2011 Fiscal Year Research-status Report
口腔細菌による全身性疾患に対する定着・感染機構を応用した宿主のリスク診断法の開発
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23593093
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
山口 泰平 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (80230358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉元 康志 鹿児島大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10100736)
於保 孝彦 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50160940)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 口腔細菌 / 感染 / 初期付着 / 付着因子 / 細胞外基質 / フィブロネクチン |
Research Abstract |
目的:Nutritionally variant streptococci (NVS)は感染性心内膜炎の原因菌の1つである。感染は患部のフィブロネクチン(Fn)への結合が重要で、その感染力、病原性は結合の強さに左右されている。今回、Granulicatella para-adiacensで新規の結合因子の精製、性状分析を行った。方法と結果:NVS8株のFn結合能は、Granulicatella adiacensが最も強く、G. para-adiacensが続き、Abiotrophia defectiva、Granulicatella elegansの順であった。この中でG. para-adiacensの1株を用いてFn結合タンパクをカラムにより精製した。評価はFnを固相化したELISA法を用いた。SDS-PAGEでは活性画分には200 kDaを上回る領域にブロードな精製物が確認できた。精製物をSDS存在下で加熱処理すると75 kDaのバンドが出現した。当該タンパクは調べた8株の中ではG. para-adiacensに限局していた。免疫蛍光染色で菌体表層に存在することを確認した。精製タンパクによるFn結合反応はNaCl濃度で150 mM以下、pHで6.5から7.0付近が至適であった。精製タンパクは確かに濃度依存的にFnに結合し、親株のFn結合を阻害した。考察:NVSによるFn結合能についてはいくつか報告があり、種による特異性も示されている。G. para-adiacensは結合能、病原性が低い種に分類されているが、今回の研究ではG. adiacensに次ぐ結合能を示し、結合活性を持つ新規の因子が同定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年予定のStreptococcus intermediusを用いた基礎データの収集は終了した。その後、NVSの1種であるGranulicatella para-adiacensを用いて新規フィブロネクチン結合タンパクを精製、同定している。宿主側因子として揚げたアルブミンは一部だがリコンビナントタンパクが得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回同定した新規フィブロネクチン結合タンパクについて分子生物学的解析を進めるとともに、当初予定した臨床材料を用いた網羅的疫学分析を始める予定である。 口腔レンサ球菌の付着について、凝集、付着に関与する宿主側因子を幾つか同定している。これらの量のバランスで付着が調節されているものと思われる。これを確認するために、まとまった数のヒト唾液、血液をサンプリングする。臨床試料は鹿児島大学歯学部に在籍する学生、代表申請者が所属する鹿児島大学附属病院口腔保健科外来で管理する患者さんの同意を得て採取する予定である。サンプル数は当面は数十程度で実施する。少なくとも唾液については別枠で後述するように鹿児島大学大学院医歯学総合研究科の倫理審査委員会の承認をいただいている。注目している因子のうちでタンパクについてはELISA法で定量する。金属イオンについては専用キット等を利用して定量する。一部については菌体凝集活性、付着活性さらに、それらへの阻害活性を測定する。また、口腔内所見(デンタルカリエス、歯周病)との関連について検討する。この過程では臨床材料を利用するため、保存方法を含め、工夫が必要かもしれない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に購入を予定していたバイオシェーカーを購入しなかったため50万円を平成24年度に持ち越した。理由は当初予定していたベクターシステムより高効率のものが開発されたため、そちらに変更した結果、当面は不要と判断したためである。その代わり、相応の予算を消耗品に向けることができ研究が予定よりも早く進行することができた。平成24年度の予算については当初の計画通り試薬、プラスチック器具などの消耗品に充当する予定である。一部データについては分析委託が予算的に可能になる。また、老朽化、陳腐化した機械があるため更新が可能になり研究の遂行に役立つものと期待している。
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