2011 Fiscal Year Research-status Report
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23593458
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
山田 紀代美 名古屋市立大学, 看護学部, 教授 (60269636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 公昭 立正大学, 心理学部, 教授 (10237703)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 難聴 / 高齢者 / 聞こえの自覚 / 純音聴力 |
Research Abstract |
本研究は,地域在住高齢者における難聴の早期発見を目的としたスクリーニング尺度を開発することである。そこで,初年度の23年度は,65歳以上の高齢者47人の耳の聞こえの自覚(非常によく聞こえる~全く聞こえない)と純音聴力検査結果(500~4000Hz)の関係について分析を行うこととした。結果は以下の通りであった。 47人の内訳は男性17人(36.2%)平均年齢74.41±4.20歳,女性は30人(63.8%)で平均年齢70.93±4.10歳で,男性の年齢が有意(p<0.01)に高かった。しかし,4分法による純音聴力検査では,男性43.09±12.81dB,女性47.50±16.81dBでその平均値に性による違いがなかったことから男女合わせて分析した。聞こえの自覚(左耳)では,「非常によく聞こえる」が2人(4.3%),「よく聞こえる」19人(40.4%),「まあまあ聞こえる」16人(34.0%),「あまり聞こえない」10人(21.3%),「全く聞こえない」0人であり,右耳もほぼ類似の結果であった。聞こえの自覚と純音聴力の関係は,「非常によく聞こえる」と答えた高齢者の聴力は50.63±13.26dBで,順次39.08±10.31dB,44.61±12.84dB,60.00±19.78dBであり,一部例外はあるものの聞こえの自覚が悪くなるほど純音聴力も大きくなり,特に「よく聞こえる」と「あまり聞こえない」との間(p<0.01),「まあまあ聞こえる」と「あまり聞こえない」の間(p<0.05)で有意差が見られた。 以上から,聞こえの自覚と純音聴力とは関連が見られたことから,地域高齢者における難聴のスクリーニングに聞こえの自覚を問うことは意味があると示唆された。次年度以降は,純音聴力に語音弁別能検査も加え,より妥当性のあるスクリーニング方法を検討する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、地域在住の高齢者の難聴を簡便に抽出できるスクリーニング尺度の開発が目的である。従って、特別な防音室を必要とする純音聴力検査や語音弁別能検査を用いることなく、本人の聞こえの自覚を主体とした項目の設定を中心とした調査票を考えている。初年度において、純音聴力検査結果と高齢者の聞こえの自覚が関連していること、すなわち聞こえが悪いと自覚する頻度が高くなるほど、純音聴力結果も数値が大きくなることが示されたことから、本人の自覚を軸に置いた方向性はほぼ間違いがないことが確認できた。しかし、純音聴力検査結果と本人の聞こえの自覚に解離がある高齢者への聞き取りについては、高齢者自身が聞こえていないと言う認識が低いために問題意識を持ちにくい状況であることが判明し、それらを考慮した調査説明を検討することに多くの時間を要し実施まで至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、23年度の予定に含めながらも実施出来なかった純音聴力検査と高齢者自身の聞こえの自覚との結果に解離が生じている高齢者に対して、高齢者の自尊感情を害しない説明方法を検討し、半構成面接を行う予定である。ただし、当初聞き取り予定の人数を15人程度としていたが、このずれが生じる割合は調査対象者の1割程度であることから、10人程度が調査可能な数字であると考えている。さらに、次年度予定している語音弁別能検査については、純音聴力検査に比べ、その方法論が複雑でより専門的な知識・技術を必要とすることから、その習得に多くの時間を要することが推察されるため、十分な準備時間を確保して取り組みたいと考えている。以上をもとに、24年度末には、第一次聞こえ調査尺度の原案を作成する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度実施予定でありながら実施できなかった、高齢者に対する半構成面接を最初に行う予定である。この調査には、調査対象者への謝礼、また調査場所への移動のための交通費、また採取したデータの整理のためのアルバイト雇用者への謝金が必要である。 また、24年度の計画としては、上記の質的データを分析する作業を行う。そのために、研究者間での頻回な話し合いや打ち合わせが必要である。研究者同士が別の所属であることから大部分は電話・メールでのコミュニケーションになると予測されるがカテゴリーを決定する段階では、直接の話合いが必要であると考え交通費も計上する。さらに、高齢者に対して語音弁別能検査も実施する予定であることから、謝礼及び調査会場までの交通費、また調査にはオージオメータ器機の操作以外にデータの記載や高齢者への説明など人手を要することからアルバイトの雇用も必要である。
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