2011 Fiscal Year Research-status Report
歯周病予防を目指した唾液抗酸化タンパク質の解明―活性酸素とプロテオームの探索―
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23593049
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
小松 知子 神奈川歯科大学, 歯学部, 講師 (20234875)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 昌一 神奈川歯科大学, 歯学部, 教授 (60220795)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 歯周病 / 活性酸素 / 唾液タンパク質 / 電子スピン共鳴法 / ダウン症候群 / ヒスタチン |
Research Abstract |
唾液は抗菌作用を示すヒスタチン,歯面ペリクルの形成やエナメル質の再石灰化作用を示すスタセリン,プロリンリッチタンパクなど様々な生理活性物質を含んでおり,口腔組織のみならず他の臓器,組織に影響を及ぼすことが徐々に明らかにされてきている.また活性酸素種が生活習慣病の主たる原因であることが解明されている一方で,唾液成分の活性酸素種を直接的に捉えて検討した報告は少なく,十分なエビデンスが得られていない.そこで今年度は当初の計画にあるヒト唾液成分の活性酸素種に対する抗酸化能を評価し,比較検討を行った. 研究協力者であるDr. Oppenheimより提供をうけた以下の試料を用いて研究は行われた.研究に同意が得られた健常ボランティアより耳下腺唾液を採取し,逆相HPLCにより唾液タンパク質成分であるヒスタチン1,3,5,スタセリン,PRP1, 2, 3, 4およびPRP1のN末端30残基(30r-PRP1)を抽出・精製した.これら唾液タンパク質の抗酸化能を,フリーラジカルを特異的に直接検出することが可能な唯一の方法である電子スピン共鳴(ESR)法によりDMPO(5, 5-dimethyl-1-pyrroline-N-oxide)をスピントラップ剤として用いて測定した.その結果,ヒスタチン1, 3, 5およびPRP 1,2, 3, 4は,活性酸素種であるスーパーオキシド(O2.-)産生系に影響を与えなかったが,ヒドロキシラジカル(HO.)産生系を濃度依存的に有意に抑制した.30r-PRP1およびスタセリンにおいてはO2.- 産生系およびHO. 産生系ともに,影響を与えないことが解明された.以上の結果から,30r-PRP-1およびスタセリンは抗酸化能を示さず,一方でヒスタチン1, 3, 5およびPRP1, 2, 3, 4はHO. に対して抗酸化能を有することが明らかにされた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は今回,唾液タンパク質であるヒスタチン1, 3, 5およびPRP 1,2, 3, 4,PRP1のN末端の30残基,スタセリンの抗酸化能について資質評価をESR 法にて行い,エビデンスが確立された.現在、「抗酸化能」を持つことが明らかとなった唾液タンパク質であるヒスタチン1, 3, 5およびPRP 1,2, 3, 4,PRP1のN末端の30残基および既知の抗酸化成分であるカタラーゼ,SOD,GPX, ビタミンC,E,CoQ10をダウン症候群および健常者より採取した歯肉より分離した歯肉由来線維芽細胞に作用させたときの活性酸素・フリーラジカルの産生量の違いをESR 法により検討している。また歯肉採取時のBleeding On Probing、GI、ポケットの深さ等の臨床データも記録できている。臨床的アプリケーションと基礎的アプリケーションから,これら細胞に対する抗酸化物質の作用についても近いうちに結果をだせることから,歯周病における抗酸化物質の作用について報告できると考えている。以上のことから研究は順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から,来年度は,歯周疾患などに対する唾液タンパク質の生理活性機能としての抗酸化能の役割と意義について検討していく必要があると考えられた.さらに歯周病をはじめとする生活習慣病の病態における唾液成分の抗酸化効果を分子生物学的レベルでとらえるために,プロテオミクスに基づくバイオインフォマティクによって,包括的に解析することが必要である。現在進行中である各種唾液タンパク質および既存の抗酸化物質をダウン症候群の歯肉由来線維芽細胞に作用させたときの活性酸素産生量の違いをESR 法により検討を行った後,これらのデータをさらに裏付けるために,当初の計画通り,研究分担者である吉川と共にこれら細胞のミトコンドリアの抽出後,タンパク質のプロテオーム解析を行う。さらにそれら細胞のタンパク質の翻訳後修飾に焦点を当て,細胞内シグナル伝達機構に重要な役割を果たしているリン酸化タンパク質の同定を行い,最終年度の目的であるタンパク質のプロセッシングの過程における影響の検討につなげていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未購入となっているESRanalysis computer PCV-RZ75P Win RADESRanalyzing systemを購入する予定である。ESRが本研究の方法論の主たるものであり,今回のプロジェクトで現在検討中である培養細胞における活性酸素▪フリーラジカルの検出には,現存の ESR 装置でも最高感度が要求される。すでに我々が保有しているESR装置に,これらシステムを導入することにより,その水準をさらに高め正確な分析システムを構築するためである.消耗品では,ボトムアップ方式のプロテオーム解析に必要であるcICATおよびiTRAQ試薬が主な支出となる。また,これまでのデータを総括するにあたりOppenheim教授との研究打ち合わせや,国際学会での成果発表のための参加費および旅費,その後,論文にまとめるための印刷費等が必要となる。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Direct assessment of the antioxidant properties of midazolam by electron spin resonance spectroscopy2011
Author(s)
Hata M, Kobayashi K, Yoshino F, Yoshida A, Sugiyama S, Miyamoto C, Tokutomi F, Maehata Y, Wada-Takahashi S, Takahashi SS, Komatsu T, Yoshida K, Lee MC
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Journal Title
Journal of Anesthesia
Volume: vol. 25
Pages: 765-769
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Direct assessments of the antioxidant effects of the novel collagen peptide on reactive oxygen species using electron spin resonance spectroscopy2011
Author(s)
Kobayashi K, Maehata Y, Kawamura Y, Kusubata M, Hattori S, Tanaka K, Miyamoto C, Yoshino F, Yoshida A, Wada-Takahashi S, Komatsu T, Takahashi S, Lee M-CL
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Journal Title
Journal of Pharmacological Sciences
Volume: vol. 116
Pages: 97-106
Peer Reviewed
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[Presentation] 電子スピン共鳴法による唾液タンパク質の抗酸化能評価2011
Author(s)
小松知子,小林 杏,吉野文彦,前畑洋次郎,宮 本千央,徳富文彬,杉山秀太,吉田彩佳,高橋聡 子,高橋俊介,前谷崇志,川村陽介,辻村 傑,岡 田永三,岡田康江,西村成文,宮城 敦,李 昌一
Organizer
第11回抗加齢医学会
Place of Presentation
京都
Year and Date
20110527-29
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