2011 Fiscal Year Research-status Report
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23593418
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
高橋 佐和子 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 助教 (80584987)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒木田 美香子 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (50303558)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 大学生 / 薬物乱用防止教育 |
Research Abstract |
平成23年度は、平成24年度に行うことを予定している、全国の大学生への調査の予備調査を実施し、情報を収集することを目標として研究を進めた。 平成23年4月に1大学を対象として、大学生の薬物乱用の実態及び薬物への意識を把握するための調査を行った。当初の予定より多い、1000人を超える対象を得ることができた。この調査において大学生の薬物乱用の実態への質問に対し、2%の学生が(違法であるかに関わらず)薬物乱用経験があると回答しており、約30%の学生が「違法薬物を使っているところを見たり聞いたりした経験がある」と回答していた。この結果から、薬物乱用が大学生にとって非常に身近にある問題となっているこが明らかとなり、本研究の目的である、大学生への薬物乱用プログラム開発の必要性は高いものと考えられた。 また、大学生の違法薬物への意識の質問項目への回答から、薬物乱用に関わる要因として、喫煙、薬物の危険性認知の低さがあることが明らかになったほか、薬物乱用リスクの高い大学生像として、いくつかのタイプがある可能性が示唆された。今回の調査から浮かび上がったタイプは2つあり、ひとつは交友関係が活発で、友人間の雰囲気を重視するタイプで、これは、薬物乱用経験と関連があった。もうひとつは、親の監視から離れ、規範意識が低くなっているタイプで、「薬物が目の前にあったら試してみたい」という薬物使用意欲に関連があった。このことから、大学生を対象とした薬物乱用防止教育には、学生のタイプに合わせて内容や方法を組み合わせることを検討したいと考えている。 これらの結果については、対象大学への報告をするとともに、学会において発表した。また、現在、論文の形での投稿をし、査読を受けているところである。 今後は、この結果からさらに質問項目や仮説を再検討し、全国の大学及び大学生に対する調査を実施したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度中には、予備調査を実施し、その結果をもとに全国の大学生を対象とした実態調査を行うところまでを計画していた。しかし、現在、予備調査の実施、分析が終了したところであり、全国調査は平成24年に実施するよう計画を修正した。 研究を修正した理由ひとつは、予備調査から得られた結果をもとに、薬物乱用防止教育プログラムの開発に着手したことがある。予備調査対象となった大学から教育実施の依頼を受け、平成24年4月、試作したプログラムを実施した。このプログラム実施の前後には質問紙調査をしており、プログラムの評価ができると考える。この調査を加えたことにより、今後のプログラム開発に向けてより確かな方向性が見いだせるようになると考える。 もうひとつの理由としては、予備調査における発見やその他の情報収集により、大学生の意識のみでなく、大学側の薬物乱用への取り組みを同時に検討する必要があると考えたためである。現在大学で実施されている薬物乱用防止教育をみると、大学によってその実施内容や回数,方法は様々であり、取り組みへの姿勢に違いがあることが分かる。大学側の薬物乱用防止への取り組みを促進または支援するような要因について検討することを大学生への調査の前に実施することを計画に加えることとした。大学側への調査は、全国の4年制大学すべてを対象とし、6月中には質問紙発送を完了したいと考えている。 予定していた調査に遅れが出ている部分はあるが、平成24年度に行う予定であったプログラム開発に一部着手しており、研究最終年度となる平成25年度には、最終的な目標としている薬物乱用防止教育の実施及び評価まで完了することができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、3つの調査を実施する計画である。そのため、データ入力の補助にかかる費用や統計ソフト購入のために多くの研究費を使用することになる。また、平成23年度同様研究分担者との打ち合わせを定期的に行い、研究の質を高めていくことを考えているため、旅費についても確保している。 ひとつ目の調査である試作した薬物乱用防止プログラムの1大学を対象への実施及び教育効果の評価であるが、これについては、平成23年度の予備調査対象となった大学からの依頼を受けて行うものであり、平成24年4月に実既に実施されている。この調査の結果により、平成24年度に計画しているプログラム開発に役立つ示唆が得られるものと考え、現在分析を進めているところである。 全国の4年制大学すべての薬物乱用防止教育担当者を対象に行う質問紙調査は、既に質問紙の検討は最終段階にある。6月中には質問紙の発送を完了し、7月末までには回収したい考えである。また、この返信の中で学生への調査の可否についても回答を得ることになっており、この段階で全国の大学生を対象とする実態把握調査の対象をある程度確保できると考えている。 これらの調査の実施が完了すれば、薬物乱用防止教育プログラム開発に向けて必要であると想定した基礎的情報をすべて得ることができ、最終的な目的である薬物乱用防止教育プログラムの実施及び評価を平成25年度には実施することができる見通しである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、1大学を対象に予備調査をもとに試作した薬物乱用防止プログラムを実施し、プログラム開発の方法生を見いだすとともに、全国の大学へ質問紙調査、全国の大学生を対象とした質問紙調査を実施し、大学側と大学生双方への調査結果から、効果的な教育方法について検討することを計画している。 試作した薬物乱用防止プログラムは、平成23年度に予備調査を行った大学を対象として実施する。プログラムの前後に質問紙調査を行うことで教育効果の評価をする予定である。 大学への調査では、薬物乱用防止教育の取り組み状況、薬物乱用防止教育実施上の問題点、薬物乱用防止教育の必要性、大学が取り入れたい薬物乱用防止教育(コンジョイント分析)についての質問紙を作成し、全国の4年制大学すべて(国立86校、公立95校、私立599校:計780校)の薬物乱用防止教育担当者を対象に送付し、回答を求めることとする。 大学生への調査については、平成23年度に行った予備調査をもとに作成した質問紙を使用し、全国2000名程度の大学生を対象に、大学生の薬物使用に関する意識および大学の薬物乱用防止教育の実態、薬物使用可能性と意識および性格特性の関連、意識や性格特性と好む教育との関連、大学生の実態に応じた薬物乱用防止教育について検討することとする。 これら3つの調査の結果から、大学生を対象とした効果的な薬物乱用防止防止プログラムへの示唆を得、プログラムの開発を計画している。また、研究成果の発信のため、平成23年度及び24年度の調査結果について、学会発表を2回程度行う他、論文を執筆することを予定している。
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Research Products
(1 results)