Research Abstract |
この研究の目的は, 中高年者の健康増進運動の持続を予測する, 運動行動に対する自己効力および結果期待の尺度の開発である。平成23年度から平成27年度の研究期間にかけて, 自己効力および結果期待の【概念分析に関する研究】, 【尺度原案の作成に関する研究】, 【尺度項目の抽出に関する研究】, 【尺度項目の精鋭に関する研究】, そして【尺度の有用性に関する研究】を予定している。 平成23年度は, 自己効力および結果期待の概念分析に関する研究を行った。その概念分析では,1990年~2012年の医学中央雑誌, MEDLINE, PubMed, そしてCINAHL等のデータベースを用いて, 国内外の中高年者, 健康増進運動, 自己効力, 結果期待に関する研究論文をシステマテックに収集した。その結果, 日本国内では, 中高年者の健康増進運動に関する自己効力および結果期待に関する研究論文は, 約10本程度で, この2つの期待の概念が明確に定義されている研究論文は, 今回のデータ収集の範囲では見当たらなかった。なお, 海外の中高年者の健康増進運動に関する研究論文は, 約30本程度あるが, これらの論文の分析については, 平成24年度に行う予定である。 また, 健康増進運動に関する専門家によるブレーンストーミング, KJ法を用いた自己効力および結果期待の概念に関する検討では, Bunduraの理論では自己効力には次元があるとしているが, 「強さ」と「高さ」の次元の区別が難しいのではないかと認識を同じくした。かつ, 結果期待では, 日本人の自分の成果を強く主張しない文化, いわゆる謙遜の文化があり, Bunduraのいう「自己評価」, 「社会的評価」の概念は, 項目として作成する際に工夫をする必要があることで意見の一致をみた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この研究の目的達成度は, やや遅れている。 その理由としては, 研究代表者本人が所属している福島県が, 平成23年3月11日の東日本大震災の被災県であることが挙げられる。福島県立医科大学は公立法人の大学であり, 地域貢献はその役割として当然のことである。そのため, 3月11以降, 研究代表者本人が所属している地域・在宅看護学部門では, 被災自治体町村への災害地域支援活動(地域看護活動)を行っている。これにより, 研究代表者本人は, 研究への着手が10月以降と遅くなり, 当初予定していた研究エフォ-トの確保が難しかった。 また, 理由の二つ目は, 研究を遂行する上で, 連携研究者および研究協力者との日程調整が図れなかったことである。この研究の連携協力者は1人, 研究協力者は2人, そして研究代表者本人の合計4人で「尺度開発に関する研究会」と称して会合をもっているが, 全員の所機関が違うために, 研究会の開催日時の決定が複雑になってしまった。しかしながら, この背景にも上記の東日本大震災が影響を及ぼしているのは否めない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は, 自己効力および結果期待の概念分析に関する研究を行ったが, 海外の研究論文の検討と専門家によるブレーンストーミングおよびKJ法を用いた自己効力および結果期待の概念に関する検討が完了していないために, この2つの概念の定義をするまでには至っていない。 そのため, 平成24年度前半は, 引き続き概念分析を行い, 同時に自己効力および結果期待の尺度原案の作成をすすめる。概念分析では, 国内外の自己効力および結果期待に関する研究論文の検索の精度を高める。また, 概念分析の方法についても再度吟味し,尺度開発の研究会とは別に, 概念分析に関する小研究会を開催し, 概念分析の進度を速める。専門家による自己効力および結果期待の概念の検討では, 研究論文のシステマテックレビューの内容を活かしつつ, 尺度原案の作成に発展させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
この研究の平成23年度間接経費の実支出額累計は, 315,198(150,000円の間接経費を含む)円であった。研究計画当初の金額の約1/2しか支出していない。これは, 研究実績の概要で記述したように, 東日本大震災の影響を受け, 研究開始が遅れたため, 国内外の尺度開発に関する文献の収集量が不足したこと, 研究会開催に伴う旅費, 研究協力者謝金, そして会議運営費用等が支出できないことによる。 これに対して, 平成24年度には, 平成23年度に引き続いて概念分析に関する研究会と平成24年度に研究計画している尺度原案の作成に関する研究会を同時に行うために, 研究計画当初の予定の研究費を支出したい。
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