2012 Fiscal Year Research-status Report
歯科衛生士の離職をもたらす因子の解析と,離職防止の方略の策定
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23593090
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
竹本 俊伸 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (00236506)
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Keywords | 歯科衛生士 / 離職要因 / 復職 / 特別休暇 / ストレス / 抑うつ |
Research Abstract |
歯科衛生士の早期離職の要因を分析するために,平成23年度末に全国で2,000件の歯科医院に勤務する歯科衛生士を対象とした横断的な質問紙調査を実施し,今年度初頭に,回答が返送された。回収率は27.7%(599人)と,やや低い数字であったが,これは歯科医院の院長経由での依頼としては平均的な数字である。回答者の年令分布は20代後半をピークに年令が上がると減少するカーブであった。離職を経験している回答者の離職原因として,「結婚、出産・育児」に次いで「職場の人間関係」が多く,「給料,待遇」は最も少なかった。「結婚、出産・育児」時に離職した経験がある者は,特別休暇を取らなかった理由として,「制度がなかった」「取得できなかった」「退職勧奨された,解雇された」などを挙げた。また,職務選択動機については,受動的な動機を選択したものが,高い離職希望度を示した。これらの結果から,歯科衛生士の離職を防ぎ,復職を促すためには,復職を希望する者に対するサポートと同時に,特別休暇を取りやすい環境作りや職場での円満な人間関係の構築,さらには,養成校における学生の職務継続の動機付けなどが必要であることが明らかになった。 上記調査と並行して,開業医勤務の歯科衛生士のストレスと離職との関連についても,平成23年度に全国400軒の歯科医院に勤務する歯科衛生士を対象に調査した結果の解析を進めた。この調査での回収率は29.1%(117名)であった。解析の結果,回答者の22%がCES-Dによる分析で抑うつ状態にあると考えられた。抑うつ状態にある者は,①職務選択動機が「他に思いつかなかった」者,②仕事へのやりがいが比較的低い者,③職場での悩みが多く,その内容は雇用不安,過労・健康不安,福利厚生への不満であることが判明し,このようなストレスが離職につながることが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全国の開業医勤務の歯科衛生士に対する本調査は,回答数が多く,情報量が豊富であるため,計画通り,基本的な集計と簡単な統計解析までの進捗となっている。その一方で,これまでに実施している2つの研究,すなわち,①広島県内の歯科衛生士に対する離職希望と職務満足度との関係についての調査,および,②歯科衛生士の抱えるストレスと抑うつ症状との関連の研究は,分析が進み,論文としての投稿準備までに至っている。 予定していた全国の歯科衛生士養成機関に対する教育内容の調査は,計画していたものが未遂の状況であるが,これは,研究の進捗に伴って必要性についての再検討を要すると判断されたためであり,再度,その必要性を検討することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
全国の開業医勤務の歯科衛生士に対する調査に関しては,500件超の回答について,今後,各種の多変量解析ソフトを用いた因子の分析を行う。それによって,歯科衛生士が,各種の転機を迎えた時に,離職行動をとる原因を,量的に解析することが可能になる。 歯科衛生士の離職と職務満足度についての調査,およびストレスと抑うつ症状の調査については,今年度中の国内専門雑誌への論文投稿を行う計画である。 その一方で,歯科衛生士の離職に大きく関与する可能性がある,新人歯科衛生士のリアリティーショック(学校で学んできたことと現実の職場でのギャップの大きさに対する心理的なショック)について,および,歯科衛生士のストレスに関するさらに深い検討について,全国の歯科衛生士に対する小規模な調査を行う計画である。 これらの調査や解析を実施し,全体の研究を総括して,年度後半には報告書を作成し,全国の関係諸機関に配布する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の最終年度である今年は,新たな追加研究の実施とともに,結果の解析,論文の投稿,および結果の歯科業界への公表に関して,以下のような使途を計画している ①歯科衛生士のストレス,および新人歯科衛生士のリアリティーショックに関する調査を,それぞれ全国300軒程度の開業歯科医院に対して行うための印刷費,郵送料。全国の歯科衛生士養成機関に対する調査に関しては,必要性が明確になり次第,実施する。 ②研究成果の学術会議などでの公表と他の研究者とのディスカッションを実施するための出張経費 ③各種調査結果の多変量解析に必要な,ソフトウェアの購入の費用 ④すでに論文投稿準備に入っている2編の研究については,論文が採択になった時点で投稿に関わる経費が必要である。また,他の研究についても,準備が整い次第,論文としての投稿・公表を予定しており,同様に投稿費が生じる。 ⑤これまでに実施した研究を総括し,歯科衛生士の離職の要因分析と離職予防方略の策定を行い,その結果を報告書としてまとめ,全国の関係諸機関に郵送配布するための印刷費と郵送料
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Research Products
(1 results)