2012 Fiscal Year Research-status Report
大衆文化作品を利用した看護コミュニケーション技能教育の方法開発
Project/Area Number |
23593214
|
Research Institution | The Japanese Red Cross Kyushu International College of Nursing |
Principal Investigator |
因 京子 日本赤十字九州国際看護大学, 看護学部, 教授 (60217239)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 瑞子 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (80156463)
山路 奈保子 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40588703)
石橋 通江 日本赤十字九州国際看護大学, 看護学部, 教授 (30369087)
松尾 和枝 日本赤十字九州国際看護大学, 看護学部, 准教授 (90389502)
上村 朋子 日本赤十字九州国際看護大学, 看護学部, 准教授 (30352347)
|
Keywords | 看護コミュニケーション / ポライトネス・ストラテジー / 言語行為 / 社会文化敵技能 |
Research Abstract |
教材『大衆文化作品で学ぶ看護コミュニケーション』タスク集および資料集を、語学専攻の研究共同者と共に、看護系の共同研究者の見解を取り入れて、作成した。ストーリー・マンガの作品から、医療現場を舞台とするもの、医療倫理に関連する題材を扱ったものでコミュニケーション上の問題を提起する内容を含むものを選定し、それらについてのタスクを考案し、学部生および一部は大学院生の小クラスで試用し、結果をもとに修正を行って作成した。内容は、12の作品を題材に、言語の特徴の分析、自己の言語生活についての内省、特定の発話の文脈における意味・効果とその産出機序の分析、同種の言語行為の達成方法のバラエティとその選択基準、日本語におけるポライトネスストラテジーなど言語について観察および分析を行う客観的タスクと、発話から窺える人物の心理についての分析や描かれている内容に対する自己の見解を表明する主観表明タスクとから成る。この教材は、低年次の学生の意識化を主な目的としているが、実務経験のある大学院生等に認識の言語化を促す目的でも使用することができる。 試用結果から得られた看護学の初年次学生の問題点を分析し、第14回東アジア日本語日本文化FORUM(開催場所:上海外国語大学)において「ストーリー漫画を用いたベッドサイドコミュニケーション技能訓練:日本語教育の知見を応用して」と題する口頭発表を行った。また、同学会において、「日本語の社会文化技能の教育補法」と題する招待講演を行った。さらに、「母語話者が知っていて学習者が知らないことは何かー学習者と母語話者のマンガ発話の解釈から」と題する論文を、単行本として刊行された『言語と文化の対話』(花書院)に発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、看護学を専攻する学生のコミュニケーション技能の向上を促す教育方法を開発することであり、具体的には、3年間の研究期間中に1)大衆文化作品を利用した看護コミュニケーション技能訓練教材の開発、2)訓練活動とコースデザインの提案、3)指導者用の手引きの作成、4)開発した教材と訓練活動の教育効果の検証を行うことを目指している。 2年目にあたる24年度までに、1)に述べた教材を完成し、その作成過程で2)に述べた、学習の活動とコース・デザインについても、基本的な具体像を得ることができた。さらに、教材としてまとめることになった試作タスクを用いた実験授業での活動を通して、教育効果の観察も実行している。本研究は、看護学専攻を志した学生が核家族と年齢別に輪切りにされた学校生活の中で限られた人間関係の体験しか持たず、人間関係において生ずる問題について解釈を忌憚なく話す機会が少ないため、看護師としてのコミュニケーション能力を獲得できるかどうか強い不安を抱いていることに危惧を感じて企画したものであったが、学習活動に参加した学生からは、自分が直接関わる案件でない事例について忌憚なく話し合う機会が得られることが高く評価されている。 現時点での課題は、これまでの実験授業は研究代表者が実施したものであり、他の看護学専攻教員が実施する場合に必要であろうと思われる指導者用のリソースが未だ作成されていないことである。しかし、今年度の前半にそれを作成し、試用による検証を経て、年度末までには作成することができると考えている。 したがって、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
25年度は、教材『大衆文化作品で学ぶ看護コミュニケーション』の指導者用手引きを作ることを優先目標とする。その具体的内容は、発話がある効果を得るために関与する要素とその作用機序の記述を中心とする予定である。看護師が患者と行うコミュニケーションに関して、具体的な場面において頻出しがちな問題のある発話を取り上げ、その不適切を説明し、修正案を示すという手段を用いてコミュニケーション力向上を支援するのではなく、この教材に含まれた、言語の特徴の分析、特定の発話の文脈における意味・効果とその産出機序の分析、同種の言語行動の達成方法のバラエティとその選択基準の記述、日本語におけるポライトネスストラテジーの記述などを行うことは、直感に恵まれない看護学生の理解を助けると思われるが、直感に優れた者が多い看護学専攻の指導者には、機序の言語化をゼロから行うことは困難であると思われるため、指導者用のリソースの作成は必須である。また、このリソースを使用することで、指導者の分析力も精緻化すると期待でき、それは、類似の問題の把握や事例の収集に多くの援助が得られると期待される。 効果の検証と学術発表を並行して行うとともに、素材の発掘してさらに多くのタスクを作る努力を継続したい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の6割程度は、教材『大衆文化作品で学ぶ看護コミュニケーション』の指導者用手引きを印刷製本することに使用する予定である。残りの4割は、学会発表等の旅費、新たな素材発掘のための作品購入費、手引きの編集の補助を依頼するための人件費等に支出することを予定している。
|
Research Products
(8 results)