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2012 Fiscal Year Research-status Report

食品成分と齲蝕原性バイオフィルム及びαグルカンの相互作用に関する研究

Research Project

Project/Area Number 23593118
Research InstitutionIwate Biotechnology Research Center

Principal Investigator

矢野 明  公益財団法人岩手生物工学研究センター, 生物資源研究部, 主席研究員 (50312286)

Keywordsαグルカン / ミュータンスレンサ球菌 / グルコシルトランスフェラーゼ / デキストラン / バイオフィルム
Research Abstract

グルカンとミュータンスレンサ球菌及び口腔常在菌との相互作用を解析し、さらにこれらの相互作用に影響する食品成分の機能評価を目的とした研究を実施している。グルカン固定固相表面における齲蝕原性バイオフィルムの核となるマイクロコロニー形成能はミュータンスレンサ球菌にしか見られず、他の口腔常在細菌は付着能を示すものの、マイクロコロニーの形成は見られない。一方、グルカン合成酵素であるGtfsを発現する大腸菌は、スクロース非存在下においてもマイクロコロニー形成能を示した事から、スクロース非依存的グルカン依存的な凝集性を担う分子がGtfsであることが示唆された。さらに、グルカン依存的凝集を阻害する食品成分として、各種多糖について検討を行った結果、以外なことに水溶性の高いαグルカンであるデキストランが有効である事が明らかとなった。デキストランはGtfsによるグルカン合成を促進する因子として知られているが、0.01%程度以上存在すると、ミュータンスレンサ球菌によるスクロース依存的バイオフィルムの固相への定着を阻害することが明らかとなった。これは、細菌の足場となるグルカンの水溶性を高める事で、固相への定着能を弱めることによると考えられ、様々な口腔細菌の固相表面への付着も抑制される結果を得ている。歯面の親水性を高める事が、齲蝕原性バイオフィルムの抑制を実現する新たな方向性として考えられた。
一方、同じく口腔常在微生物である真菌(カンジダ)もある程度グルカン固相への定着能を示すが、水溶性多糖の影響が見られない。カンジダは粘膜や義歯等の表面に定着する高い能力を示す事から高齢者の口腔衛生上問題となっているが、グルカンを含む齲蝕原性バイオフィルムへの付着能も有すると考えられた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究事業では、αグルカンとミュータンスレンサ球菌によるバイオフィルム形成、およびその他口腔常在細菌との相互作用について、グルカン固定化平面を用いて解析する事、さらに食品由来成分を用いてこれらの相互作用をコントロールする事、について研究を行う事としていた。その結果、グルカン固相上にマイクロコロニーを形成しうるのはミュータンスレンサ球菌であり、その他口腔レンサ球菌は付着能を持つが、凝集が見られないことが明らかとなった。このような違いをもたらす分子として、ミュータンスレンサ球菌特有のグルカン結合タンパク質等が考えられたが、グルカン合成酵素であるGtfB, C, Dをそれぞれ発現させた大腸菌がグルカン固相への付着能およびマイクロコロニー様凝集塊形成能を獲得したことから、Gtf群がグルカン固相上への付着・凝集因子であると考えられた。
次にGtfsによる付着・凝集を阻害する食品因子として、各種多糖類について検討を行った。シイタケ由来のαグルカン含有熱水抽出多糖をはじめとして、βグルカン、ラミナリン、ゲンチオオリゴ糖、グリコーゲン等の食品に含まれる多糖について検討を行ったところ、予想外にデキストランがミュータンスレンサ球菌のバイオフィルム形成を有意に阻害する事が明らかとなった。Gtfはデキストランをプライマーとしてグルカン合成を促進することが知られているが、デキストランが0.01%程度存在することで水溶性の高いグルカンを高含有した凝集体が形成され、固相より環境中への遊離が促進され歯面等の固相表面に固着するバイオフィルム量が減少すると考えられた。
これらの知見は、非水溶性αグルカンを定着因子とする齲蝕原性バイオフィルム形成を抑制する新たな手法開発に利用可能であると思われる。

Strategy for Future Research Activity

グルカン固相を活用することで、齲蝕原性バイオフィルムの形成について新しい知見を得ることを目的として研究を実施して来たが、主にミュータンスレンサ球菌とαグルカンの相互作用の主役がGtfであることを示唆する、従来の知見を補強するデータを得る事となった。その他常在の口腔レンサ球菌について、グルカン固相への付着を確認したが、定着してバイオフィルム形成を行うような強い相互作用は見られず、グルカン存在下では主としてミュータンスレンサ球菌が齲蝕原性バイオフィルム形成を担うと考えられた。
一方で、主に粘膜の常在菌と考えられているカンジダは、他の口腔常在細菌とは全く異なるバイオフィルム形成を行うこと知られているが、グルカン固相との相互作用についての研究は少ない。カンジダのグルカンを基底とする歯面バイオフィルムへの付着や、義歯への定着を想定した実験を行う事で、近年、高齢者において齲蝕、歯周病以上に問題となりつつあるカンジダ症およびその予防法についての新たな知見を得る事を目標とする。これまで既に、カンジダのプラスチック面への付着を阻害する食品を見出しており、この食品がグルカンを介したカンジダの付着を阻害するか、ミュータンスレンサ球菌を含むバイオフィルム形成に影響を与えるか等の検討を行う。食品の有効成分については全く情報がないため、有効成分の精製、同定、さらに作用機作の推定につながる研究を実施する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

既に、他事業においてカンジダのプラスチック面への付着及びバイオフィルム形成を阻害する食品を見出している。先ず、その食品抽出物を用いてカンジダのグルカン固相への付着能の検討を行うとともに、グルカンを介したミュータンスレンサ球菌のバイオフィルム形成阻害についても検討する。これらの実験に必要な各種抽出溶媒、微生物用培地、消耗品等の購入を行う。
次に、食品中に含まれる有効成分についての知見を得る事を目的として、各種クロマトグラフィーによる精製を行う。また、遺伝子発現解析や各種阻害剤による付着阻害能の変化を調べる事で、有効成分の作用機作の推定を実施する。これらの実験に必要な各種試薬、消耗品等の購入を行う。
順調に有効成分の精製が進展した場合には、LC/MS解析の実施、NMRによる解析を実施する事で構造を明らかにする。そのための試薬、消耗品の購入に研究費を使用する。

  • Research Products

    (2 results)

All 2012

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Inhibitory effects of polysaccharides on the cariogenic activities of Streptococcus mutans2012

    • Author(s)
      Yano A, Konno N, Imai S, Kato H
    • Journal Title

      Bioscience, Biotechnology and Biochemistry

      Volume: 76 Pages: 2313-2316

    • DOI

      10.1271/bbb.120464

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] Proanthocyanidin Fraction of Japanese Grape Inhibits Biofilmformation of Streptococcus mutans.2012

    • Author(s)
      Yano A, Takahashi T, Kikuchi S, Kohama K, Yoshida Y
    • Organizer
      International Association for Dental Research General Session and Exhibition 2012
    • Place of Presentation
      Iduaqu Falls, Brazil
    • Year and Date
      20120620-20120622

URL: 

Published: 2014-07-24  

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