2012 Fiscal Year Research-status Report
心拍データによる睡眠評価方法を用いた睡眠への看護介入効果の評価
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23593172
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
谷田 恵子 兵庫県立大学, 看護学部, 准教授 (60405371)
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Keywords | 睡眠 / 評価 |
Research Abstract |
老健施設入所中の高齢者を対象に、音楽療法として提供されているアクティビティが、夜間の睡眠と自律神経系活動に及ぼす影響を検討した。被験者には他の入所者と共に1か月に2回、施設スタッフによる音楽療法を午後に1時間参加してもらい、実施日の午前と翌日の24時間および、活動のない土日曜日の24時間の心拍と身体活動データを得た。その4日間を含む3週間はシート型睡眠計による睡眠評価も行った。その結果、実施日と安静時との比較では、24時間、消灯~点灯まで、睡眠中と推測される夜間の時間帯のいずれにおいても、心拍変動周波数解析の低周波成分値(LF)と高周波成分値(HF)の比[LF/HF]と、LFとHFを合計に対するHFの値[HF/(LF+HF)]、および心拍数[HR]の各平均値に差は認められなかった。また、活動計および睡眠計から得られた結果でも音楽療法の睡眠への影響を読み取れなかった。健康高齢者では運動した日としない日で入眠後1時間および3時間の心拍変動周波数解析結果を比較し、入眠後1時間のデータでは効果が評価できたが、入所高齢者のデータでは正確な入眠時間を明らかにすることができず評価できなかった。 上記3種類の心拍変動解析データの時系列プロット結果からは、音楽療法への参加は対象者にとって交感神経系への刺激となっていることがわかった。いずれの対象でも音楽療法の時間帯とその20分までの区間では、その前後1時間よりもLF/HFとHRの上昇、HF/(LF+HF)の低下が目視できた。このことより、音楽療法の実施は対象者にとっては交感神経系活動を亢進させる刺激となっていたことは確認できたが、その刺激は夜間の睡眠に影響を及ぼすものではなかったと考えられた。たま、心拍変動データで睡眠やリズムを評価しやすい対象の条件として、24時間の平均心拍数が70bpm以上であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H24年度は、高齢者のリハビリテーション・レクリーエーション向けにプログラムされた大型ゲーム機を用いた介入の成果を検討することが主たる目標であった。そこで、そのゲーム機をリースして、実際に施設入所の高齢者にそのゲーム機で遊んでいただいた。しかしながら、いずれのゲームも認知・運動機能が低下している対象者にとっては、ゲームの難易度は通常よりも低く設定してあるといえども、娯楽=活動につなげることが可能な内容ではなかった。そのため、大型ゲーム機を用いた介入ではなく、施設で実施されている音楽療法を介入として今年度はデータ収集を行った。 データ収集を実施した冬季は感染症発生による施設における面会禁止や音楽療法を含む各種イベント中止などがあり、データ収集を計画通り遂行できなかった。また、継続中断や測定の不具合などでデータ欠損による分析対象外となったデータもあり、達成度はやや遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度は、光環境の調整による効果の評価を目標とする。光環境については、照明器具からの高照度の光が眩しく不快と感じる対象が多かったことから、看護学生をアルバイト雇用し、対象者が屋外に出る機会をつくることで、日光浴が睡眠に及ぼす影響を検討していく予定である。週に2~3日程度屋外に出て日光浴できる週を設け、そうでない週と睡眠状態を比較する。 次年度のデータ収集にあたっては、心拍データと比較するための他の睡眠評価の方法の再検討を行う必要がある。既存のマット式睡眠計や腕時計型睡眠評価機器だけでは、活動量が少なく日中でもベッド上で臥床して過ごす時間が多い高齢者では正確に活動や睡眠状態を把握するには限界があることから、対象の夜間の状態についてスタッフから現状よりも詳しい情報を得られるようにし、対象からの聞き取りよる情報も合わせて評価していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に繰り越す予算では、当初の計画にはなかったデータ収集を担当できるアルバイト者の雇用に充てる予定である。また、来年度は本研究課題の最終年度でもあることから、研究成果を学会発表するための旅費・資料作成費としても研究費を使用する。
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