2012 Fiscal Year Research-status Report
如何にして歯周病が循環器疾患のリスクファクターとなるか
Project/Area Number |
23593073
|
Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
高橋 聡子 神奈川歯科大学, 歯学部, 講師 (30301592)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 俊介 神奈川歯科大学, 歯学部, 准教授 (60206810)
李 昌一 神奈川歯科大学, 歯学部, 教授 (60220795)
浜田 信城 神奈川歯科大学, 歯学部, 教授 (20247315)
松尾 雅斗 神奈川歯科大学, 歯学部, 准教授 (30190416)
|
Keywords | 歯周病 / 循環器障害 / 活性酸素種 |
Research Abstract |
近年,生活習慣病と歯周病との関連性が注目されている。歯周病そのものが生活習慣病であるという考え方だけでなく,歯周病が,死因疾患ともなる高血圧,動脈硬化といった循環器疾患を含む全身疾患を増悪させるリスクファクターとなる可能性が示されている。これまで,歯周病菌感染が循環器疾患を悪化させるという報告は疫学的研究が殆どで,そのメカニズムの基礎的エビデンスの確立にはいたっていない。本研究課題では口腔と全身の血管反応を主たる測定系として「如何にして歯周病が循環器疾患のリスクファクターとなるか」というメカニズム解明とエビデンスの確立を目的として研究を行った。 昨年度までにはWistar Kyoto Rat(WKY)と脳卒中易発症性高血圧ラット(SHRSP)を用いてin vivoで歯肉の反応性充血を指標に口腔内歯肉循環に及ぼすPorphyromonas gingivalis(Pg)の影響を検討するとともに,in vitroで摘出した後大動脈のリング標本を用いた実験を行い,SHRSPにおける弛緩反応の減弱を確認した。 本年度は歯周病の重大な病態である歯槽骨吸収が,高血圧によりどのような影響を受けるかを検討した。コントロールであるWKY と病態モデルであるSHRSPに歯周病菌であるPgを感染させ,各々の骨吸収量を測定した。WKYにPgを感染させると歯槽骨の吸収が認められた。Pgによる歯槽骨吸収量はWKYに比べSHRSPで増大しており,高血圧症と歯周病の進行との関連性が示唆された。さらに,血管鋳型標本を作製し歯肉血管分布についても検討中である。さらなる検討により,歯周病の全身に対する影響を知る手がかりとなると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度以降の「研究の目的」では, (1) Pg感染によって歯周病が生じていることを確認するために骨吸収量を測定し,高血圧症と歯周病の進行との関連を解析する。(2) 後大動脈を摘出し,等尺性張力変化を指標に血管機能の解析を行う。(3) 血管鋳型標本を作製し,全身の血管の傷害程度を精査する。(4) ESRを用いて,活性酸素を測定し,全身の酸化ストレスの解析を行う。 これらの結果を考慮し,Pg感染が高血圧症由来の動脈硬化等の循環器傷害のリスクファクターとなっているかどうかを評価する。最終的には,歯周病⇔循環器疾患(脳卒中など)の相関関係を解明し,歯周病治療の強固な動機付けとなることをゴールとするということを示した。 本年度は上記項目の1) について検討をすすめた。また,上記2)については前年度までに検討を行った。現在,3)についての検討を進めており,おおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の実験計画としては (1) 血管鋳型標本作製による全身の血管の傷害程度の解析を行う。 WKY,SHRSP,それぞれにPg感染させたモデルの血管に,麻酔下でレジンを注入し,血管鋳型標本を作製する。この標本を作製することにより,口腔以外の全身の血管の傷害性を精査することが可能となる。また,脳や腎臓や肝臓などの口腔と離れた部位の微小血管などにPg菌が影響を与えるかどうかを解析する。 (2) ESRを用いた活性酸素の測定による全身の酸化ストレスの解析を行う。 ESR法を用いて活性酸素を測定する。活性酸素の量がどのように変化するかを比較検討する。麻酔したラットにESR 検出可能なスピンプローブ剤 (3-calbamoyl-2,2,5,5tetramethylpyrrolidine-1-yloxy; carbamoyl-PROXYL) を投与し,その後歯肉粘膜,脳,腎,肝を摘出する。摘出した臓器は ESR 装置内に固定し,このプローブ剤と活性酸素種との反応 (プローブ剤の減衰速度) から各臓器内の活性酸素の量を測定し,酸化ストレス評価を行う。 上記結果とこれまでの結果に基づいた歯周病⇔循環器疾患(脳卒中など)の相関関係の証明を行う予定である。これらの実験を総括整理して,理論構築し,最終目的を達成するに必要な実験,および新しい知見の開拓に必要な研究を適宜追加する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では,WKY群,SHRSP群,WKY-Pg群,WKY-Pg群の4群のラットを用いて実験を行う。SHRSPは高血圧モデルラットであるため,高価である。また,長期飼育を行うこととなるので動物にかかる費用が大きくなるものと考えられる。ガラス製品,プラスチック製品は,主にマグヌス法と,ESR法に用いられる試験管等である。これら消耗品は,ディスポーザブルであるため,年度ごとの計上となる。また,ESR法,レーザードップラー法にかかる試薬等は高価であり,必要経費は大きくならざるをえない。 研究最終年度には,論文発表,海外学会での発表を目指すため,それらにかかる経費が必要となる。 さらに,全身血液中の炎症性サイトカインを測定するために分析委託をするための計上を行った。
|
Research Products
(11 results)
-
-
[Journal Article] Gingival vascular functions are altered in type 2 diabetes mellitus model and/or periodontitis model.2012
Author(s)
Sugiyama S., Takahashi S-S., Tokutomi F., Yoshida A., Kobayashi K., Yoshino F., Wada-Takahashi S., Toyama T., Watanabe K.,Hamada N., Todoki K., Lee M-C.
-
Journal Title
ournal of Clinical Biochemistry and Nutrition
Volume: 51(2)
Pages: 108–113
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Assessments of salivary antioxidant activity using electron spin resonance spectroscopy.2012
Author(s)
Yoshino F., Yoshida A., Wada-Takahashi S., Sugiyama S., Tokutomi F., Maehata Y., Miyamoto C., Komatsu T., Takahashi S-S., Kobayashi K., Lee M-C.
-
Journal Title
Archives of Oral Biology
Volume: 57 (6)
Pages: 654-662
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-