2012 Fiscal Year Research-status Report
島嶼に居住する在宅酸素療法患者の在宅療法支援モデルの構築
Project/Area Number |
23593254
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
石川 りみ子 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (50316212)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮城 裕子 沖縄県立看護大学, 看護学部, 助教 (50347720)
玉城 久美子 沖縄県立看護大学, 看護学部, 助手 (90617507)
荒木 美名子 聖母大学, 看護学部, 助手 (90535684)
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Keywords | 在宅酸素療法患者 / 島嶼 / 療養支援 / 支援体制 / 外来看護 |
Research Abstract |
本研究の目的は、離島に居住し在宅酸素療法(以下HOT)を受けている患者が自己管理能力を高めて、社会参加を促進するための支援モデルを構築することである。一年目は、M島基幹病院に療養支援に必要な事項を検討するHOT患者在宅療養支援検討会と、その下部組織のワーキンググループを立ち上げ、看護師の療養指導に関する実践力向上に向けた検討を行った。1年目の成果は、ワーキンググループを中心に指導マニュアル案、パンフレット案、呼吸管理日記案を作成したこと、看護師の指導力向上のための研修会、講演会を開催し、看護部、及び外来看護師に多忙な外来業務においてもHOT患者に対して療養支援が必要であることの認識の変化が見られたことである。 2年目の目標は、内科外来での看護師による療養相談・指導の試みとHOT患者サロンを立ち上げることであった。同様の組織体制のもと内科外来でHOT患者への療養相談・指導を実施し、問題ケースについては地域連携室との連携や継続的なフォローを行った。 一方、HOT患者に対しては看護師並びに患者同士による療養支援を目的とした「HOT患者サロン」を病院内に開設し、内科外来でHOT患者にサロン参加を呼び掛け、外来看護師を含むワーキンググループを中心に6月から毎月定例で1時間の「HOT患者サロン」を開催した。看護師のサロン担当は業務内に組み込まれ3月までに10回のサロンを開催し、HOT患者の参加者は1名~5名の範囲で推移した。1時間の内容は、患者同士の療養に関する情報交換、他県のHOT患者会の情報提供、外来看護師との交流、他専門職者によるミニレクチャー、レクリエーション、季節行事、ドライブなどの戸外活動であった。 また、呼吸療法士によるHOT患者の療養上の呼吸自己管理に向けた講演会を一回、看護師に対しては呼吸リハビリの実技を含めた研修会を一回開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の二年目の目標は、基幹病院の一室にHOT患者サロンを立ち上げ、サロン活動の中でピアサポートが得られるよう、また、療養指導が受けられるよう環境作りをし、HOT患者が在宅において自己管理ができるような支援体制を整えることであった。 そこで、「HOT患者サロン」を病院内に開設し、内科外来では外来看護師がチラシや予約票を配布してサロンへの参加を積極的に呼び掛け、6月から毎月定例で1時間の「HOT患者サロン」を開催した。参加者からの反応はよく、患者同士の情報交換や他県のHOT患者会の情報などは安心感や励みにつながっていた。また、患者の要望から季節の行事や専門職の講演、ミニレクチャーを取り入れたが、それは知識の増加、生活の中での呼吸や運動への役立ちに繋がっていた。レクリエーションや季節の行事、戸外活動の取り入れは参加する楽しみやスタッフへの信頼感とともに地域活動参加の足掛かりにもなると考える。 外来での看護師によるHOT患者の療養相談・指導の実施はHOT患者への声掛けから始まり、それは患者に親近感を感じさせ、相互理解の基礎作りにつながっていた。また、ワーキンググループ以外の外来看護師や外来クラークにもHOT患者に対する関心の高まりがみられた。療養指導の内容はカルテに貼付され、スタッフ並びに医師との情報共有がなされ、継続指導の必要なHOT患者については、地域連携室との連携がなされていた。 これらの成果に至った要因として、HOT患者在宅療養支援検討会ならびにワーキンググループを中心に活動を進めたこと、ワーキングメンバーを勤務時間内業務としてHOT患者サロンを担当させたこと、HOT患者サロン、講演会等の開催準備・運営活動を通して看護部、外来看護師のHOT患者療養支援への志気の高まりが考えられる。また、サロンについては、活動内容に毎回参加者の声や要望を取り入れ進めたことが要因と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度も在宅療養支援検討会、ワーキンググループを中心に継続的に月1回の定例的な会議と活動運営を行う。 HOT患者サロンの開催はワーキンググループを中心に、毎月定例で1時間程度行う。昨年度はHOT患者の参加が最大5人と人数の増加が見られなかったことから、参加者がふえるよう一層の工夫を行う。昨年度好評だったプログラムを継続し、さらに昨年度希望があった祭りなど地域伝統行事への参加も企画する。また、ミニレクチャーの講師には医師、薬剤師、栄養士などの他職種をも企画し、内容を工夫する。サロン活動の主な企画は、ワーキンググループで検討するが、参加者からの要望を次回の開催に可能な範囲で活かすようにする。広報には内科外来でのチラシや予約票配布などの継続と、研修会開催を機会に、HOT患者サロンの活動を紹介し広く参加を呼び掛ける。HOT患者サロンへの参加希望者に対しては、参加を容易にするため定期受診の日程をサロン開催日にあわせるなどの工夫をする。HOT患者サロンでは初年度に作成した指導マニュアル、パンフレット、HOT患者の呼吸管理日記を活用し、患者の意見を聞きながら実用的な内容に改善する。 外来においては、昨年度に引き続きワーキンググループを中心に継続的にHOT患者への指導を行う。指導内容は指導用紙に記載し、他職種も含め情報共有を図る。外来における療養指導の業務化を検討する。また、HOT患者サロンの活動を戸外へ拡大し、地域活動参加の足掛かりとするため、在宅療養支援検討会による他県のHOT患者会の視察・情報収集を行う。それに基づいてHOT患者の地域活動参加の支援体制の検討を行う。 それらの活動後は、HOT患者・家族、プログラムに参加したサロンメンバー、療養指導を行った看護師等に諸活動の参加を通しての評価のための調査を行い、外来看護におけるHOT患者の療養支援体制のシステムづくりを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.在宅療養支援検討会、ならびにHOT患者サロンの開催に関する旅費700,000円(宮古島への出張旅費は、東京からと沖縄本島からの出張となる。出張を行わない場合はICTから参加する。検討会とHOT患者サロンは月1回の定例で行う。)、会議時の昼食代70,000円、会議時の飲み物代7,000円計77,000円、出張時の自動車レンタル料金40,000円、呼吸管理日記、パンフレット等印刷代50,000円 2.講演会開催に関する旅費(沖縄県内からの講師招聘による研修会)として40,000円、講師謝金として30,000円 3.他県在宅酸素療法患者会への視察の旅費として470,000円 4.活動評価、調査に関する事項としてQOL尺度SF-36指標使用料50,000円、アンケートの統計処理ソフト 150,000円、図書・文具等消耗品33,912円 5.研究成果発表の旅費160,000円、学会誌投稿料20,000円、報告書印刷費 200,000円。以上、平成25年度の支出計画は合計2,020,912円である。
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