2011 Fiscal Year Research-status Report
薬剤耐性菌出現を防止するための、看護師の手指表面免疫物質による抗菌効果
Project/Area Number |
23593142
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
荒川 満枝 大分大学, 医学部, 准教授 (00363549)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 手指衛生 / 薬剤耐性菌 / 免疫 / サイトカイン / 看護師 |
Research Abstract |
抗菌剤の乱用がもたらした薬剤耐性菌の出現は世界的な問題である。看護師の手指は患者に直接接触する機会が非常に多く、手指衛生は院内感染防止の最重要ポイントである。本研究は、これまで我々が明らかにしてきた看護師の「手指表面の正常な免疫機能」という視点から、「手指の免疫機能と皮膚常在菌との相互作用」を明らかにすることを目的とする。 23年度は、手指表面に存在する一部のサイトカイン測定方法として、ELISA法の構築・最適化を主として実施した。検討したのは、使用する抗体の種類、抗原や抗体の反応時間、ブロッキング剤の選定、検出波長、標準(測定基準)物質の選定等である。これまで高価なキットを使用してきたが、本検討によってより安価に測定可能となった。 一方で、手指表面物質と手指の常在菌をご提供いただくボランティアを募集するに当たり、学内研究倫理委員会へ諮問を行い、問題なく承認を得た。 これを受けて募集のためのポスターを作成し、ボランティア募集を開始した。現在10名程度のボランティアの協力が得られ、今後の試料採取がスムーズに行くよう予備実験として手指表面の物質を採取した。採取の際は、手洗いを全くしない時(手洗い前の状態)のものと、何らかの手洗い(日常手洗い、衛生的手洗いなど)をしたもの(手洗い後の状態)とで採取し、採取した試料を使って、上記で構築したサイトカインの測定の最適化にも供した。細菌の同定、手指表面物質の細菌増殖抑制効果については、今後実験に供せるよう、試料を適切に保存した。 さらに、学会としての手指衛生に対する考え方、法改正、臨床の動向、世界的な手指衛生の動向、研究方法などについては、環境感染学会やワクチン学会等に参加し情報収集を行った。さらに皮膚等の研究を行っている看護系大学教員と研究会を行い、本研究の方向性について示唆を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「手指の免疫機能と皮膚常在菌との相互作用」を明らかにすることを目的とし、具体的には、以下の3点を明らかにすることとしている。1.安価で有用な手指表面サイトカイン測定システムの構築。2.個人特性による手指表面サイトカイン分泌の違いと常在細菌叢への影響。3.手洗い方法が手指表面のサイトカインに与える影響。 上記目的のうち、1.に関しては概ね順調に条件検討が終了したが、実際の試料によっては希釈等の配慮が必要になることが予想されるため、本格的な測定に際しては注意が必要と考えている。現在ELISAのみで行っている測定は、ウエスタンブロット法等で確認が求められると考えている。 2.3.の達成のため、ボランティアとして健常な手指を持つ約100名を予定しているが、現在10名程度の協力者より手指表面の細菌および物質を採取し、細かな試料採取方法や保存方法に関して予備実験を概ね終了したところである。既に採取した試料は適切に保存済みであり、さらなるボランティアを得て本試験に入る段階である。 ボランティア募集に関しては、倫理審査を予定通り通過し、ポスターによるボランティアの募集を行っており、応募状況は良好である。いずれのボランティアも研究の趣旨を良く理解され、本研究に期待をかけられる方が多く、研究の意義を新たにしている。 ボランティアの募集は予定としても今年度まで実施し試料を得て細菌の培養や各測定をして行くことにしている。また、各測定のための備品類の購入も予定通り実施した。以上より、概ね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
目的を達するために、ボランティアとして健常な手指を持つ約100名を予定している。今年度、募集を続け、試料数を増やすことが出来るよう、適宜ポスターの更新などを行いたい。 得られた試料を使って適宜測定、細菌同定,保存の作業を行う。募集人員が多いため、試料の採取・測定・細菌同定・保存には24年度内いっぱいの時間を要することが予測される。同時にボランティアの特性と手指表面サイトカイン分泌、常在細菌叢の情報の整理を適宜行いながら、結果の公表に備えるが、25年度の初めには論旨の方向性を定めていきたい。公表可能な内容がまとまれば、学会発表も適宜行いながら、識者の意見をいただく機会を得たい。 25年度には冷凍保存していた細菌および手指表面物質を使用して、手指表面物質の抗菌効果を測定する。測定方法に関しては、細菌の増殖抑制を指標としながら、顕微鏡観察などを併せて、根拠を明確に示す。研究方法として新しく紹介されるものがないかも、適宜情報を集めながら吟味する。 また研究期間を通して、学会としての手指衛生に対する考え方、法改正、臨床の動向、研究方法などについては、常に各学会等を通して情報収集を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度はボランティアより、本格的に試料を採取する予定である。従って大量の試料が得られるため、試料採取・測定・細菌同定・保存に必要な各試薬、ディスポーザブル器具が大量に必要となると考えられる。特にサイトカイン測定のための抗体等に、予算を多く使用する。顕微鏡写真データ、ELISAデータ等の処理のため、機器と接続する専用のノートパソコンと外付けハードディスクなどの周辺機器を準備する予定である。 試料の大量採取に伴って、連携研究者には、試料の採取、試料の凍結保存、試料管理、必要時には実験の補佐に当たってもらわなければならないため、年に3回ほど本学への出張をお願いするための旅費を要する。学会発表や学会や勉強会での情報収集のための旅費も使用する予定である。
|