2012 Fiscal Year Research-status Report
脳卒中患者の家族に対する早期在宅移行に向けた看護支援に関する研究
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23593256
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
林 みよ子 北里大学, 看護学部, 准教授 (50362380)
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Keywords | 介護準備状態 / 脳卒中患者 / 在宅移行期 / 家族介護者 / 早期介入 |
Research Abstract |
在宅移行前の介護準備状態に関する質問調査の結果:対象者は、配偶者(65%)・実子(25%)・親(6%)で、患者の発症から平均約140日が経過していたが、精神状態は安定し家族関係はよく、介護準備状態はあまりよくないものの介護対処力は高く評価していた。介護準備状態は、発症後日数、精神状態、家族関係、介護対処力と相関関係があった。介護対処力と介護準備状態を項目ごとにみると、上位は「できる範囲で介護する」「精一杯お世話する」「身体的ケアをする」「在宅サービスの利用をする」、下位は「急変時の対応策をたてる」「自分の時間を持つ」「ストレスに対応する」で、努力すれば患者の日常生活の世話はできると捉えていたが、介護の長期化で生じるストレスや急変に対応することについては準備されていなかった。 在宅移行前後の家族介護者の体験に関する面接調査の結果:移行前の家族は、自宅の改築や介護物品・在宅介護サービスの申請を終え、リハビリを頑張り少しずつできることが増えつつある患者に期待を寄せ、「何とかなる」「何とかするしかない」と家に帰る当面のゴールに向けて歩み出ししていた。「どうなるかわからない」「やってみなければわからない」と先の不確かさを肯定的に捉えることと、長い二重生活からの解放から前向きに臨んでいた。在宅移行後すぐは、イメージと違って困ることに1つ1つ解決策を模索していた。「最初はこんなもの」「予想以上に大変」が混在する複雑な心境にあった。 以上の結果から、在宅移行前は、介護の長期的で起こり得るストレスや急変事態に対応する準備が十分ではないことが明らかとなり、種々さまざまな準備を必要とする介護の準備をどのような段階で進めていくことが効果的であるか検討する必要性が示唆された。今後の縦断的面接調査で、家族介護者のストレスやその対処、急変時対策についての認識を経時的に捉える必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、1年目に介護準備要因モデルの質問紙調査、2年目から3年目にかけて在宅移行前後の家族介護者の体験の縦断的追究のための面接調査を実施する計画である。1年目は、震災と予想以上のエフォートの高まりによって質問紙調査の開始が遅れ、質問紙回収とデータ分析を2年目に実施した。面接調査と平行して実施したため、時間不足から介護準備要因モデル確定に至らず、今後分析を深める予定である。また、2年目からは在宅移行前から在宅移行後1年にわたって家族介護者の面接調査を実施するため、家族介護者の選定に向けて協力施設への依頼を進めていた。しかし、年度途中で研究者が関東から関西に異動することが決定したことで、今後1年継続して面接調査を無理なく実施するためには研究フィールドを異動先となる関西にした方がよいと判断し、協力依頼および参加者の選定を中断した。これらの理由により、申請当初の計画よりもやや遅れた進度であるが、着実に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる次年度は、(1)既に実施している質問紙調査のデータ分析をさらに進め、介護準備状態要因モデルを確定すること、(2)在宅移行前から在宅移行後1年間の家族介護者の体験を縦断的追究を継続すること、を実施する。(1)については、データ数は少ないものの共分散構造分析を行い、要因モデルを検討して、国内外の脳卒中専門の学会やクリティカルケア領域の学会で発表して示唆を得たいと考える。(2)については、異動前の大学で既に倫理委員会の承認を受けているが、異動先の施設の倫理審査委員会承認を受けるため、まずが倫理申請を行い承認を受け、できるだけ早期に対象者を紹介いただける施設に協力を求める。これと併せて、今年度から協力を得ている参加者との面接を継続する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
在宅移行前後の縦断的面接が中心であることから、面接録音データのテープ起こし費用、データ整理のためのアルバイト料、データ収集のための交通費、分析スーパーバイズの謝礼費用、参加者および紹介施設への謝礼費用、を要する。また、これまでの成果の報告のため、学会発表のための交通費、宿泊費、学会参加費および海外発表のための抄録翻訳費用、さらに最終年度であることから、各調査の対象者への結果報告書作成費用と郵送料、広く結果を公表するためのHP開設費用を要する。
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