2011 Fiscal Year Research-status Report
行政の組織文化(風土)が保健師の離職に影響を及ぼす構造
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23593412
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
井口 理 上智大学, 総合人間科学部, 助教 (10513567)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 行政保健師 / 離職 / Work Engagement / 行政の組織文化(風土) |
Research Abstract |
平成23年度は、保健師活動に影響する行政組織と組織文化(風土)に関する文献検討と、それをもとに作成したインタビューガイドを用いて現職の行政保健師にインタビューを実施した。 これまで保健師のメンタルヘルスに関する報告はあるが、国内外(医中誌Web、Pub Medで検索)の文献でも行政保健師の離職に関する報告は見当たらない。臨床看護師の離職については従来、主要因とされてきた「職場ストレス」のみならず、近年、その背景としての「組織文化(風土)」、個人レベルでは「組織コミットメント」「Work Engagement」も影響要因であると報告されている。 現在、行政保健師は、法制度や自治体組織の改編が頻繁に行われる中で、多問題家族や精神保健に関する相談等の個別支援をする一方で、健康施策の策定にも関与することが求められている。 本研究では、行政保健師の離職意図の背景を明らかにすることで、保健師の離職を抑制策を検討したい。保健師の離職を抑制できれば、経験の蓄積により、複雑・多様化する公共サービスの質を確保し、更に縦割り行政で生じる部門間の葛藤的構造の組織の中で、健康施策の策定と展開に専門機能を発揮する条件整備として、組織管理、職場環境の改善、現任教育における人材育成にも役立つと考えるからである。 離職を意図した状況や、何によって離職を思い留まったのかを聞き、離職意図に関連する要因と仕事に留まる要因を構造化することを目的として、現職の行政保健師8名にインタビューを行った(所属機関の倫理審査委員会承認)。協力者は全員女性で、年齢内訳は30歳1名、40歳代6名、50歳代1名、勤続年数は13年から25年、職位は主任2名、主査1名、副主幹1名、係長2名、総括係長(課長職)2名であった。インタビュー内容は逐語録として文字データに変換し、現在質的記述的に分析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は、インタビューデータの質的記述的分析を終えて、保健師の離職意図に関連する概念を抽出し、概念枠組を作成し、質問紙の作成まで行う予定であった。質的記述的分析に遅れが生じた理由は、以下の3点であると考える。1、共に教育活動に従事してきた教員が退職することが決まり、引き継ぎ業務が年度当初の予定に加わったこと2、所属機関の法人合併・学科新設に伴い、実習室や研究室の教育・研究用物品リストの検討・作成が必要になったこと3、新校舎竣工に伴う移転準備の計画立案や実施前の調整が上記1)2)に加わり予定以上に時間を要したこと
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Strategy for Future Research Activity |
【平成24年度の計画】インタビューデータの質的記述的分析を終えて、保健師の離職意図に関連する概念を抽出し、概念枠組を作成する。それをもとに質問紙を作成し、所属期間の倫理審査委員会に申請の上、予備研究を経て行政で働く保健師を対象とした全国調査を郵送で実施する。併せて、保健師の離職に「組織的に対応するニーズ」のフォーカスグループインタビューについて、自治体単位での受け入れの可能性を打診する。【平成25年度の計画】質問紙調査の結果を解析し、共分散構造分析により行政保健師が離職に至る構造を統合し、調査結果から報告書を作成する。24年度調査の際に受け入れの同意の得られた自治体で、保健師の離職防止に組織的に対応するニーズに関するグループインタビューを行い、保健師の離職防止に向けたプログラム開発の実現可能性を模索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【23年度に生じた研究費の状況】1.物品費は以下の消耗品が必要となり支出した。設備備品は購入していない。(1)行政組織、研究の方法論、統計解析に関する図書 (2)統計解析ソフト (3)調査に用いる事務用品 2.旅費は、予定していた支出額よりも大幅に少ない支出となった。理由は「現在までの達成度」の理由の欄に記入した通りの状況で、遠方での研究打合せと、学術研究会への参加が不可能となったためである。 3.人件費は、主に研究協力者への謝金として支出した。 4.その他の支出は、主に以下の状況により生じたものである。 (1)インタビューに必要な交通費 (2)インタビューデータのテープおこし (3)学術学会の年会費支払い【24年度の研究費使用計画】1.物品費は、(1)質問紙調査に要する紙、封筒、インク (2)疫学、行政組織関係の書籍・文献 2.旅費は(1)研究・打合せ (2)学術集会への参加 3.謝金は (1)質問紙調査の謝礼 4.その他の支出として (1)質問紙調査の通信費 (2)印刷費 (3)文献複写費 (4)会議費 として使用する計画である
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