2013 Fiscal Year Research-status Report
温存術後に放射線治療を受ける乳がん患者の回復を促進する看護の質評価指標の開発
Project/Area Number |
23593242
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Research Institution | Gunma Prefectural College of Health Sciences |
Principal Investigator |
小林 万里子 群馬県立県民健康科学大学, 看護学部, 講師 (20433162)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二渡 玉江 群馬大学, 保健学研究科, 教授 (00143206)
中西 陽子 群馬県立県民健康科学大学, 看護学部, 教授 (50258886)
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Keywords | 乳房温存術 / 放射線治療 / 回復 / 看護の質 / 評価指標 |
Research Abstract |
25年度は,患者調査により温存術後放射線治療期にある乳がん患者の身体・心理・社会的な特性を明らかにした.質問紙調査では,①QOL-RTI(Radiation Therapy Instrument)日本語版:得点が高い程QOL は高い,②POMS短縮版:緊張・抑うつ・怒り・活気・疲労・混乱の6因子による総合的な気分の状態を表し,得点が高いと陰性気分が高い(活動は逆),③一般性自己効力感尺度(GSES):得点が高いと自己効力感は高いという3つの測定尺度を用い,照射開始時,中間,終了後の3時点で調査した.QOL,POMS,GSES得点の推移は,中間で低下傾向はあるもの,3時点に有意差は認められなかった.しかし,QOL構成項目やPOMS・GSES下位尺度で検討すると,①心理社会的なQOL項目に有意差が生じる,②術前・後化学療法や内分泌療法併用の有無,倦怠感の有無,年齢により有意差が生じるなどがみられた.また,関連をみると,照射開始時QOLおよび中間QOLとPOMS緊張・抑うつ・怒り・疲労・混乱では負の相関,活気では正の相関を示していた.開始時QOLと終了後QOLはそれぞれのGSESと正の相関を示した. 面接調査では,新たに始まる放射線治療への戸惑いや不安,照射開始以降に出現・残存する症状や放射線治療と生活の調整の負担,相談環境の不備などが患者の体験として挙がった. 温存術後放射線治療期にある乳がん患者の身体・心理・社会的な側面は,比較的良好であった.しかし,年齢や症状,治療経過,治療局面と生活の調整,環境によって身体・心理・社会的状況に影響することが示唆され,外来通院が多い放射線治療期の看護では,①患者の背景や経過を把握する,②患者自身の心身コントロールをマネージメントする,③相談システムを確立するなどがよりよい看護につながると考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに,QOL,患者体験については一部を学会発表し,25年度はPOMSについて発表した.現在,GSESのまとめを演題登録して採択可否の結果待ちであり,成果発表を進めている. 当初の25年度研究実施計画では,評価指標の項目抽出,内容精選の予定であった.25年度までに看護師調査から看護ケア充実の指標となる要素,患者調査からQOLに影響する要因や時期などの特性が明らかになった.しかし,温存術後放射線治療期の看護の質評価指標としてどのように構造,過程,結果に配置するか,問題解決に向けた介入・支援を想定した効果確認や標準化になる文言は何か,など看護の質を可視化する試みもあり,指標案の構造化・作成には時間を要している. 本研究のもっとも意義あることは,看護師特性と患者特性のそれぞれの調査から,2側面を合わせた現実的な要素を反映した温存術後放射線治療期の看護の質を担保する指標の開発である.Donabedianの医療評価モデル,看護QI,クリティカルパスなどさまざまな質保証を参考に,本研究の特徴を最大限に生かした成果の産出を進めていく必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,現在進めている放射線治療期の看護を充実させる要素を包含した暫定版質評価指標案を作成し, 指標の信頼性,妥当性の検証を実行していく.乳がん・放射線治療の専門家である研究者や実践家に対して,指標項目は温存術後放射線治療期にある乳がん患者の看護の質を表す内容か,わかりやすい言い回しか,構造・過程・結果の3領域に合致しているかなどの意見聴取を行い,まとめていく.特に,論文投稿は積極的に進め,研究成果の公表に努めることとする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
投稿論文が採択に至らず投稿費負担金分が繰り越された.また,データ分析の遅延から,次段階の調査実施に向けての準備が進まなかったこと,がん放射線治療における大学内共同研究活動により,専門的知識の獲得がスムーズに進んだことから人件費・謝金の使用が少なかった. 平成26年度助成金は50万円である.上記理由により平成25年度助成金額より繰り越す269,941円を含めて,研究費内訳は以下のように予定している(共同研究者分担金も含む). ①物品費:消耗品と図書などに26万円.②旅費:国内学会への参加・成果公表の他,研究能力の研鑚に努めるため,乳がん・放射線看護や研究手法などの学習会やセミナーヘの参加費として旅費15万円.③人件費・謝金:データ入力・整理のための人件費,研究の信頼性・妥当性の確保のため,データ解析や解釈時に必要な専門的知識の提供に10万円.④その他:学会参加費や投稿費負担などで25万円とする.
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Research Products
(1 results)