2012 Fiscal Year Research-status Report
医療系大学院におけるインタープロフェッション教育プログラムの構築と評価
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23593119
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩本 幹子 北海道大学, 大学院保健科学研究院, 准教授 (50292040)
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Keywords | 医療倫理 / 学際的 / 倫理教育 / 教育プログラム |
Research Abstract |
平成24年度は「研究目的」を「インタープロフェッショナルラウンドプログラムの実施と評価」とした。これに際し、多職種の医療専門職者を目指す学生を対象とした事例検討を行うために、それぞれの専門的知識を活用できる適切な事例を検討し、プログラムを実施した。また、事例検討が対象者の認知的発達を念頭に展開されることを意図して、内容を段階的に構成した。 プログラムの目標を「医療の進歩にまつわる倫理的問題を抽出し、学生自身の価値観を認識しながら、医療倫理の基盤となる理論を活用し考察する」とした。プログラムには36名が参加し、その構成は看護師、理学・作業療法士、放射線技師、臨床検査技師、薬剤師の国家資格取得者と「保健学」を専攻する大学院生である。プログラム開始時の医療倫理に関する教育背景は、高校で「倫理」を履修した者が3名、大学教育では4名(11%)のみが「医療倫理」に関する科目を履修しており、各専門職の倫理綱領、医療倫理の基盤となる理論に関する知識は、それまでの教育では触れられてこなかったという認識であった。このため、プログラムの構成は、最初に「医療倫理の理論」、「専門職と社会契約」に関する内容から始め、「インフォームドコンセント」、「誕生と死にまつわる倫理的問題」、「医療資源の配分」をテーマに、事例検討を柱に、自己の価値観への問いから医療専門職者としての問題解決法の検討まで段階的に内容を構成した。授業方略は、事前の自主学習と、学生の専攻をばらつかせたグループ単位での学習である。 授業におけるディスカッションの観察、レポートの内容分析から、基礎的な知識の習得にとどまらず、各専門職者としての価値観と責任を認識されていた。また、倫理的問題の認識、問題に関する情報収集と倫理的考察と解決法の検討まで、思考過程を進めることができていた。プログラムの前後比較により、医療倫理に関する認知は発展していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、多職種の医療専門職者を目指す学生を対象とした事例検討を行うために、適切な事例の作成を行い、プログラムの作成、実施を目標としていた。事例作成については、対象となる学生の専門性が活かされることが可能な、「出生前診断」、「脳死」、「終末期医療」、「医療資源の分配」について事例を作成することにより、高い出席率でプログラムを実施することができた。しかし、対象者のプログラム参加者が少なかったため、比較群をおいてプログラムの実施ができなかったこと、大学院生を対象とした「医療倫理教育」評価に耐える信頼性・妥当性の高い評価スケール作成が遅れており、客観的な評価が十分に行えていないため、次年度への課題が残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
プログラムの修正と、実施、客観的評価のために、評価方法を検討する。倫理にかんする認知発達の評価には、これまでRestによるDefining Issues Testが幅広く使用されてきた。これを参照し、医療専門職者の医療倫理教育への評価として結び付け、専門職者の倫理判断の発達について、内容を見直し、学士課程、修士・博士課程、臨床家と対象を設定し、調査研究を予定している。 評価方法を検討後、プログラムの修正、改善を図り、当初から予定していた、比較群を置いたうえでのプログラムの実施と評価を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、プログラムに用いる事例作成にさいして、インタビュー調査を予定していたため、国内旅費を予定していたが、医療従事者を対象とした教育に用いるための、新たな事例教材の発表と、旅費を要さずに臨床で医療に従事する専門家へインタビューを実施できたために、予定していた支出が発生しなかった。また、データ分析の際の研究支援者への支出が、データマイニングソフトの導入により不要となったため、予定していた謝金が減額となった。 平成25年度は、プログラム作成のための専門的・知識の提供や、プログラムの講師・参加者への謝金、教材費を要する。また、評価尺度作成のための、調査研究にかかる印刷費、通信費、参加者への謝金、データ分析のための研究支援者雇用費、結果に関する発表にともなう旅費に関する支出を予定している。
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