2012 Fiscal Year Research-status Report
高次脳機能障害者の家族のFamily Hardiness支援教育マニュアルの作成
Project/Area Number |
23593318
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Research Institution | University of Kochi |
Principal Investigator |
瓜生 浩子 高知県立大学, 看護学部, 准教授 (00364133)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野嶋 佐由美 高知県立大学, 看護学部, 教授 (00172792)
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Keywords | 家族看護 / 高次脳機能障害 / Family Hardiness |
Research Abstract |
本研究の目的は、脳外傷性高次脳機能障害者と共に生きる家族が、高次脳機能障害に伴う困難に直面しながら、当事者との相互作用および社会との相互作用の中で、どのような体験をしているのかを、Family Hardinessの視点から明らかにし、それを基にした家族への教育マニュアルを作成することである。平成24年度は、脳外傷性高次脳機能障害者と共に生きる家族は、どのようにしてFamily Hardinessを生み出し強化しているのかを明らかにするという目標に取り組んだ。 脳外傷性高次脳機能障害者と共に生活している家族、11家族を対象に実施した半構成的面接調査において得られた家族の語りから、Family Hardinessが認められる体験を抽出し、質的帰納的に分析した。その結果、脳外傷性高次脳機能障害者と共に生きる家族のFamily Hardinessの創出を伴う体験として、《伴走する》《育て直す》《アイデンティティを取り戻す》《コントロールする》《常同性の中で生きる》《日常の中に障害を取り込む》《社会に戻す》《立ち向かう》の8つの局面が見出された。家族は”脆弱な当事者の保護と安定を図る”ことを目指して《伴走する》《アイデンティティを取り戻す》《常同性の中で生きる》ことを行い、”当事者を自立に導く”ことを目指して《育て直す》《コントロールする》《社会に戻す》《常同性の中で生きる》ことを行っている。そして、その中で《立ち向かう》ことで様々な困難を乗り越えている。同時に家族は、当事者との生活の中で、”家族の安定を図る”ことも重視しており、そのために《日常の中に障害を取り込む》《コントロールする》ことを行っていると考えられた。 この結果については、現在も分析を続け、洗練化を図っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、脳外傷性高次脳機能障害者と共に生きる家族が、どのようにしてFamily Hardinessを生み出し強化しているのかを明らかにし、そこから家族の教育マニュアルに活用できるように、Family Hardinessの特質とその強化方法を抽出する予定であった。 家族がどのような体験の中でFamily Hardinessを生み出しているのかについては、現在ほぼ整理できつつあるが、未だ洗練化の途中であり、Family Hardinessの特質とその強化方法を見出すまでには至っていない。また、教育マニュアルに取り上げる領域の特定化についても、家族の体験の全体像から再度検討しようとしているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
脳外傷性高次脳機能障害者と共に生きる家族のFamily Hardinessの創出を伴う体験の洗練化を進め、その中で、家族が直面する困難を含め、家族の体験の全体像を描くとともに、Family Hardinessの特質を明らかにする。そして、家族が様々な困難に直面する中でFamily Hardinessを生み出していくためには何が必要か、どのような情報や知識を必要としているかを検討し、教育マニュアルの内容と構成を考える。それをもとに、家族のFamily Hardinessの創出を支援するための家族教育マニュアルの原案を作成する。 その後、脳外傷性高次脳機能障害者の家族および専門職者から教育マニュアルの評価を受け、修正を行う。評価はフォーカスグループインタビューを実施し、意見を得る予定であるが、対象者の確保が難しい場合には、個別に意見を得る。 さらに、修正した教育マニュアルを実際に使用して家族教育を行ってもらい、使用した感想や家族の反応、活用可能性等について、使用者より聞き取り調査を行う。使用と評価に関する研究協力依頼は、高次脳機能障害に関する研修会あるいは当事者と家族が参加する支援団体の全国大会等の場を活用して行い、病院や作業所、支援団体等で活用してもらうことを想定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は新たに面接調査を行いデータ収集する予定であったが、平成23年度のデータ収集において平成24年度の目標に関するデータも合わせて収集できており、分析の過程で追加のデータ収集は必要ないと判断したため行わなかった。その分、データ分析に時間を費やし、またデータ分析を豊かにするために関連図書の購入に多くの研究費を使用した。しかしながら、85,643円の繰越金が生じた。 平成25年度の研究費については、物品費は主に研究を遂行する上での消耗品や図書の購入に使用する。旅費は、研究協力依頼およびデータ収集を行う際の交通費・宿泊費、関連領域に関する新たな知見を得るための学会等の参加にかかる交通費・宿泊費、研究成果を発表するための学会等の参加にかかる交通費・宿泊費に使用する。謝金は、研究協力者への謝金、インタビューのテープ起こしにかかる賃金、資料整理等の作業補助にかかる賃金、研究成果をまとめる際の英文翻訳にかかる報酬等に使用する。その他の経費は、主に印刷費や通信費、教育マニュアルと研究成果報告書の印刷費、研究成果の投稿料に使用する。 平成24年度からの繰越金については、教育マニュアルの原案作成後の評価、実践への活用、活用後の評価を複数の都道府県で依頼し、データを豊かにしたいと考えており、主にそのための旅費に充てる予定である。
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