2011 Fiscal Year Research-status Report
精神科看護者が必要な看護実践能力の解明とリフレクションによる生涯学習モデルの開発
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23593138
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
井上 仁美 (小野坂 仁美) 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70284403)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | コンピテンシー / 精神科看護者 / リフレクション |
Research Abstract |
精神科看護者としての客観的な能力の基準は示されていないことから、平成23年度の研究では「コンピテンシー」という専門職の行動特性に着目した能力概念に注目し、精神科看護者に求められるコンピテンシーを明らかにすることを目的とした調査を行った。対象は200床以上を有する病院に在職している精神科での経験が10年以上の看護師5病院12名で面接調査を実施した。調査内容はコンピテンシーを明らかにするための方法であるBehavioral Event Interview(BEI)法を用いて協力に同意の得られた対象者に対し半構成的面接法による面接調査を行った。面接内容は対象者の同意を得たうえでIC録音し逐語録にした後、質的記述的に分析した。倫理的配慮として、各施設の看護部門長に文書と口頭で説明し、対象者選定について依頼した。研究者は、事前に研究者に連絡先を教えてもよいという同意の得られた対象者のみを紹介してもらい、同様に文書と口頭で説明し同意を得た。なお、本研究はA大学看護研究倫理審査の承認を受け実施した。対象者の背景は男性6名、女性6名で平均年齢は56.4歳、精神科の平均経験年数は20.9年であった。精神科看護者として経験した出来事のうち特に印象に残ったことや重大な出来事を中心に行動特性に着目した能力について分析した結果、熟練した精神科看護者は【患者と毎日話す】ことで【患者の要望を実現する】【物も人もいない環境で工夫する上司や同僚へ患者の要望を伝え理解が得られるよう働きかける】【患者の能力を見極め褒める】【人を動かす】【患者に学習の機会を提供する】ことを実践していた。また、【自分のポジションから周りを巻き込み組織を動かす】【人間関係を調整する】【他職種との連携・調整をする】【駆け引きなどの交渉】を行い、【日々の実践、個々の事例の中で関わり、体験から学ぶ】能力が高いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画として、質問紙作成のための面接調査およびグループ・インタビューの実施を予定していた。面接対象者は精神科での経験が10年以上の看護師10名程度としており、実際には12名の看護主任・師長経験者である熟練した看護しにインタビューを実施した。グループインタビューは12名の対象者に十分なインタビューができたと考え実施しなかった。手法は、コンピテンシーを明らかにするために確立された手法である行動結果面接(BEI)と言語表現の内容分析(CAVE)を予定通り用いて十分なデータが収集できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、調査用紙を作成したうえでプレテストの実施をまず行う。平成23年度に実施した調査で得られた結果は対象者の主観を基礎としたデータであるため、客観的な指標を得る必要がある。現在、福島県立看護大学で開発中の看護実践能力を測定する尺度(質問紙)を開発者の許諾を受けたうえで使用する。また、コンピテンシーおよびリフレクションの概念は多様であるため、同時に2つの概念分析を進めた上で質問用紙の開発を行う。質問用紙は対象者の属性である年齢、性別、臨床経験年数、受けた教育、性格傾向、家族状況などの個人特性がリフレションを行うことにどのように影響しているか、また、所属している病院・施設の組織文化や病棟の機能がコンピテンシーやリフレクションにどのように影響しているかを量的に分析し明らかにする。以上のことを構成要素としてに質問紙を作成する。作成した調査項目の妥当性検証のために5名程度を対象としたプレテストを行う。プレテストにて質問紙を精選したのち、全国の精神科病院を対象とした本調査の実施を行う。各病院の管理部門に、研究目的、意義、方法を記載した研究事前依頼書を送付し、同封した返信はがきで研究協力への承諾の可否を受ける。承諾の得られた病院の看護部門あてに、研究目的、意義、方法を記載した人数分の研究依頼書を質問紙および返信用封筒、質問紙配布の際の配布方法を記載した用紙を送付する。対象者となる看護師への質問紙配布の際には、配布方法に準じて配布を依頼し、回答への強制がかからないよう配慮する。研究依頼書には、研究目的、意義、方法等を記載し同意が得られた回答者から質問紙を返送してもらう。以上の手続きを経て得られたデータを共分散構造分析により探索する。関連要因については重回帰分析を行う。以上の調査から得られた結果から精神科における看護実践能力を養成するためのモデルについての試案を構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は概念分析等を行うための文献および著書の取り寄せのために図書費を使用する。そして、質問紙のプレテストを終了した後、全国の精神科病院のうち200床以上の国公立・法人立の病院約600病院に対して調査を依頼する。各病院の管理部門に、研究目的、意義、方法を記載した研究事前依頼書を送付し、同封した返信はがきで研究協力への承諾の可否を受ける。承諾の得られた病院の看護部門あてに、研究目的、意義、方法を記載した人数分の研究依頼書を質問紙および返信用封筒、質問紙配布の際の配布方法を記載した用紙を送付する。これらの手続きを経た上で調査対象者である各病院の熟練看護者に調査用紙を配布してもらい、返信用切手を貼付した返信用封筒が届くようになる。以上の調査を実施するためには、調査用紙等の用紙、印刷、往復はがき、返信用切手、手数料等が必要である。なお、調査について説明依頼を養成された場合は、当該病院まで出向いて説明および調査協力を依頼する予定であるため、旅費および宿泊費等が発生する。以上の手続きを経て得られたデータを共分散構造分析および重回帰分析を行うための統計ソフトが必要である。これらの調査および分析を行う上で研究協力者を雇用するため人件費または謝金を使用する。また、協力が得られた病院においては引き続いて調査の結果から得られたモデル案を実際に試行する予定であるため、そのための旅費および宿泊費が必要である。 これらの調査および分析で得られた結果を国内および海外の学会にて順次発表する予定である。これらの学会出張のための旅費および宿泊費と学会参加費、論文発表の場合はネイティブが査読したアブストラクトが必要なため、そのための謝金等が発生する。
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