2012 Fiscal Year Research-status Report
インプラント周囲炎における特異的血清抗体価を用いた客観的診断法の開発
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23593062
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
米田 哲 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (60420262)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木戸 淳一 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (10195315)
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Keywords | インプラント周囲炎 |
Research Abstract |
本研究課題は、インプラント周囲炎により口腔内に曝露したインプラント表面に特異的な細菌(Staphylococcus aureus、以下Sa菌)が感染し、それに伴いSa菌血清抗体価が上昇し、インプラント周囲炎の診断に応用できるだろうとの研究デザインである。 現在までに被験者15名、インプラント19本よりサンプリングを行い、現時点で以下の結果を得ている。 X-P写真上で2㎜以上の骨吸収がある者が7名(最大5.27㎜)。歯周病菌血清抗体価検査で歯周病原細菌の感染者(抗体価2.5以上)が8名、P.gingivalis菌(以下Pg菌)の抗体価5以上の重度感染者4名。他の菌種(A.actinomycetemcomitans(以下Aa菌)、P.intermedia菌、E.corrodens菌)の感染者はいなかった。インプラント周囲溝のプラークをPCR法でSa菌およびPg菌の細菌感染の有無を判定した結果、Pg菌(+)が5名、Sa菌(+)は0名であった。本研究でSa菌の検出が重要事項となるため、計3種のprimerでインプラント19本全てにおいて各2回のPCRを行ったが、Sa菌の検出をできなかった。インプラント周囲溝の歯周病菌の存在を外部委託してPCR-Invader法を用いて検査した結果、Aa菌0名、Pg菌3名、T.forsythenis菌7名、T.denticola菌3名で検出された。細菌検出部位と骨欠損量および、細菌検出部位と臨床指標(歯肉出血やプラーク付着)との統計学的関連は見い出せなかった。 インプラント2次手術から経時的に3名のインプラント周囲溝の細菌検査を行った。その結果、healing abutment装着の段階でP.g菌が検出された。その後、プロイジョナル(即時重合レジン製)や上部構造(メタルボンド)装着の段階で細菌検出がリセットされたが、装着後の時間経過と共に細菌が検出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
24年度は23年度でSa菌感染者を検出する前提で、(1)無歯顎インプラント患者における血清抗体価測定と(2)インプラント患者の横断的調査を当初計画していた。しかしながら、Sa菌の検出に失敗したために、当初の計画が頓挫している状況である。 同一患者の複数個所のインプラントを検査した結果、部位により細菌検出や細菌種の比率の相違があることを見い出すことができた。また、同一インプラントであっても検査の時期により細菌検出や細菌種の比率の相違があることを見い出せた。
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Strategy for Future Research Activity |
Sa菌を利用したインプラント周囲炎の診査診断を行うことが本研究の主眼であったが、これまでに述べたように、Sa菌の検出に失敗している状況が続いている。 そこで、Sa菌に拘らずにインプラント周囲溝のマイクローバイオームを網羅的に検索していくことを計画している。マイクロバイオームの検索で天然歯vsインプラント、健全インプラントvs周囲炎罹患インプラントの比較を行い、単独もしくは組み合わせで、インプラント周囲炎の診査診断を行うことができる可能性の細菌種を見出せればと期待している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度はこれまで述べてきたようにSa菌感染者が検出されず、当初計画が頓挫した状況となったため、約85万円の繰越金が生じた。 今年度は、先に述べたようにインプラント周囲のマイクロバイオーム検査を外部委託で行う予定である。外部委託費が1検体あたり10万円と高額であるので、サンプリングを行う部位やサンプル採取方法を現在検討している段階である。有望な細菌種が見つかった場合、Sa菌で行う予定であったELISA法での抗体価などの測定方法を確立すべく研究を推進する予定である。 また、9月の日本口腔インプラント学会(福岡)に参加してインプラント周囲炎および関連情報の収集を行う予定である。
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