2012 Fiscal Year Research-status Report
神経難病患者へのケアにみる看護の専門性―スピリチュアルケアを語ることの意味
Project/Area Number |
23593260
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
長瀬 雅子 順天堂大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90338765)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 きよ子 順天堂大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50212361)
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Keywords | 神経難病看護 / スピリチュアル / 看護師の認識 / 専門性 |
Research Abstract |
神経難病患者は、病気の診断や病状の進行に伴い「スピリチュアルな苦悩」を経験しているが、そのことを取り上げた看護研究はほとんどみられない。本年度は、昨年度実施した看護師へのインタビュー調査のデータを分析し、論文として公表した。分析では、まず看護師が捉えている患者の「スピリチュアルな苦悩」を、次に患者の「スピリチュアルな苦悩」とそれに関連したケアに対する看護師の認識の仕方をデータから取り出した。研究協力者は、人生の意味への問い、病や障害の受容、孤独、希望といった、患者が経験している「スピリチュアルな苦悩」について語ったが、それらを「スピリチュアルな苦悩」とは捉えていなかった。また、そうした苦悩へのケアを、【患者の望む生き方に向けた支援】【生きる拠り所である“できる”という思いに対する支援】【少しでも可能性のある“いま”を大事にする支援】として語った。 このような現状を踏まえ、本年度は「スピリチュアルな苦悩」へのケアと関連があると思われるQuality of Lifeの概念構成について文献調査を実施した。その結果、我が国における神経難病患者のQOL研究は多くあるものの、その概念規定は確立されているとは言えず、またQOLの情緒的/心理的側面を重視するものと身体機能を重視するものとあることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、平成24年度に質問紙を作成し、25年度に全国規模の調査をする予定であった。しかし、神経難病患者の苦悩を臨床看護師がいかに捉えていて、それをいかなる概念(用語)で表現することが適切なのかについて充分に検討されていないことが明らかである。したがって、現時点で質問紙調査に至るのは早計であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、既に収集したインタビューデータを看護師の専心と葛藤という視点から再分析する予定である。また、本年度実施したQOL概念に関する英語文献の調査と並行して、看護師の倫理的意思決定、倫理的調整に対する認識をフィールドワークと面接調査を通して明らかにしていく。患者の「スピリチュアルな苦悩」に関わるケアを「スピリチュアルケア」と呼ぶ必要がないとしても、看護師の実践が単なる身の回りのケア以上のものであり、そうしたケアが誰にとって、いかに価値あるものであることを明示することが、本研究を行う意義につながると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画では、平成24年度には、質的調査の結果を踏まえた質問紙を作成し、印刷することになっていた。しかし、フィールドワークや看護師を対象とした面接調査の結果、看護師にとって患者のスピリチュアルな苦悩にいかに向き合うかは最重要課題ではなく、むしろいかにスタッフの疲弊を緩和できるか、そのための組織改革はなにか、どうしたら質の高い看護を提供し続けることができるかが課題であった。そのため、患者のスピリチュアルな苦悩をいかに捉え、いかにケアしているかについて、全国規模での質問紙調査を行うことは、時期尚早であり、現在臨床が抱えている問題に対してコミットしないものとなると考え、質問紙の作成を延期するとともに、今後の質問紙調査に関する計画を修正することとした。ただし、平成25年度、26年度の2年間で、残された研究費では充分な調査を実施することは難しく、調査の実施は次の研究プロジェクトに延伸したいと考える。そして、残りの研究期間で、そのための充分な準備をしていくつもりである。 そこで、平成24年度の繰越金については、これまでの成果を国際誌に掲載するための英文校正等に使用したいと考える。また、平成26年度には、将来英国との比較調査研究をするための下準備としてのフィールドワークを実施したいと考えている。
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Research Products
(5 results)