2012 Fiscal Year Research-status Report
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23593195
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
小平 朋江 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 准教授 (50259298)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 武彦 和光大学, 現代人間学部, 教授 (60176344)
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Keywords | 精神看護 / 看護教育 / 統合失調症 / 闘病記 / ナラティブ / 教材 / テキストマイニング / 伝記分析 |
Research Abstract |
初年度から継続して(1)闘病記の収集(2)データの電子化とコーパスの作成(3)テキストマイニングによる量的分析(4)原文参照によるテーマ(主題)分析(5)伝記分析による質的分析(6)看護学・心理学関連の国内外の学会発表、に取り組んだことで研究はさらに進展した。 (1)は、217冊の闘病記リストと年代別グラフを作成し、現物のかなりの部分を入手した。研究成果は、「統合失調症の闘病記のリスト:ナラティブ教材の可能性を展望する」のタイトルで、雑誌『心理科学』に掲載となった。この成果は精神医療の歴史や変遷と出版年との関連をリストやグラフの作成により可視化した点に意義があり、ナラティブ教材になり得る闘病記は豊富に選択可能と考える。この成果を得たことで(2)(3)(4)(5)に該当する作業、および本研究の目的に合致する分析対象となる闘病記を選択する作業も具体的に進行中である。 実際に授業の中で教材に活用している闘病記もあり、患者への共感的理解のためのナラティブ教材活用の実践に取り組み中である。その効果は学生からの反応や評価により確認し、日本看護科学学会で「ナラティブ教材を用いた精神看護学授業における統合失調症のイメージ向上:テキストマイニングの評判分析」のテーマで報告した。この成果により教材として講義レジメなどの配布資料や教材提示順などに対する貴重な示唆が得られ、今後の実践に生かされるものであることが示された。 また「闘病記研究会フォーラム」より講師依頼があり、「ナラティブ教材としての闘病記」の演題で講演をした。この講演会の参加者は50人を超え、看護学・医学分野の他、心理学・社会学分野の研究者や教育関係者・支援者、何らかの病いを抱える当事者や家族も参加しており、立場や分野を超えて闘病記に関心を持つ人々の交流の場であった。ここで本研究成果を社会や国民に発信できたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
雑誌『心理科学』掲載の「統合失調症の闘病記のリスト:ナラティブ教材の可能性を展望する」は、リストの中から良質な闘病記をナラティブ教材として実際に選択可能にしてくれるものである。そしてこのリストが出版されたことで、精神看護学教育への活用だけでなく、心理学分野での教育への活用も可能にし、また、このような研究に関心のある研究者に貴重な資料を提供したと考えている。 雑誌『日本精神保健看護学会誌』に投稿の論文「ナラティブ教材を用いた精神看護学授業での統合失調症のイメージの変化:テキストマイニングによる特徴語と評価語の分析」は、掲載決定通知を受け完成原稿の送付も完了したところである。 実際の教育実践の場や、学会での発表や投稿も含め、おおむね順調に進展していると考える。同時にこの進展は、最終年度である平成25年度の研究推進をさらにスムーズにさせるための強力な要因になるものであると考えている。 本研究成果は、看護学教育という限られた場での活用だけでなく、「闘病記研究会フォーラム」での講演においては、分野を超え、また当事者・研究者の立場も超えて、社会や国民にも発信できたといえると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画として(1)看護学・心理学関連の学会での発表と投稿論文作成(2)看護学教育に効果的に闘病記を活用するための実践の継続(3)ナラティブ教材になり得る良質な闘病記のテキストマイニング分析、がある。特に闘病記のテキストマイニング分析に関わるデータの電子化やコーパスの作成、および、研究成果を学会で発表し投稿論文作成のために、これまで以上に共同研究者間での連携を取り、研究推進していく。 入手可能な闘病記は入手しPDFなどに電子ファイル化して検索可能にする作業は継続する。闘病記の分析に関しては、質的分析である伝記分析の考え方に基づきながらもテキストマイニングを活用する事で可能になる量的分析を意識して行う。 統合失調症闘病記217冊のリストの中からナラティブ教材として効果的なものを選択し、当事者の病いの物語りの構造と生き方の回復のプロセスを明らかにする。患者への共感的理解にとって効果的な闘病記の選択の示唆を得るため、統合失調症とはどのような体験であるか当事者や家族の闘病記によって明らかにする。 日本心理学会では統合失調症の闘病記の書名をテキストマイニングで分析した成果を発表し、論文化して看護雑誌に投稿する予定である。日本看護科学学会ではナラティブ教材になり得る良質な闘病記のテキストマイニング分析の成果を報告する予定である。 実際の講義でのナラティブ教材としての闘病記の活用は継続し、看護学教育にとってより効果的な活用ができるように、教材の内容やその提示方法を洗練していく。また本研究の成果は、教育の場での活用や研究者によって利用されることだけでなく、機会があれば当事者や当事者家族が利用可能な形にしての発信も念頭に入れても良いと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度が終了年度で、最終的な分析と統合のため研究者2名の研究打ち合わせの旅費、および論文投稿にあたっては資料作成のための人件費・謝金が必要となる。研究成果を看護学・心理学関連の学会で発表するための旅費も必要である。 また、教材になり得る良質な闘病記選択のための検討と闘病記のテキストマイニング分析では大量のテキストデータの量的質的分析となり、そのための打ち合わせの時間と人件費・謝金は十分な確保をしなければなければならない。テキスト入力、データの電子化とコーパス作成、図表の作成のための人件費・謝金が必要である。 闘病記や手記の収集を引き続き行うので、購入もしくは複写のための費用と研究室所蔵のテキストマイニング保守契約のための費用も必要となる。また、入力したデータを印刷して確認するためのプリンタインクなどの文房具、論文作成のための図書費や複写費も計上する。
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Research Products
(3 results)