2013 Fiscal Year Annual Research Report
抗腫瘍薬による歯周組織障害の組織学的考察および効果的なう蝕予防法の検討
Project/Area Number |
23593048
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
河上 智美 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (30277595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
苅部 洋行 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (50234000)
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Keywords | 歯根形成 / ヘルトヴィッヒ上皮鞘 / 抗腫瘍薬 / シクロフォスファミド / 小児 / マウス |
Research Abstract |
近年,小児がんの治療成績は向上し,小児がん経験者の70%以上が治癒している。しかし,抗腫瘍薬による治療の晩期合併症(例えば矮小歯,歯根形成の異常,歯の形成不全などの歯の障害)は頻繁にこれらの患者で観察される。シクロホスファミド(Cy)は,一般に小児がん治療の化学療法に使用される細胞増殖抑制剤である。現在のところ,化学療法薬による歯根形成に対する影響についての研究報告は少ない。本研究では,Cyの投与による歯根形成中マウスの歯根形成に対する変化を観察し検討した。生後12日のICRマウスに実験群にはCy(100 mg / kg,腹腔内投与)を,対照群には生理食塩水を投与した。生後14,16,20,24,27日で,下顎骨を摘出した。下顎右側臼歯部は,マイクロCTを用いて断層撮影し,歯根長を測定した。反対側は,固定後脱灰,脱水し,パラフィン包埋をした。第一臼歯矢状断の薄切標本を作製し,形態学的(ヘマトキシリンエオジン染色)および免疫組織化学的に(サイトケラチン免疫染色)観察を行った。 1.下顎第一臼歯遠心根の歯根長は,生後16日では実験群と対照群で同程度であったが,生後27日では実験群の歯根長が短く,対照群との間に有意差を認めた。 2.ヘルトヴィッヒ上皮鞘を構成する細胞は,薬剤投与後に萎縮・変形を示し,早期に消失した。 3.実験群では,セメント質の早期形成開始,歯槽骨量の減少,歯根膜腔の拡大および歯根膜線維の減少が観察され,歯の萌出遅延傾向を認めた。 以上の結果は,Cy投与はHERSを構成する細胞の形態と機能を変化させることを示している。またHERSは歯根形成に重要な役割を果たしているため,上皮鞘の破壊は細胞増殖と歯根形成を阻害すると考えられる。さらにCy投与は歯周組織にも影響を及ぼすことから,薬剤投与が歯の萌出遅延の原因の一つになる可能性が示唆される。
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