2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23593059
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
荒川 真 広島大学, 病院, 助教 (60379881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 茂樹 広島大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (30549762)
山下 明子 広島大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (70511319)
西村 英紀 広島大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (80208222)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 歯肉増殖症 / 多毛症 / ライソゾーム酵素 / カテプシン-L |
Research Abstract |
歯肉増殖症の成因に関しては未だに不明な点が多い。しかし、カテプシン-L遺伝子欠損マウスでは、ヒト歯肉増殖症類似の歯肉組織の肥厚が惹起されることが確認されている(Nishimura F et al., Am J Pathol, 2002)。ゆえに、カテプシン-Lの機能低下が薬物性歯肉増殖症の成因に関与していると考えられる。そこで、本研究では多毛症を合併した先天性歯肉増殖症由来歯肉線維芽細胞におけるカテプシン-Lをはじめとするライソゾーム酵素系ならびにMMP, TIMPなどの細胞外基質分解に関わる酵素系、および基質合成系に異常がないかどうかを生化学的に解析するとともに、機能異常が見られればその異常の原因を分子レベルで明らかにすることを目的とした。平成23年度中においては、まず学内疫学研究倫理審査委員会への研究申請を行い、承認を得た。引き続き「多毛症を合併した先天性歯肉増殖症患者」から肥厚歯肉組織を採取後、器官培養を開始し、outgrowthした細胞を通常の方法に従って増殖させることが出来た。これにより現在「多毛症を合併した先天性歯肉増殖症における歯肉繊維芽細胞株」を樹立した。今後は、樹立した細胞株を用い細胞外基質の代謝に関わる酵素群の遺伝子発現、ならびにその酵素活性(特にライソゾーム活性)を評価する。調べた酵素群のうち遺伝子発現や活性に異常が認められた場合、以下の検討を行う。(1)発現異常が見られた場合はその遺伝子の調節領域の遺伝子配列を調査する。(2)活性に異常が認められた場合、ゲノム遺伝子に変異がないかどうか、変異型遺伝子導入細胞で酵素活性が低下するかどうかを確認する。最終的に本遺伝子を欠損、または過剰発現したマウスで確認が可能な場合、歯肉組織を詳細に観察するとともに、マウスhair follicle(毛胞)のターンオーバーを観察し、類似の病態が発現するか否かを検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始に先立ち、学内疫学研究倫理審査委員会への研究申請を行い、承認を得たが、約4ヶ月を要した。平成23年度の当初計画は以下の通りであった。(1)学内疫学研究倫理審査委員会への研究申請、(2)多毛症を合併した先天性歯肉増殖症患者の臨床診査と保護者への病態説明、ならびに研究協力依頼、(3)肥厚歯肉組織の採取と器官培養、(4)ライソゾーム酵素mRNAの発現状況ならびにその活性測定、(5)ライソゾーム酵素以外の基質分解に関わる酵素系の発現状況ならびにその活性評価、(6)基質合成系に関わる遺伝子発現ならびに蛋白質レベルでの評価、(7)肥厚歯肉組織の観察、(8)免疫組織学的検討。(1)については、上述の通り約4ヶ月を要したものの承認を得た。(2)については、「多毛症を合併した先天性歯肉増殖症患者」の臨床診査と患者および保護者への病態説明、研究協力依頼を行った。その結果、研究協力への快諾を得た。(3)については、患者より肥厚歯肉組織を採取後、器官培養を開始し、outgrowthした細胞を通法に従って増殖させた。これにより「多毛症を合併した先天性歯肉増殖症における歯肉繊維芽細胞株」を樹立することが出来た。現在は、(4)の「ライソゾーム酵素mRNAの発現状況ならびにその活性測定」に着手した段階である。すなわち、カテプシン-LのmRNA発現ならびにその活性の評価である。酵素活性の測定は蛍光プレートリーダーを用い、蛍光色素標識基質の遊離量で評価する。なお、カテプシン-L以外のライソゾーム酵素活性もあわせて調査する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)前年度の総括と標的分子の同定:平成23年度の研究成果を総括し、異常が確認された分子を同定する。(2)基質合成系に関わる遺伝子発現ならびに蛋白質レベルでの評価:Type I collagen、fibronectinなどの基質遺伝子発現をPCR法などにより評価するとともに、蛋白レベルでの発現を、ELISA法を用いて評価する。プロテオグリカン合成についても併せて評価する。(3)肥厚歯肉組織の観察:肥厚歯肉組織の一部から組織標本切片を作製し、肥厚歯肉の組織像を観察する。とりわけ、薬物性歯肉増殖症に特徴的な上皮脚の結合組織への延伸等については詳細に検討を加える。(4)免疫組織学的検討:組織の一部からパラフィン切片を作製し、異常が確認された酵素あるいは基質蛋白の免疫組織学的観察を行う。(5)ヒトゲノム・遺伝子解析倫理審査委員会への研究申請 (6)培養細胞からのゲノム遺伝子抽出と配列解析:発現や活性に異常があると判断された分子について該当分子や調節領域の遺伝子配列を解読し、データベースとの相同性を確認する。(7)変異型遺伝子導入による活性評価:遺伝子変異が認められた場合、変異型遺伝子導入による酵素活性の評価を行う。(8)変異マウスの存在の調査と入手:遺伝子変異が認められた場合、当該遺伝子を欠損したマウスが発生工学的に作製されているかどうか、入手可能かどうかについての調査を行い、入手が可能であると判断された場合は入手手続きを開始する。(9)マウス歯肉組織の観察とhair follicleのturn overの評価:入手変異マウスの歯肉組織を詳細に観察し、歯肉増殖症用症状の確認を肉眼的に行うとともに切片を作製し組織学的に評価する。あわせて、毛包(hair follicle)のターンオーバーをコントロールマウスのそれと比較する。(10)多毛症を合併した先天性歯肉増殖症の病因に関する最終報告書の作成(論文発表)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究の推進については、上記の様に計画している。従って、まずはライソゾーム酵素mRNAの発現状況ならびにその活性測定を行う。すなわちカテプシン-LのmRNA発現ならびにその活性を評価する。酵素活性の測定は蛍光プレートリーダーを用い、蛍光色素標識基質の遊離量で評価する。カテプシン-L以外のライソゾーム酵素活性もあわせ評価する。とりわけ、下記の酵素については特に重要と考え全種類調査する。(1):cathepsin-B, (2):cathepsin-H, (3):β-hexosaminidase, (4):β-Glucuronidase, (5):α-Mannosidase, (6):α-Fucosidase, (7):β-Galactosidase, (8):β-Glucosidase。以上の酵素および酵素活性測定用試薬等(OptiPlate, Z-Phe-Arg 7-amido-4-methylcoumarin hydrochloride, 7-Amino-4-methylcoumarin 等)に300,000円を見込んでいる。また、細胞培養用試薬(DMEM,Trypsin等)、培養用プラスチック(ディッシュ、プラスチックチューブ等)および分子生物学実験試薬(Tris, SDS, buffer, chloroacetic acid等) に各々200,000円(合計600,000円)を見込んでいる。さらに、研究成果発表のために国内旅費100,000円を見込んでいる。
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