2012 Fiscal Year Research-status Report
行政の組織文化(風土)が保健師の離職に影響を及ぼす構造
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23593412
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
井口 理 上智大学, 公私立大学の部局等, 助教 (10513567)
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Keywords | 行政保健師 / 離職意図 / JD-R Model / 仕事の要求;Job Demands / 仕事の資源;Job Resources |
Research Abstract |
平成24年度は、インタビューデータの分析、概念モデルの作成、既存の尺度との整合性の確認、質問紙を作成し、質問紙調査の研究計画書について倫理審査の承認を受けた。 インタビューデータの分析から、行政保健師が仕事上で対応を迫られている事柄(仕事の要求;Job Demands)、あるいは仕事を通してストレスを緩和したり自らの成長や学びを感じる事柄(仕事の資源;Job Resources)が、仕事に取り組む姿勢や、離職意図に関連しているものと考えられた。 保健師のJob Demandsの構成要素は【仕事の量的負担】【仕事の質的負担】【変容する多様な職務】【専門職としての役割葛藤】【対人関係の葛藤】【上司のーダーシップ不足】【事業評価体制の未整備】【部門文化】【健康部門の軽視】【仕事と個人のネガティブな影響】であり、保健師のJob Resourcesの構成要素は【職務への満足感】【仕事の有意義感】【仕事のコントロール感】【他者からの評価・期待】【同僚・先輩・上司の支援】【家族・友人の支援】【雇用の安定感と厚待遇】【仕事と個人のポジティブな影響】であった。また、保健師の仕事の要求と資源は、個人の作業レベル、部署レベル、組織レベル、と階層的な構造をもちつつ、仕事と個人が相互に影響し合っていることが示唆された。 Arnold Bakkar(2004)らによるJob-Demands-Resourcesモデルは、仕事の要求からストレス反応が起こり健康問題に至る「健康障害プロセス」と、仕事の資源がワーク・エンゲイジメントを生起し、仕事へのポジティブな態度につながる「動機づけプロセス」の2つから構成されている。平成25年度は、このモデルに基づき、文献検討と予備調査の結果から整合性を確認した既存の尺度に項目を追加して、統計学的手法を用いて保健師の仕事の要求および資源と離職意図との関連を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以下の理由により平成23年度の研究遂行の遅れを巻き戻すことができなかった。 1、新校舎での教育活動の開始に伴い、実習に必要な物品の購入や管理体制の整備等に対応する必要が生じた。 2、領域内のスタッフの交替に伴い、役割分担を模索しながら領域運営を立て直す期間となった。 3、法人合併後の学年進行に伴い、合併後のカリキュラムに対応した新科目の構成に応じて演習・実習科目の調整、講義科目の再校正をする必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)調査:全国の地方自治体の名称を無作為に並べたリストを作成し、順番に協力依頼の電話をかけ、調査協力の承諾を受けた地方自治体に所属する常勤の保健師を対象に、郵送法による自記式質問紙調査を行う。事前に調査の目的を説明し協力の同意を得る等、丁寧に調査の主旨を伝えることにより、5割程度の回収率を目指し、約2000名に調査票を郵送する。 2)分析:「保健師の仕事の要求と資源」に関する尺度および質問項目については、その概念構成の確認のため、探索的因子分析を行う。共分散構造分析を用いてJD-Rモデルの構成概念と離職意図の相互関連を検討する。 「保健師の仕事の要求と資源」の因子分析から抽出された因子、及び媒介変数の「ストレス反応」「バーンアウト」「ワーク・エンゲイジメント」、帰結の変数の「健康関連QOL」と「離職意図」を観測変数にして、JD-Rモデルに基づいて構成概念間の関連を示すパス図を作成し、共分散構造分析を用いて構造モデルを比較検討する。 3)保健師の離職防止に、組織的に対応するニーズの模索: 質問紙調査に関する協力を依頼する際、「保健師の離職」に対して組織的に対応するニーズに関して、自治体単位での受け入れの可能性を打診し、保健師の離職防止のプログラム開発の実現可能性を模索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新校舎での教育活動開始に伴う必要物品の購入や管理体制の整備等への対応、領域内のスタッフの交替に伴う領域運営の立て直し、法人合併後の学年進行に伴う新科目の構成に応じた演習・実習科目の調整、講義科目の再校正等により、今年度予定していた全国調査を実施できなかったため、次年度への繰越金が発生した。 次年度は主に研究実績の概要に関する公表と、全国調査の実施費用を主に支出する予定である。 1)研究実績の公表:研究実績の概要欄に記載した予備研究(インタビューによる質的分析)の結果を、日本公衆衛生看護学会誌に投稿、同学術集会にて発表、日本公衆衛生学会学術集会にて発表の予定である。それに伴う出張費、印刷費を支出予定である。 2)全国調査:全国の自治体の保健師を対象にした調査は、事前に調査協力を要請する電話をかける通信費、調査協力の承諾返送ハガキと調査票と封筒の印刷費、調査票郵送の通信費、調査協力への謝礼品購入のための消耗品費等を支出予定である。サンプルサイズは2000、回収率は50%を見込んでいる。
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