 Fiscal Year Annual Research Report
歯の移動による侵害刺激に対する歯根膜におけるエンケファリンの機能に関する研究
Project/Area Number |
23593012
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福永 智広 東北大学, 病院, 講師 (70362994)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 雄一 東北大学, 大学院・歯学研究科, 大学院非常勤講師 (00451609)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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Keywords | 歯学 / 歯の移動 / エンケファリン |
Research Abstract |
矯正治療中の歯の移動により歯根膜は侵害刺激を受け、ほとんどの患者は痛みを感じ、これは矯正治療の最も不快な症状の一つである。歯の移動による痛みは、いわゆる急性の痛みとは異なる伝達経路で中枢へ伝達され、中枢神経系の様々な部位において内因性にも制御されている。エンケファリンは、モルヒネ様作用を有する生理活性ペプチドであるオピオイドペプチドの1種であり、内因性の疼痛制御機構に関わっている。また、エンケファリンは、骨、軟骨、腎臓の正常な分化、発育や骨芽細胞の分化、骨組織の石灰化にも関与していることが明らかとなっている。一方、歯の移動による侵害刺激により神経ペプチドが歯根膜組織に発現することから、歯の移動で生じる痛みが歯根膜を介した歯周組織のリモデリングにおいても重要な役割を果たしていると考えられるが、そのメカニズムは不明である。本研究では、歯の移動による侵害刺激に対する歯周組織のリモデリングにおけるオピオイドペプチドであるエンケファリンの役割を検討することを目的としている。本年度は、6週齢雄性マウスに0.012インチのニッケル・チタン製のワイヤーを装着し、上顎右側第1臼歯を口蓋側に移動させ、マウス歯の移動モデルを作成した。歯の移動開始後0,12時間,1,7日後にパラホルムアルデヒドによる灌流固定を行い、上顎骨を摘出した。厚さ5μmの薄切切片を作成し、歯周組織におけるプレプロエンケファリン遺伝子の発現パターンをin situハイブリダイゼーションを用いて検索した。その結果、歯の移動開始0時間の生理的状態では、歯根膜全体に弱くプレプロエンケファリン遺伝子の発現が認められたが、歯の移動開始12時間後には牽引側歯根膜において圧迫側と比較してプレプロエンケファリン遺伝子の発現が上昇し、歯の移動開始1日後には牽引側歯根膜における発現が増強していた。歯の移動開始7日時には、プレプロエンケファリン遺伝子の発現は、牽引側では、歯根膜に強い発現を維持するとともに歯槽骨表層の骨芽細胞にも発現を認め、さらに、圧迫側歯根膜にもその発現を認めた。
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