2012 Fiscal Year Research-status Report
抗腫瘍薬による歯周組織障害の組織学的考察および効果的なう蝕予防法の検討
Project/Area Number |
23593048
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
河上 智美 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (30277595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
苅部 洋行 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (50234000)
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Keywords | 抗腫瘍薬 / シクロフォスファミド / マウス / 歯根形成 / 小児 / ヘルトヴィッヒ上皮鞘 |
Research Abstract |
本研究の目的は、化学療法に頻繁に使用されるシクロフォスファミドを用いて、マウス下顎第一臼歯の歯周組織におよぼす影響について病理組織学的観察により歯根形成不全のメカニズムを解明し、患児の診療に役立てることである。 【対象と方法】生後12日齢のICRマウスを用い、対照群は生理食塩水を投与し、実験群にはシクロフォスファミド[エンドキサン,塩野義製薬(株)]100mg/kgを腹腔内投与した。その後、生後14、16、20、24、27日齢まで、各日齢4匹ずつ飼育した後、4%パラホルムアルデヒド固定液を用いて灌流固定し、EDTA脱灰後、H-E染色、ヘルトヴィッヒ上皮鞘を観察するために上皮マーカーとしてサイトケラチン免疫染色を施し、光学顕微鏡にて観察対象は下顎第一臼歯とし観察を行なった。 【結果】HE染色からは、実験群は対照群に比べて、象牙芽細胞の変化、歯根膜および歯槽骨の形成量の相違が認められ、萌出開始が遅延していた。また歯根長は実験群において有意に短かった。さらに象牙芽細胞の分化を調整し歯根長と形状を決定すると言われているヘルトヴィッヒ上皮鞘をサイトケラチンを用いた免疫染色を用いて観察したところ、実験群において早期に消失していた。 【考察】本結果から、シクロフォスファミドを歯根形成期のマウスに投与すると、正常な歯根形成を阻害する可能性が明らかになった。シクロフォスファミドによってヘルトヴィッヒ上皮鞘の機能に影響を及ぼし、歯根形成が阻害されることによって歯根の短小化がおこると考えられた。また象牙芽細胞に対しても影響し、形態および機能が変化することによって、歯根形成時の象牙質添加に異常が生じたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体としておおむね順調に進行しており、昨年度は。抗腫瘍薬(シクロフォスファミド)を小児期マウスに投与し、その下顎臼歯部歯根形成および歯周組織の変化について組織学的検索を継続した。その結果、抗腫瘍薬のうちアルキル化剤として知られるシクロフォスファミドによるマウスの歯根形成阻害が現れる結果が得られた。 組織学的検索として、脱灰薄切切片作成後に、HE染色や免疫組織学染色などを用いて、抗腫瘍薬の濃度による変化だけでなく、飼育期間による変化について比較検討が行えた。 また、形態学的検索として、マイクロCT撮影による3D画像の作製をおこない、3次元的な歯根形成の状態変化を観察できた。 さらに、これらのうち一部の結果について、いくつかの学術会議において報告することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.これまで作製した実験試料から、さらに薄切切片を切り出し、歯周組織変化の指標となる染色法を用いて評価を行う。歯根膜線維および歯槽骨の変化について、コラーゲン染色法やALP染色、TRAP染色などの方法を用いて観察を試みる。また、生化学的な検索が可能か血液採取を行い、骨吸収および骨形成のマーカーについて調べる。 2.3D立体画像の解析をすすめ、歯根形成障害の部位や状態を詳細に検討する。前年度まで対象としていたマウス下顎第一臼歯の範囲を、歯周組織変化まで検討するために歯槽骨まで広げ、定量化を試みる。計測項目の検討を行う。 3.形成障害に対して、予防的方策がとれるか検討する。まず、文献検索を行い、通常臨床において形成不全歯に対する予防処置がどのように行われているか調べる。抗腫瘍薬による形成不全歯に対して、同じ方法が有効であるか、マウスの臼歯部を用いて実験方法を検討する。 4.結果報告および論文発表。これまでの成果発表とともに、学術集会などで他の研究者と交流し情報を交換する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度は、年度末(2013年3月)に参加予定であった国際学会の参加を取りやめたため、次年度使用額が発生した。本年度は今テーマの最終年度にあたるため、研究のまとめおよびその成果発表も積極的に行う予定である。 研究費の使用計画については、本年度も研究費は染色のための薬剤や抗体などの消耗品を中心として使用する計画である。 また、研究報告のための学会参加や論文作成のためにも、研究費の一部を使用する予定である。
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Research Products
(4 results)