2012 Fiscal Year Research-status Report
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23593102
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
多田 充裕 日本大学, 歯学部, 准教授 (30260970)
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Keywords | 口臭 |
Research Abstract |
高齢者における動脈硬化は「血管の老化現象」と称され、食生活や高血圧との関連が指摘されるほか、喫煙も大きな影響を与えることが知られている。それは、タバコの煙に含まれるタール,ニコチン,および一酸化炭素が悪玉コレステロールを増加させて血管を細くし心臓に負担をかけるためであるとされている。よって、喫煙者の口臭は他人に不快感を与えるだけでなく、喫煙者本人の健康に対する為害性を表すバロメーターになる可能性があると考えられる。ガスクロマトグラフィーを用いた研究から、揮発性硫黄化合物(volatile sulfur compounds: VSC)が生理的口臭や病的口臭の主原因物質であることが明らかになっているが、タバコの煙には通常の口臭成分であるVSCガスだけでなく、 様々な臭気成分を含有していることを考えると、喫煙による口臭の測定は従来法では不十分と考えられる。そこで、ヒト嗅覚同様に臭気を定性・定量できるエレクトロニック・ノーズ技術を用いて、喫煙による口臭の特性を包括的に明らかにすることを目的とし、健常者を非喫煙群と喫煙群に分け、におい識別装置(FF-2A)を用いた口臭検査を行い、喫煙による口臭の特性を検討したところ、喫煙者の口臭には硫化水素、硫黄系、芳香族系の成分が強く関与しているという結果が得られた。タバコを燃焼させ収集した主流煙の硫化水素、硫黄系、芳香族系の臭気指数を喫煙者および非喫煙者の呼気と比較すると、喫煙者の臭気指数は非喫煙者の呼気とタバコの主流煙の中間の値を示した。硫化水素は喫煙以外のプラークや舌苔などの生理的な口臭成分としても検出される物質であるが、非喫煙者の呼気中での検出は微少であった。しかしながら、硫化水素はタバコの主流煙に多量に含まれることから、喫煙により口腔に残留するため非喫煙者と異なる様相を呈したことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
口臭の評価に用いている電子嗅覚装置(FF-2A、島津)が実験途中にて不調となり、修理・調整のために長期間使用できなかったことに合わせて、新たに追加した標準ガス(ジメチルサルファイド)の調整に時間がかかってしまったため、実験が滞ってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、予定していた「口臭症の国際分類に基づき、生理的口臭と判定され、全身疾患を有しない者」という被験者の選択基準は、高齢になるほど厳しくなり、多数の被験者を集めることが困難である。これまでの検討で、本研究で使用している電子嗅覚装置(FF-2A、島津)は、歯周疾患患者のスクリーニングで有用であること、喫煙者の口臭には硫化水素, 硫黄系, 芳香族系の成分が強く関与していることを明らかにすることができている。そのため、口臭症の国際分類に基づき、病的口臭症と判定された高齢者について、歯周病の有無、喫煙の有無などによってグルーピングし、口腔内のにおい発生源と考えられる唾液、舌苔、使用中の義歯、それぞれの揮発ガスをサンプリングバッグに集め、におい識別装置を用いて臭気を測定し、臭気指数を算出し、検討を行う。また、口臭に関する高齢者の意識を確認するため、①いつから感じているか②いつ強く感じるか③どのような時に意識するか④どんなことが困るか⑤どんな対処をしているか⑥これまでどんな診察を受けたか⑦相談できる人が身近にいるか、などについて質問票を作成し、他の年齢群と比較することも並行してすすめていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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