2012 Fiscal Year Research-status Report
温存術後に放射線治療を受ける乳がん患者の回復を促進する看護の質評価指標の開発
Project/Area Number |
23593242
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Research Institution | Gunma Prefectural College of Health Sciences |
Principal Investigator |
小林 万里子 群馬県立県民健康科学大学, 看護学部, 講師 (20433162)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二渡 玉江 群馬大学, 保健学研究科, 教授 (00143206)
中西 陽子 群馬県立県民健康科学大学, 看護学部, 教授 (50258886)
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Keywords | 乳房温存術 / 放射線治療 / 回復 / 看護の質 / 評価指標 |
Research Abstract |
乳がん温存術後放射線治療期の看護において,放射線治療前・中・後期に必要な看護ケア実施割合は,認定資格の有無別で認定のない看護師の方が高かった.関わる看護師が,その場で担当する役割を確実に果たすことが看護ケア充実に影響することが明らかになった.また,専門性を有する看護師と協働や連携を強めることで看護ケアの充実につながる.この成果は論文として発表,国外で示説発表した.現在,看護実践調査から看護ケア充実の評価指標となる構成概念,下位概念を抽出している. 患者調査では,温存術後放射線治療期の乳がん患者の特性を明らかにし,回復促進に関わる看護ケアの要素の検討を目的に面接・質問紙調査を行った.温存術後放射線治療期には,新たに始まる放射線治療への戸惑いや不安,放射線治療開始以降に出現・残存する症状や放射線治療と生活の調整の負担,相談環境の不備などが患者の苦痛として挙がった.看護では,①有害事象や治療に関する情報提供や相談できる環境づくりの促進,②放射線治療中・後の症状や生活の制約に対するコーピング強化・セルフケア向上が回復促進の重要な要素であるといえる.また,質問紙調査において分析した16名の対象では,放射線治療期の総体的なQOLは総じて大きな変化を示さず,心理社会的な内容の得点変動がみられた.皮膚炎や倦怠感の出現はQOLに影響せず,気分や自己効力感が照射中のQOLと相関していた.心理社会的な問題や困りごとは身体症状や全体評価に隠れて見えにくくなっている.身体症状のコントロールとともに心理社会的な側面への意識的な支援が回復を促進し,QOL向上につながる看護ケアの要素となることが示唆された.データ収集の遅延がみられたが,途中経過としてまとめ,国内外で示説発表できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
乳がん温存術後放射線治療期の患者調査では,面接調査予定数の15名に対しての調査を完了した.質問紙調査では,温存術後~照射終了1ケ月までの計4回の縦断的データ収集を30名と予定したが,途中脱落や記載不十分により質問紙の有効回答として29名で調査を終了とした.これは,2施設での質問紙調査・面接調査を実施してきたが,放射線機器の入れ替えにより平成24年7月以降,1施設において調査が中止となった.他方1施設のみの実施となり,対象者の予定数確保の遅延がみられた.データ収集の遅延により,結果集計・分析やまとめは当初計画の予定より遅れている.しかし,関係する論文が原著として発刊となり,途中経過ではあるが温存術後放射線治療期の看護・患者特性の一部を国内外で3件発表した.看護師特性と患者体験の2側面を合わせた,現実的な温存術後放射線治療期の看護の質を担保する要素の抽出を確実に進めていく必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,24年度の患者調査の分析を進め,放射線治療期の患者特性やニーズから回復を促進,看護を充実させる要素を検討し抽出する.同時に看護実践特性から放射線治療期の看護充実の評価指標となる要素を抽出し,構造・過程・結果の3領域に沿って乳がん患者の温存術後放射線治療期の看護の質を評価する項目案を作成していく.作成した暫定版質評価指標案について,指標の内容や言い回しなど専門家や臨地で働く実践家の意見聴取を行い,精錬した修正版質評価指標の作成を目指し,信頼性,妥当性の検証に進む.平成26年度には,乳がん患者の放射線治療期看護ケア質評価指標の研究成果公表を進める. 現状を鑑み,当初計画より遅延した患者体験の調査分析を進め,暫定版質評価指標案の作成を急ぎ,当初計画へ軌道を修正して25年度・26年度計画を実行していく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた論文の投稿が遅延し,24年度助成金額のうち,投稿に関連する予算として135,811円を25年度へ繰り越すこととする.平成25年度助成金は50万円であり,25年度研究費内訳は,以下のように予定している. 1.物品費:消耗品と図書などに20万円. 2.旅費:国内学会への参加・成果公表の他,研究能力の研鑽に努めるため,乳がん・放射線看護や研究手法などの学習会やセミナーへの参加費として旅費10万円. 3.人件費・謝金:データ入力・整理のための人件費,研究の信頼性・妥当性の確保のため,データ解析や解釈時に必要な専門的知識の提供に10万円. 4.その他:学会参加費や投稿費負担などで23万円とした.24年度からの繰り越し助成金を含んでいる.
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Research Products
(4 results)