2011 Fiscal Year Research-status Report
精神科臨床における攻撃行動場面でのディ・エスカレーション技術に関する研究
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23593432
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
下里 誠二 信州大学, 医学部, 准教授 (10467194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 理沙 信州大学, 医学部, 助教 (10612319)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ディ・エスカレーション / 精神科 / 攻撃行動 |
Research Abstract |
精神科における患者の攻撃行動をマネジメントするうえで言語・非言語的コミュニケーションで患者の落ち着きを取り戻そうとする介入としてのディ・エスカレーションは重要なスキルであり、本研究ではその具体的方法論を検討することを目的としている。 本年度は国内の精神科看護師のうち協力の得られた215名から質問紙による調査を行った。暴力を「危害を加える要素を持った行動(言語的なものも含まれる)で容認できないと判断されるすべての脅威を与える行為」と定義し、職場でよく起こる代表的な攻撃行動場面を1場面について記述してもらい暴力の理由づけについて分析した。またディ・エスカレーションに成功した事例と失敗した事例について自由記述を求めた。 よく起こる攻撃行動場面は168名が分析の対象となった。回答者は男性102、女性66、年齢は20代45、30代63、40代45、50歳以上15名であった。暴力の理由として病状23件、要求のごり押し36件、拒絶31件、処遇に対する不満13件、スタッフに対する不満23件、環境に対する不満3件、食事内容への不満2件、イライラ感6件、他者の言動に対する反応11件、衝動性11件、その他6件に分類された。 ディ・エスカレーションに成功・失敗した場面ではそれぞれ30件が分析の対象となった、結果非言語的なものと言語的なものに大別され、非言語的なものでは「十分なリスクアセスメント」、「適切な姿勢(距離、位置、視線、タッチ)」「威嚇・威圧的でない対応(大勢で威嚇しない)」「動揺の制御(看護師が落ち着いていること)」「適切な対応者の選択」「不用意な身体的介入」など、言語的なものでは「傾聴しない」、「否定する」、「規則を押しつけない」といったものが抽出された。我が国の精神科病棟で起こりやすい暴力への対処で注意すべき事柄と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は精神科臨床場面でよく起こる攻撃行動とディ・エスカレーションについてうまくいった事例とうまくいかなかった事例について検討することを目的とした。よく起こる攻撃行動場面については全回答者から記述が得られたが、ディ・エスカレーションについてうまくいった、うまくいかなかった事例については30件と分析数はやや少ないものであった。しかしながら精神科臨床で起こる攻撃行動場面について暴力の理由やディ・エスカレーションで失敗しやすい事例については抽出することができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた成果として暴力の理由づけとして、病状によるもの、要求に関するもの、スタッフへの不満に関するものなどがあげられた。また、ディ・エスカレーションについては非言語的なものでは「十分なリスクアセスメント」、「適切な姿勢(距離、位置、視線、タッチ)」「威嚇・威圧的でない対応(大勢で威嚇しない)」「動揺の制御(看護師が落ち着いていること)」「適切な対応者の選択」「不用意な身体的介入」など、言語的なものでは「傾聴しない」、「否定する」、「規則を押しつけない」などが挙げられた。今後はロールプレイ場面を活用しこれらの状況をふまえた設定の中から分析を通してさらに状況に対応した効果的なディ・エスカレーション技法について検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度はロールプレイ場面を撮影、保存するための機器の購入と場面を質的、記述的に分析するため、質的研究および精神科臨床に精通した分析者に分析を依頼するためのデータ分析費、また研究成果報告のための学会参加の旅費を使用する予定である。研究費の使用については、当初計画時よりも物品を安価で購入できたため次年度使用額が生じた。
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