2012 Fiscal Year Research-status Report
看護技術の適応的熟達に伴う思考と感情の変化過程に関する実験検証
Project/Area Number |
23593178
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Research Institution | Fukuoka Prefectural University |
Principal Investigator |
永嶋 由理子 福岡県立大学, 看護学部, 教授 (10259674)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤野 裕子 長崎県立大学, 看護栄養学部, 教授 (00259673)
渕野 由夏 福岡県立大学, 看護学部, 講師 (20316144)
加藤 法子 福岡県立大学, 看護学部, 講師 (20330699)
津田 智子 福岡県立大学, 看護学部, 准教授 (30305172)
藤野 靖博 福岡県立大学, 看護学部, 助教 (20405559)
於久 比呂美 福岡県立大学, 看護学部, 助手 (10512022)
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Keywords | 看護技術 / 熟達 / 血圧測定 / 思考 / 感情 |
Research Abstract |
平成24年度は,看護技術の「適応的熟達」(実践を通して構成された概念的枠組によって,問題状況の変化に柔軟に対応し適切なスキルの実行を導くことができること)段階に至る過程で起こる思考の変化を科学的視点から検証するために,熟達者に対してプレテストをおこなった.思考の変化を検証するために,光イメージング脳機能測定装置(Spectratech OEG-16)を使用した.この装置はノートパソコン半分程度の大きさながら16チャネルの計測点を同時測定できる機能をもつ簡便でかつコンパクトな前頭葉専用装置である.移動も可能で多様な測定にも対応できることから,動きの伴う看護技術に適応できる装置であり,実験結果の信頼性も高いと判断した.身体的動作の向上については,簡易型動作分析支援システム(EASY-8)を使用し,客観的に分析を行う. 脳は,行動,感情,思考などをつかさどる器官で,機能ごとに使われる部分が異なっている.大きく分類すると前頭葉,後頭葉,頭頂葉,側頭葉の4つの部分に分けることがでる.前頭葉は高次認知機能,後頭葉は視覚,頭頂葉は体性感覚,側頭葉は聴覚をつかさどる機能が存在するといわれている. 熟達者に対するプレテストをおこなった結果,血圧測定を開始する前に,前頭葉全体のオキシヘモグロビンの増加,デオキシヘモグロビンの減少がみられた.終了後はデオキシヘモグロビンの増加がみられた.このことより,血圧測定前は,前頭葉全体で思考が活発となり,測定中は,熟達者であるため,手技的には一連の動作が反射的におこなわれた結果,前頭葉の一部のみと,聴覚をつかさどる側頭葉に近い部分の活動が活発になった可能性が考えられる.今回のプレテストの結果をもとに平成25年度は本実験をおこない血圧測定時の「適応的熟達」段階に至る過程で起こる思考の変化を科学的に検証していく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,看護技術の熟達化を科学的に検証するために,熟達者に対してプレテストをおこなうことができた.所属する大学の研究倫理委員会に申請書を提出し,何度かのやり取りを経て承認を得ることができた.8月のプレテストでは,最初に意味をなさない十字の図を見せ,脳機能を安定化させたあと,準備段階~触診法(イベント1),上腕動脈の拍動を確認~マンシェットを巻く(イベント2),聴診器をあてる(イベント3),目的の値まで送気球を加圧する(イベント4),送気球のねじをゆるめ水銀を一定の速さで下ろす(イベント5),マンシェットをはずす(イベント6),血圧計の片付けを終える(イベント7)としてオキシヘモグロビン濃度,デオキシヘモグロビン濃度,トータルヘモグロビン濃度を測定した.これらの濃度変化を測定した結果,最も前頭葉全体のオキシヘモグロビン濃度が上昇したのは,イベント1の時であった.イベント2~5の時は,前頭葉の中心部と側頭葉に比較的近い位置のオキシヘモグロビン濃度が上昇した.熟達者の場合,血圧測定を開始する前に,これからおこなう看護技術についてイメージ(思考活動)をしており,その結果血圧測定前が最も前頭葉の細胞活動が活発になった可能性が考えられる.一方熟達者は,血圧測定を開始した後は,そのイメージに基づいて,反射的に技術をおこなうため,開始前より前頭葉の細胞活動が限局された可能性が示唆される.また側頭葉に比較的近い位置の細胞活動が活発になったことについては,コロトコフ音の聴取のために聴覚をつかさどる側頭葉の血流量が増えた結果その周囲の血流量も増えた可能性が考えられる. 今回おこなったプレテストによって,具体的な実施方法,問題点,改善方法が明らかになったことより,平成25年度の本実験に向けて,平成24年度に計画していた研究をおおむね遂行することができたと評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度実施したプレテストをもとに一部修正した実験プロトコールについて,実験方法の妥当性を専門家の意見を参考に,共同研究者を交え最終確認後本実験を実施する.本実験では,プロトコールに則り実施するが,実際に動きの伴う看護技術においても光イメージング脳機能測定装置で正確なデータがとれるかの確認作業も引き続きおこなう.装置装着や動作時のデータ収集に問題がなければ,解析段階に進む.解析は,東京の専門家に指導を仰ぎながら進めていく予定である.また,身体的動作向上の確認は,血圧測定中の全ての工程を録画し,データを簡易型動作分析支援システムに取り込み分析する.分析の際は,購入業者に確認してもらいながら正確に行う.記録や自己評価は,目的に適っているか,内容が反映されているかなど検討し,改良する余地があれば修正および追加等加え,妥当性のある指標にしていく予定である. 平成24年度に海外での学会参加(6名分の一部費用に充てる)を計画していたが、業務等の都合により参加できなくなったため、残額が生じた。 平成24年度残額を、平成25年度の研究支援者雇用費に充てる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費を以下の目的で使用する。 ①実験データの入力作業料(研究支援者雇用費) ②実験消耗品の購入 ③解析指導料および東京出張旅費 ④学会参加費 ⑤論文投稿費・英文論文の添削指導料
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