2012 Fiscal Year Research-status Report
ミュータンスレンサ球菌による新規動脈硬化発症機序の解明-菌の細胞内侵入と認識応答
Project/Area Number |
23593094
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
長田 恵美 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00304816)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
於保 孝彦 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50160940)
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Keywords | ミュータンスレンサ球菌 / 内皮細胞 / TLR2 / NOD2 |
Research Abstract |
我々は動脈硬化の新たなリスクファクター候補として、ミュータンスレンサ球菌に注目して研究を進めている。平成23年度の研究成果より、対照の非感染内皮細胞と比較して、Streptococcus mutans Xc が侵入したヒト動脈内皮細胞は、有意に多くのTLR2およびNOD2 mRNAを発現することが明らかになったので、今年度はまず、TLR2およびNOD2がタンパクレベルで増加しているかをフローサイトメトリーで検討した。S. mutans Xcとヒト動脈内皮細胞をMOI=1で24時間共培養した後、抗生剤 (ゲンタマイシンおよびペニシリンG) 処理によって細胞表面に付着した菌を死滅させ、菌が侵入した細胞をさらに24時間培養した。内皮細胞を回収、固定し、チューブ内で抗TLR2あるいは抗NOD2抗体を用いて免疫染色を行い、フローサイトメトリーで各々の発現を定量した。非感染ヒト動脈内皮細胞と比較してS. mutans Xcが侵入した内皮細胞は有意に多くのNOD2タンパクを発現していた(P < 0.05)。しかしながら、TLR2タンパク発現の有意な増加は認められなかった。次に異なる血清型のミュータンスレンサ球菌を用いて、ヒト動脈内皮細胞におけるパターン認識受容体の発現誘導能をリアルタイムPCR法で検討した。それぞれの菌株をヒト動脈内皮細胞とMOI=1で48時間共培養した後、内皮細胞からtotal RNAを抽出し、リアルタイムPCR法でTLR1、TLR2、TLR4、NOD1、NOD2 mRNAの発現を検討した。非感染内皮細胞と比較して、今回検討したそれぞれの菌株が感染したヒト動脈内皮細胞全てにおいて、TLR2およびNOD2 mRNAの発現が増加していた(P < 0.05)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い、ミュータンスレンサ球菌の刺激によるヒト動脈内皮細胞におけるTLRおよびNODの発現の検索が進行しているので おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今までの研究成果から、特定の菌株だけでなく、異なる血清型のミュータンスレンサ球菌の感染によっても、ヒト動脈内皮細胞におけるTLR2およびNOD2の発現が増加することが明らかになった。今後は同様に異なる血清型のミュータンスレンサ球菌の感染によって、内皮細胞におけるサイトカイン産生誘導が認められるか検討する。H24年度から試みているsiRNA干渉によるTLR2およびNOD2 mRNA発現抑制にともなうミュータンスレンサ球菌感染時の内皮細胞におけるサイトカイン産生量を検討し、パターン認識受容体とサイトカイン産生との関係を明らかにする。 nonsilencing siRNAを遺伝子導入したHAECを対照とし、リアルタイムPCR法でTLR2あるいはNOD2 mRNAの発現量を、またELISA法でサイトカイン産生量を定量する。H25年度は最終年度であるので、研究成果を総括し、学会および論文で発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は予定よりも細胞培養用培地の購入量を少なくすることができた。次年度は研究計画より細胞培養の機会が増加することが予想されるので、繰り越した研究費は次年度の研究費とともに、ヒト動脈内皮細胞および培地、培養関係のプラスチック器具に用いる。さらに次年度の研究費はリアルタイムPCR関連試薬、siRNAおよびsiRNA導入のための試薬、プラスチック器具、その他の試薬、成果発表旅費、英語論文添削費に用いる。
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