2011 Fiscal Year Research-status Report
肢体不自由児が災害の備えへのセルフケア能力を高めるためのパッケージ開発
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23593328
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Research Institution | Kyoritsu Women's Junior College |
Principal Investigator |
加藤 令子 共立女子短期大学, 看護学科, 教授 (70404902)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 米国 / 災害 / 備え / 子ども / 障がい |
Research Abstract |
2011年度は、小学部低学年生用~中学部生用のパッケージ開発に必要な情報を得るため、東日本大震災の罹災地である茨城県下の肢体不自由児(以下:児)を主に対象とする、特別支援学校3校で中学生8人、保護者8人、教員9人にインタビュー調査を実施した。得られたデータと、インタビュー対象者以外の6人の教員と研究者との2回の会議により、児が災害に備えるために必要なセルフケア能力、パッケージの開発方法、パッケージの活用者を決定した。決定した内容は、パッケージ開発の土台となるものである。決定した具体的内容は、1.児に必要な9つのセルフケア能力、2.セルフケア理論を基盤としたパッケージ開発のため、パッケージは児のセルフケア能力を正確に査定し、児に不足している能力を保護者や教員が補うという発想で作成、3.活用対象者は、「準ずる」と「重複」の教育課程に在籍し、人の話しが理解できる認知能力がある児、である。 セルフケア理論を基盤としたパッケージ開発であるため、国内外の障がいがある児を対象にセルフケア理論を活用した文献検討を実施した。また、障がいがある児を対象とした災害への備えの研究、国内外の看護学テキストでの子どもを対象とした災害看護の記載について検討した。結果、障がいがある児の災害の備えについての研究論文やテキストへの記載は少なく、また、障がいがある児へセルフケア理論を活用しての介入研究は見当たらず、本研究の独創性と重要性を確認した。 米国のコロラド大学看護学部と付属小児病院で、米国での障がいがある児の災害の備えの実態について聞き取り調査を実施した。米国では、ハリケーンカトリーナ以降に自然災害への備えが進み、障がいある児は全米で導入している「Emergeny Information Form」に、最新の情報を更新して災害に備えていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年度は、以下の3点について研究を進めることを予定していた。1.パッケージ開発の基礎データを得るため、東日本大震災で罹災した特別支援学校での震災時および震災後の肢体不自由児の状況の把握、災害に備える必要性とその内容の把握。2.関連概念および内容についての文献検討。3.米国での障がいがある児の災害の備えに関する実態調査。 達成度: 1.東日本大震災で罹災した特別支援学校3校でインタビュー調査を実施した。また、調査した内容をさらに深めるため教員と研究者で2回の会議を開催した。結果、パッケージ開発の必要性、作成するパッケージの内容、パッケージ活用対象者、および、小学部から中学部の肢体不自由児が災害に備えるために必要なセルフケア能力が抽出され、研究開始時の計画がおおむね順調に進展していると言える。2.国内外における障がいがある児を対象とした、セルフケアに関する研究の文献検討を実施した。また、国内外の障がいがある児を対象とした災害への備えに関する文献検討、さらに、国内外の災害看護論および小児看護学のテキストでの、子どもに関する災害看護の記載の有無と内容の検討を実施した。実施した検討内容をまとめている段階であり、本計画もおおむね順調に進展している。3.2011年9月に米国コロラド州デンバーにあるUNIVERSITY OF COLORADO-ANSCHUTZ MEDIAL CAMPUS COLLEGE OF NURSINGを訪問し、関係者から米国およびコロラド州における障がいがある児の災害の備えの実態や背景について聞き取り調査を実施した。また、付属の小児病院での現状調査を行い、調査内容をまとめている段階である。そのため、計画はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度は、茨城県下で実施したインタビュー調査と同様のものを神奈川県下の特別支援学校2校で実施し、調査データの信頼性を高めながら、小学部低学年生・高学年生、中学部生用のパッケージを開発する。開発したパッケージの内容を、茨城県下の特別支援学校3校と神奈川県下の2校で、避難訓練時や自立活動の授業および毎日の生活で試験的に導入し、パッケージ導入の効果や課題等について検討する。2013年度は、検討後に修正したパッケージを、再度、茨城県下と神奈川県下の特別支援学校で導入し、導入効果の検証を実施後に、国内の関係部署に送付して、国内での活用を促す。 また、2012年度は、幼児後期用のパッケージ開発のため、東日本大震災で罹災した福祉施設等の看護師や職員に、幼児後期の肢体不自由児が災害に備えるために必要なセルフケア能力と、児とかかわる人々が児が災害に備えるために補うことが必要な能力等についてのインタビュー調査を実施する。得られたデータを分析し、幼児後期用のパッケージを開発し、茨城県および神奈川県下の施設での導入を依頼する。2013年度に、パッケージの導入効果や課題の検討を行い、パッケージを修正、施設に再度パッケージの導入を依頼し、導入効果の検証後に、関係部署に送付し国内での活用を促す。研究計画の変更: 研究計画立案時、幼児後期用のパッケージ開発のため、幼児後期の児の保護者と児が通園している施設の看護師と職員からのインタビュー調査を予定していた。しかし、数か所に研究協力を依頼したが、保護者の同意を得ることが出来なかった。そのため、インタビュー対象者から保護者を抜き、対象者を幼児後期の児とかかわる福祉施設等の看護師や職員のみと変更した。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度<直接経費:130万円>;【物品費:予算額20万円】ノート型パソコン購入(予算:18万円)会議開催時の議事録作成と学会発表の準備等のために購入。書籍(予算:2万円)関係書籍の購入。【旅費:予算額25万円】国際学会1学会(開催地:神戸)と国内学会4学会で成果の発表を行うための旅費(15万円)。研究協力依頼、データ収集、研究者間会議および研究者と教員の会議のための旅費(10万円)。【人件費・謝金:予算額:24万円】インタビュー協力者への謝礼(3万円)、会議での情報提供者への謝礼(2万円)、2国際学会での発表資料の和文英訳(13万円)、学会誌投稿のための和文英訳(6万円)。【その他:予算額61万円】テープ起こし業者委託(35万円)、国際学会参加費3人(15万円)、2国際学会発表資料作成(3万円)、国内学会参加費(5万円)、文具代金(予算:1万円)、郵送費(2万円)。 2013年度<直接経費:120万円>;2011年度・2012年度の研究内容で、「肢体不自由児が災害の備えへのセルフケア能力を高めるためのパッケージ開発」に必要な主なデータ収集や会議は終了するため、2013年度のインタビューのテープ起こしと交通費は大幅に減額する。また、2013年度は、関連する国際学会の予定はないため、研究成果は国内で開催される学会と学会誌で発表予定である。主な支出は、パッケージと報告書の印刷代金となる。
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