2012 Fiscal Year Research-status Report
発達障害の子どもと家族を支える養護教諭の協働支援プログラムの開発
Project/Area Number |
23593399
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Research Institution | University of Kochi |
Principal Investigator |
池添 志乃 高知県立大学, 看護学部, 教授 (20347652)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野嶋 佐由美 高知県立大学, 看護学部, 教授 (00172792)
中野 綾美 高知県立大学, 看護学部, 教授 (90172361)
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Keywords | 発達障害 / 養護教諭 / 協働支援プログラム / 子どもと家族 |
Research Abstract |
平成24年度は養護教諭、特別支援教育に携わる教員に対して半構成的面接を行い支援、連携内容を抽出した。さら家族の病気の捉えや情緒的反応、ニーズ、病気による影響などの病気体験を明らかにすることを目的に家族を対象とした半構成的面接を行った。データ分析では逐語録を作成し、コード化、カテゴリー化を行った。 分析の結果、家族の病気体験として以下の視点が明らかになった。発達障害の症状を呈する子どもとともに生活する家族は、症状コントロールや病気理解についての困難、学校生活での問題や偏見など子どもの成長に伴う様々な困難があると認識していた。様々な困難や将来への不確かさの中でもこの子なりの自立、社会化に向けて居場所づくりや社会とのつながりを確保しておくことが必要であると捉えていた。家族としての責任感をもち、病気の情報がほしい、分かりやすく教えてほしいという病気理解に関わるニーズをもっている。そしてできないことを前提とせずこの子なりに自律して生きていってほしい、この子らしさを守りたい、普通の子どもを同じように接してほしい、この子の可能性を広げたいといった子どもの社会化に関わるニーズ、家族自身の生活を保持したい、家族でこの子の成長を支えていきたいといった家族らしさの保持に関わるニーズが見出された。特に進学や就職など子どもの学校生活や社会人となってからの不安も強いがゆえに、家族としての限界を認識しつつ社会資源活用へのニーズも見られていた。さらに同じ病気をもつ子どもの家族の力になりたいと、この子の親になることへの意味づけを行いながら病気とともに歩んでいることが明らかになった。養護教諭は子どもと家族を取り巻くさまざまな人とのつながりを強化しながら、協働して支援を行っている。明らかになった家族の病気の捉えや情緒的反応、ニーズをふまえながら今後の「協働支援プログラム」の作成につなげていきたいと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の目標は、以下の2点であった。1.養護教諭の体験および実践した支援、連携内容を明らかし、その逐語記録の分析、統計分析をもとに、『発達障害の子どもと家族を支える支援』について、(1)援助関係の形成、(2)発達障害の子どもと家族への支援、(3)医療機関等の専門機関との連携に分け、抽出する。2.1の結果に基づき、「発達障害の子どもと家族を支える養護教諭の協働支援プログラム」(試案1)を作成する。 また実践の場での活用可能性・有用性の高い試案の作成を行うためには、養護教諭を対象にして導かれた支援・連携内容、子どもと家族の情緒的反応・ニーズだけでなく、発達障害をもつ子どもと家族への関わりを密に行っている他の教員や家族を対象にした体験の理解が不可欠であり、その視点を深めることを平成24年度のさらなる目標として掲げていた。そこで、平成24年度は特別支援教育に関わる教員および発達障害の症状を呈する子どもとともに生活する家族を対象に半構成的面接を行い、支援及び連携内容、体験の理解を深めるようにした。 これらの分析結果をもとに、実践の場での活用可能性・有用性の高い「発達障害の子どもと家族を支える養護教諭の協働支援プログラム」の作成につなげていくよう取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、発達障害をもつ子どもと家族へのかかわりの実践経験豊かなエキスパートの養護教諭、特別支援教育に携わる教員に対して半構成的面接を継続的に行い、子どもと家族に対する援助関係の形成と支援内容、校内外の連携内容について明らかにし理解を深める。また既存の研究による知見も統合し、より豊かで子どもと家族の体験の理解を基盤とした援助関係のあり方、支援内容、連携内容を導き、実践の場での有用性の高いプログラムの作成につなげていくようにする。 「発達障害の子どもと家族を支える養護教諭の協働支援プログラム」(試案)の作成においては、発達障害の子どもと家族の体験の理解、援助関係の形成、子どもと家族への支援、専門機関との連携内容に分けてまとめていく。データ分析と評価とを同時に行いながら、妥当性、信頼性の高い協働支援プログラムの内容になるよう洗練化に努める。評価については、アクションリサーチを実施し、作成した協働支援プログラム(試案1)を実践で活用してもらい、協働支援プログラム(試案2)を作成する。さらにフォーカスグループを実施することにより協働支援プログラムの洗練化を図る。協働支援プログラムの信頼性・妥当性を確保するために、県内外の5年以上の職務経験を有し、発達障害の子どもと家族を支援したことのあるエキスパートの養護教諭、特別支援教育コーディネーター等の教諭、医師、小児専門看護師・家族支援専門看護師からなるフォーカスグループにて検討を行うようにしたいと考えている。その結果をふまえて、最終的に、養護教諭が他の教職員や医療機関等の専門職者と連携しながら発達障害の子どもと家族を支える効果的な支援を行っていくことができるような実践での活用可能性の高い「発達障害の子どもと家族を支える養護教諭の協働支援プログラム」になるよう洗練化していきたいと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費については、ウイルスバスター更新料、フラッシュメモリー、文具類(用紙・封筒・筆記用具等)、研究協力者へのお礼(半構成性的面接では3000円相当の文具/1名、フォーカスグループでは1000円相当の文具/1名)、考察、研究のまとめに活用する教育・学校保健・小児関連書籍(発達障害の子どもと家族、不登校の子どもと家族、養護教諭や家族看護に関する書籍文献等)を予定している。フォーカスグループの運営にあたって、研究経過やその結果などについてプレゼンテーションを行うために、プロジェクター等が必要となりその予算を計上している。 国内旅費については、調査旅費、情報収集(学会参加)ための交通費・宿泊費を予定している。平成25年度は、実践での活用可能性、有用性の高いガイドラインの作成のため、県内外でのエキスパートの養護教諭や教員、発達障害の子どもと家族の支援にかかわる有識者に対して研究協力を依頼し、より豊かな援助関係の形成の内容や支援内容、連携内容、支援する中での困難についてデータ収集したいと考えている。その旅費、情報収集(学会参加)のための予算として計上している。 謝金等については、データの掘り起こし[60分のテープの掘り起こし1万2千円程度]10名分、専門的知識の提供(10000円×10名)、データ入力・質的データ整理・英語文献整理・資料作成にかかわる予算を予定している。その他として、印刷費、複写費を予定している。
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