2011 Fiscal Year Research-status Report
如何にして歯周病が循環器疾患のリスクファクターとなるか
Project/Area Number |
23593073
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
高橋 聡子 神奈川歯科大学, 歯学部, 講師 (30301592)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 俊介 神奈川歯科大学, 歯学部, 准教授 (60206810)
李 昌一 神奈川歯科大学, 歯学部, 教授 (60220795)
浜田 信城 神奈川歯科大学, 歯学部, 教授 (20247315)
松尾 雅斗 神奈川歯科大学, 歯学部, 准教授 (30190416)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 歯周病 / 循環器疾患 / 活性酸素種 |
Research Abstract |
近年,生活習慣病と歯周病との関連性が注目されている。歯周病そのものが生活習慣病であるという考え方だけでなく,歯周病が,死因疾患ともなる高血圧,動脈硬化といった循環器疾患を含む全身疾患を増悪させるリスクファクターとなる可能性が示されている。本研究課題では口腔と全身の血管反応を主たる測定系として「如何にして歯周病が循環器疾患のリスクファクターとなるか」というメカニズム解明とエビデンスの確立を目的として研究を行った。 本年度は,コントロールであるWistar Kyoto Rat(WKY)と脳卒中易発症性高血圧モデルラット(SHRSP)の歯肉の反応性充血を測定(in vivo)することにより,循環器疾患(とくに高血圧症)が口腔内歯肉循環に及ぼす影響について検討した。SHRSPではWKYに比べて圧迫止血後にみられる反応性充血反応が短くなった。この反応には血管内皮依存性の一酸化窒素(NO)が関与している。また,反応性充血を測定後のラットから摘出した後大動脈を恒温槽内に懸垂して血管の収縮-弛緩反応を測定したところ(in vitro),SHRSPでは血管内皮依存性弛緩反応の減弱がみられた。この反応はスーパーオキシドの消去剤であるスーパーオキシドディスムターゼにより抑制された。このことから,SHRSPでの血管弛緩反応減弱にはスーパーオキシドが関与していることが示唆された。 また,WKYとSHRSPに歯周病源菌であるPorphyromonas gingivalis(Pg)を感染させ,同様の実験を行った。Pgを感染させた群では反応性充血反応は延長し,摘出血管の弛緩反応も変化した。この反応にはiNOS由来のNOの関与が考えられ,さらなる検討により,歯周病の全身に対する影響を知る手がかりとなると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の「研究の目的」では,1)レーザードップラー法を用い,脳卒中易発症性高血圧モデルラット(SHRSP)の歯肉反応性充血を測定する。高血圧症が歯肉微小循環にどのような影響を及ぼすか解析する。2)SHRSP,コントロール(WKY)群に歯周病菌であるPorphyromonas gingivalis(Pg)を感染させ,レーザードップラー法を用いてPg感染により歯肉微小循環がどのような影響を受けるかを解析するということを示した。 これらの項目についての検討は順調に進んでいる。これまでに,WKY,SHRSPあるいはそれぞれの群にPgを感染させた群を用いて,レーザードップラー法による測定にてその変化を明らかにした。さらに,摘出した血管を用いて等尺性張力変化を測定することにより口腔内微小循環だけでなく全身の血管に対する影響についても検討を始めている。以上の理由によりおおむね実験計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の実験計画としては(1)骨吸収量測定による高血圧症と歯周病の進行との関連の解析を行う。WKY,SHRSPを用いる。24週齢での反応性充血測定後,麻酔下で断頭し,下顎骨を摘出する。オートクレーブにて乾燥させた後に,骨吸収量を測定し,歯周病の進行と高血圧症との関係を解析する。(2)血管鋳型標本作製による全身の血管の傷害程度の解析を行う。WKY,SHRSP,それぞれにPg感染させたモデルの血管に,麻酔下でレジンを注入し,血管鋳型標本を作製する。この標本を作製することにより,口腔以外の全身の血管の傷害性を精査することが可能となる。また,脳や腎臓や肝臓などの口腔と離れた部位の微小血管などにPg菌が影響を与えるかどうかを解析する。(3)ESRを用いた活性酸素の測定による全身の酸化ストレスの解析をESR法を用いて活性酸素を測定し,活性酸素の量がどのように変化するかを比較検討する。麻酔したWKY,SHRSP,それぞれにPg感染させたモデルラットにスピンプローブ剤 (3-calbamoyl-2,2,5,5tetramethylpyrrolidine-1-yloxy; carbamoyl-PROXYL) を投与し,その後歯肉粘膜,脳,腎,肝を摘出する。摘出した臓器は ESR 装置内に固定し,このプローブ剤と活性酸素種との反応 (プローブ剤の減衰速度) から各臓器内の活性酸素の量を測定し,酸化ストレス評価を行う。 上記結果に基づいた歯周病⇔循環器疾患(脳卒中など)の相関関係の証明を行う予定である。これらの実験を総括整理して,理論構築し,最終目的を達成するに必要な実験,および新しい知見の開拓に必要な研究を適宜追加する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物(WKY, SHRSP),マグヌス実験用試薬,ESR実験用試薬,血流計実験用試薬,血管鋳型標本実験用試薬,細菌感染実験用試薬,ガラス製品,プラスチック製品,また血液検査の受託費等に使用する。 本研究では,WKY群,SHRSP群,WKY-Pg群,WKY-Pg群の4群のラットを用いて実験を行う。SHRSPは高血圧モデルラットであるため,高価である。また,長期飼育を行うこととなるので動物にかかる費用が大きくなるものと考えられる。ガラス製品,プラスチック製品は,主にマグヌス法と,ESR法に用いられる試験管等である。これら消耗品は,ディスポーザブルであるため,年度ごとの計上となる。また,ESR法,レーザードップラー法にかかる試薬等は高価であり,必要経費は大きくならざるをえない。研究最終年度には,論文発表,海外学会での発表を目指すため,それらにかかる経費が必要となる。さらに,経時的変化を観察するため,動物を一定管理下で飼育する必要がある。それらを大学院生が補助することとなるため,謝金の計上を行った。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Direct Assessment of the Antioxidant Properties of Midazolam by Electron Spin Resonance Spectroscopy2011
Author(s)
Hata M, Kobayashi K, Yoshino F, Yoshida A, Sugiyama S, Miyamoto C, Tokutomi F, Maehata Y, Wada-Takahashi S, Takahashi S-S, Komatsu T, Yoshida K, Lee M-C
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Journal Title
Journal of Anesthesia
Volume: 25 (5)
Pages: 765-769
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Assessment of Anti-Aging Effects of Fish Products Peptide in Middle-Aged Subjects.2011
Author(s)
Yoshino F., Yoshida A., Sugiyama S., Tokutomi F., Miyamoto C., Maehata Y., Kobayashi K., Wada-Takahashi S., Maetani T., Okada E., Okada Y., Komatsu T., Takahashi S-S., Wan J., Lee M-C
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Journal Title
Anti-Aging Medicine
Volume: 8 (4)
Pages: 48-52
Peer Reviewed
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[Journal Article] Direct assessments of the antioxidant effects of the novel collagen peptide on reactive oxygen species using electron spin resonance spectroscopy.2011
Author(s)
Kobayashi K., Maehata Y., Kawamura Y., Kusubata M., Hattori S., Tanaka K., Miyamoto C., Yoshino F., Yoshida A., Wada-Takahashi S., Komatsu T., Takahashi S-S., Lee M-C.
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Journal Title
Journal of Pharmacological Science
Volume: 116 (1)
Pages: 97-106
Peer Reviewed
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