2012 Fiscal Year Research-status Report
災害看護に取り組む看護師支援に関するアクションリサーチ
Project/Area Number |
23593144
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Research Institution | Sapporo City University |
Principal Investigator |
太田 晴美 札幌市立大学, 看護学部, 講師 (90433135)
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Keywords | 災害看護 / アクションリサーチ / 看護師育成 |
Research Abstract |
本研究の目的は、前年度に引き続き災害看護に興味を持っている看護師に研究協働者として参加してもらい、日常看護とのつながりを意識できる実行可能で具体的な災害看護教育(訓練)プランを策定・提示する。災害看護に携わる看護師ネットワークを形成し、災害看護教育(訓練)を複数回行ない、研究協働者自身の変化と相互支援の有益性を明らかにする(H23-25年度)ことである。 H24年度は、ワークショップ(以下WS)を8回(通算12回)開催した。昨年策定した研修プログラム目的・目標に合わせ臨床看護師へ教育していくための具体的方策について議論を展開した。その結果、①エマルゴトレーニング(災害訓練)で災害看護教育参加者全員が同一の災害疑似体験を行う②災害疑似体験時に感じた状況や必要なスキルと抽出したスキルは日常看護で養うことができないかをグループワークを行うという教育プランを策定した。策定した教育プランに基づき、プレ研修会を2回行い、教育方法の評価修正を行った。 WSで災害看護教育実践に向けての準備を話会う中で、自らのファシリテーションスキルの向上の必要性が挙げられ、ファシリテーション研修を1回開催した。 協働者は、自主的に情報を集め、WSに参加することが増えている。「○○やりたい」という思いのレベルから「○○する」と行動レベルに転換されたことは、大きな進展である。また、日々の看護業務に携わりながら、災害看護を意識することが増え、それを他者へ伝えたいという意欲につながり、災害看護の普及へ寄与する一歩を踏み出していると考えられる。所属、職位、立場、災害看護への関わり方等が異なる参加者が、平時から顔の見える関係性・ネットワークづくりとしても機能し始めていると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H24年度計画では、平成23年度にWSで立案した災害看護教育を基にメンバー全員が内省しながら災害看護教育を実践評価することであった。しかしながら、WS終了後、「このままでいいのか」と問われ、真剣に考え、進むべき方向性を模索した。アクションリサーチは原則『参加者全員が合意の上進む』を基本としていたが、WSを継続する内に『暗黙の了解』が増え、真の意思疎通が欠如していったと考えられる。そこで研究計画を修正し、参加者全員の意見の一致を図るWS(内省WS)を行い、参加者相互の成長を振り返るとともに他の参加者へのフィードバックの機会を設けた。WSを継続する内に『暗黙の了解』が増え、真の意思疎通が欠如していったと考えられる。メンバーの取り組みをWSにより、外発的に動機づけるだけではなく、内発的動機づけがなければ、災害看護への取り組みを継続させることは難しいことが明らかになった。WSの内容を変更し内省したことは本研究目的の一部「研究協働者自身の変化」に大きくかかわることができるため、必要な時間であったと考えている。 内省WS以後、教育プログラム策定・実践・評価に向けて、「プログラムの立案」だけではなく、プログラムを運営するための知識や技術を養わなければならないことが確認され、全員でファシリテーション研修を2回実施した。一般的にも災害看護教育は確立しておらず、教える側の不安要素が大きいことから、企画者自身がスキルアップすることは、今後も求められていくと考えられ、このことにより研究計画が遅れる結果となった。 H24年度はその成果を研究者・協働者それぞれが学会等で発表した。また国内で実施されている災害関連セミナーで教育訓練手法に関する最新情報を得ながら、学会等で最新の知見を得て教育方法立案・評価の際に参考としてきたことは、計画通りに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
H23年度は研究者主導であったが、H24年度から、WSは研究協働者の役割分担が明確になったことから、研究協働者を主体に開催できた。研究データは、H24年度と同様にWSの議論内容、研究協働者の行動変容、災害看護教育方法策定プロセスとから収集する。また、7月ごろを目標に、メンバーで立案した災害看護教育を実践できるよう、研究メンバー全員で準備を進める。その後、実践した災害看護教育を評価し、改善プランの立案を行う。いずれのプロセスにおいても、研究メンバー全員の意見が一致する(合意が得られる)まで、議論を行いながら進めていく。WS回数は、研究メンバーとの調整で決定し、必要回数(最大年間7回まで)行う。 実践の評価に当たっては、研究参加者が災害看護教育の知識や技術を得る必要性がある。特に東日本大震災以降、各学会やセミナーなどで災害に関する知識や技術の見直しが行われている。本年は災害看護教育を実践し、評価するに当たり、研究者・研究協働者が最新の知識を得て、より有効な災害看護教育プランに改善していく。そのため必要に応じて研究者・研究協働者が学会やセミナーに参加する。 アクションリサーチは、研究者と研究協働者それぞれが内省を繰り返し、学びを得て成長をしていくことにも寄与することとなる。したがって、学びのプロセスを研究者並びに研究協働者が学会等で発表をしていく予定である。 3年間のWSを通して研究メンバー間で相互支援できるネットワーク構築ができたかを評価する。最終的には災害看護に携わる看護師の意欲の向上と相互支援できるネットワークを構築するプロセスの有用性を評価し、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度は、WSの回数は順当に行えたが、実際の訓練に必要な物品購入が比較的安価に抑えられたこと、教育(訓練)の実施が小規模で行えたことにより245501円の残額が生じている。既にH25年度の、災害看護教育(訓練)実施を計画しており、災害教育に関連した非常食や、無線機、テント等を購入する予定である。 H25年度は、H24年度に引き続きWSを行い、災害看護教育の立案し実践するために、参加者謝金が必要である。なお、WSは研究メンバーで必要回数(最大7回まで)を行う予定である。 災害看護教育立案のために、災害看護教育訓練に必要な物品(無線機、非常食、災害非常持ち出し物品、識別衣、災害被災地での生活グッズ等)を購入する。 本研究でデータは、ワークショップ談話、教育(訓練)実施、教育プログラム参加者ヒアリング、研究代表者・協働者の内省等、多様な形態で収集されるため、膨大なデータを取り扱うこととなる。そのため、研究補助者を雇用し、データ入力・分析補助を依頼する予定である。 研究者・研究協働者が最新の知識を得て、より有効な災害看護教育を策定していくため必要に応じて研究者・研究協働者が学会やセミナーに参加する旅費並びに参加費を支出する。またアクションリサーチは、研究者と研究協働者それぞれが内省を繰り返し、学びを得て成長をしていくことにも寄与することとなるため、学びのプロセスを研究者並びに研究協働者が学会等で発表するための旅費・参加費を支出する。
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