2011 Fiscal Year Research-status Report
訪問看護における地域リスクマネジメントネットワーク構築に関する研究
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23593433
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
後閑 容子 岐阜大学, 医学部, 教授 (50258878)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 多佳子 岐阜大学, 医学部, 准教授 (00331596)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 訪問看護ステーション / リスクマネジメント / 質問紙調査 |
Research Abstract |
平成23年度は以下の通りの計画で研究を実施した。(1)連携システム構築のための事前調査、(2)訪問看護教育研修の体系化に向けた事前調査、(3)リスクマネジメント疫学的調査(資料収集と調査)の3つである。 連携システム構築のための事前調査では、G県内訪問看護ステーション管理者連絡会の管理者と面接した。結果、訪問看護ステーションにおいては、訪問看護師の安全に関するリスクについては、経験を共有したり、管理者として当座の対処をしていたりしていたが、その予防と教育に関してはまだ不十分であるとの認識であった。 リスクマネジメントに関する疫学的調査を実施した。全国の訪問看護ステーションの県別名簿から25%の割合で等間隔抽出した訪問看護ステーション看護師あてに自記式質問紙調査を郵送した。449人の訪問看護師から回答を得た。回答者の平均年齢は45.5歳(標準偏差7.8)、訪問看護師経験は平均7.0年(標準偏差4.7)であった。32.7%の回答者が移動中の事故を経験していた。その事故の時の移動手段は自動車が最も多かった。リスクの経験に関する実態は以下の通りであった。すなわち、「暴言を言われ不快な思いをした」経験を有する訪問看護師が最も多く、「まれにある」41.3%、「ときどきある」9.6%、「よくある」3.8%であった。ついで多かったリスクは、「精神的に混乱状態で困った」を44.2%の看護師が経験していた。「性的いやがらせ行為があった」は31.5%あった。リスクに関する訪問開始前の確認事項として、「家庭内での不安定な人間関係」は過半数を超える訪問看護ステーションで確認していた。しかし、「患者の薬物乱用歴の有無」と「患者の家の動物の有無」「患者の暴力的行動の事実歴」は、それぞれ30%から40%台の低い数値だった。リスクに関する講習や教育は66.8%の訪問看護ステーションでなされていなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進んでいると評価した理由は以下のとおりである。平成23年度の当初計画では、(1)連携システム構築のための事前調査、(2)教育研修の体系化に向けた事前調査、(3)リスクマネジメントに関する疫学的調査であった。連携システム構築に向けた、G県内訪問看護ステーション管理者と面接した結果、訪問看護ステーションにおけるリスクマネジメント、特に訪問看護師自身の安全を確保するためのマネジメントに関しては、まだ十分な体制を持っていないことが把握できた。このことは、今後の計画を進めていくうえで、事前資料として有効である。訪問看護師へのリスクマネジメントの疫学的調査では、平成23年8月から9月にかけて調査を実施したために、震災直後の東北3県(宮城、福島、岩手)を調査対象から除いた。しかし、全国的な疫学的調査の結果に大きな影響はないと考えられる。この調査結果から、訪問看護師のリスクの現状、訪問看護ステーションのリスクマネジメントの実態が把握できたことは、来年度の研究に有効であった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究計画は以下のとおりである。(1)訪問看護ステーションのリスクマネジメントネットワーク構築の体制づくりとネットワーク機能としての相談事業の実施と評価を行う。(2)訪問看護ステーションの看護師を対象とした教育研修の計画と実施、その評価を行う。(1)地域ネットワークの構築に関しては、G県内訪問看護ステーション管理者連絡会の協力を得て、県内の地域で活動しやすい体制づくりを目指す。ネットワーク構成のコンソーシアムとして、訪問看護ステーション管理者連絡会の役員、研究者、看護協会訪問看護ステーション管理者などを予定している。これらのコンソーシアムメンバーでシステムの機能としての相談やステーション管理者への指導を行う体制づくりを行う。相談機能では、熟練訪問看護師による個別の看護師や管理者への相談機能の体制を作り実施し、評価する。(2)訪問看護師への教育研修においては、前年度の疫学的調査の結果をもとに、教育内容を計画する。すなわち、訪問看護師の安全を確保するための予防としての対策、リスクが怒った時の対処などを研修内容に入れる。教育研修の実施前後の評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画は以下のとおりである。(1)訪問看護ステーションのリスクマネジメントネットワークのための会議をもち、活動方法の検討や進捗状況を確認することが必要である。そのために、会議室借用費用、メンバーの旅費、資料代などを必要とする。訪問看護師への相談事業を実施し評価するための費用は以下のとおりである。すなわち、熟練訪問看護師を相談員として非常勤で雇用するための人件費、相談に使用する部屋の借用、電話、パソコンの設置、事務用品などの費用である。(2)訪問看護師の教育研修の実施のために費用として以下のとおりである。講師謝金と旅費、研修会場借用費用、研修会に使用する資料代などである。研修会実施のための補助者の雇用費も必要とする。(3)24年度には、23年度に実施した調査結果をまとめ学会に発表するために、参加費及び旅費を費用として計画している。なお、本調査に係る資料の作成、調査票の入力など研究補助者を雇用する費用も計画している。
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