2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23593059
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
荒川 真 広島大学, 病院(歯), 助教 (60379881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 茂樹 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (30549762)
山下 明子 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (70511319)
西村 英紀 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (80208222)
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Keywords | 多毛症 / カテプシン / ヒト歯肉繊維芽細胞 |
Research Abstract |
近年、薬剤による歯肉増殖症の発症にカテプシン活性の低下が関与することが報告されている。すなわち、①カルシウム拮抗薬ニフェジピンや抗てんかん薬フェニトインはヒト歯肉線維芽細胞のカテプシンL活性を低下させること、および②カテプシンL欠損マウスでは歯肉の肥厚病変が観察されるとともに、その組織像がヒト歯肉増殖症のそれと酷似していること、である。これよりカテプシンLの活性低下と歯肉増殖症発症に関連性があることが示唆されている。 また、先天性歯肉増殖症で著明な多毛症を合併する症例が複数報告されている。そこで、本研究の目的は多毛症を合併した先天性歯肉増殖症患者由来歯肉線維芽細胞と健常者由来の歯肉線維芽細胞のカテプシン活性を比較検討することである。 【材料および方法】供試細胞とカテプシン活性の測定:健常者及び多毛症合併歯肉増殖症患者の歯肉線維芽細胞を使用した。各培養細胞の破砕抽出物にカテプシンB及びカテプシンLの基質であるZ‐Phe‐Arg‐MCAを加え,37℃で10分インキュベート後,マイクロプレートリーダーによる蛍光強度測定にてカテプシンB+L活性を評価した。同様にカテプシンBの基質Z‐Arg‐Arg‐MCAを用い蛍光分析にてカテプシンB活性を評価した。カテプシンL活性は前2者の差から算出した。 【結果および考察】歯肉増殖症患者の歯肉線維芽細胞でカテプシンL活性が低下していた。一方、カテプシンB活性は上昇していたことから何らかのcompensation機構が働いている可能性が考えられた。カテプシンL欠損マウスでhair follicle(毛包)のturn overに異常が見られたことから,カテプシン活性の低下が多毛症の成因にも関与する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まずは研究開始に先立ち、学内倫理委員会に本研究の承認を申請したが、これに予想以上の時間を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
《①基質合成系に関わる遺伝子発現ならびに蛋白質レベルでの評価》 Cathepsin,Type I collagen、Fibronectinなどの基質遺伝子発現をPCR法などにより評価するとともに、蛋白レベルでの発現を、ELISA法を用いて評価する。プロテオグリカン合成についてもあわせ評価する。《②肥厚歯肉組織の観察》肥厚歯肉組織の一部から組織標本切片を作製し、肥厚歯肉の組織像を観察する。とりわけ、薬物性歯肉増殖症に特徴的な上皮脚の結合組織への延伸等については詳細に検討を加える。《③免疫組織学的検討》組織の一部からパラフィン切片を作製し、これまでに異常が確認された酵素あるいは基質蛋白の免疫組織学的観察を行う。《④ヒトゲノム・遺伝子解析倫理審査委員会への研究申請》《⑤培養細胞からのゲノム遺伝子抽出と配列解析》発現や活性に異常があると判断された分子について該当分子や調節領域の遺伝子配列を解読し、データベースとの相同性を確認する。《⑥変異型遺伝子導入による活性評価》遺伝子変異が認められた場合、変異型遺伝子導入による酵素活性の評価を行う。《⑦変異マウスの存在の調査と入手》遺伝子変異が認められた場合、当該遺伝子を欠損したマウスが発生工学的に作製されているかどうか、入手可能かどうかについての調査を行い、入手が可能であると判断された場合は入手手続きを開始する。《⑧マウス歯肉組織の観察とhair follicleのturn overの評価》 入手変異マウスの歯肉組織を詳細に観察し、歯肉増殖症用症状の確認を肉眼的に行うとともに切片を作製し組織学的に評価する。あわせ、毛包(hair follicle)のターンオーバーをコントロールマウスのそれと比較する。《⑨多毛症を合併した先天性歯肉増殖症の病因に関する最終報告書の作成》論文発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残りの経費の大部分は消耗品代、学会参加の旅費および論文投稿料である。 主な消耗品は、細胞培養用試薬、培養用プラスチック、酵素活性測定用試薬および分子生物学実験試薬等である。これらはいずれも小額であり、研究計画を遂行するうえで妥当な使用計画であると考える。
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