2011 Fiscal Year Research-status Report
標準モデル栄養バランスソフトを用いた高齢者糖尿病在宅療養者と家族への食事指導
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23593469
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Research Institution | Akita University of Nursing and Welfare |
Principal Investigator |
佐藤 厚子 秋田看護福祉大学, 看護福祉学部, 講師 (20320608)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 肥満 / 糖尿病 / 食品摂取頻度 / 標準モデル栄養バランス表 |
Research Abstract |
研究者が開発した単純化した標準栄養バランス表(Satoh,A.et al.,Dietary guidance for obese children and their families using a model nutritional balance chart. JJNS, 4, 95-102, 2007.)を用いて肥満及び非肥満児童の食品摂取頻度を比較した。標準栄養バランス表は食品材料を肉・魚・たまご・牛乳(乳製品)・豆(豆製品)・緑黄色野菜・淡色野菜・果物・穀類・油・砂糖の11項目に分け、1,600kcalの理想的な食品配分を黒丸で示したものである。食品摂取頻度は実際の食物摂取数÷モデル栄養バランス表による食品摂取頻度(モデル比)で表しモデル比"1"を理想的な食品摂取頻度とした。対象者は34人の肥満児童と10人の非肥満児童であった。肥満児童の肥満度は50±21%、非肥満児童は3.0±8%であった。肥満児童の食品摂取頻度は食品材料11項目のうち、6項目において非肥満児童よりも有意に低かった(p<0.05~p<0.01)。食品材料11項目の平均食品摂取頻度は肥満児童0.9±0.4に対し非肥満児童1.3±0.4であった(p<0.01)。運動習慣を有する児童は肥満度が少なく(p<0.01)、非肥満児童は一日の平均テレビ視聴時間、ゲーム時間が短かった(それぞれp<0.05)(Satoh, A., et al. Diets of obese and non-obese children, Health, 3, 487-489, 2011)。本研究結果から、児童肥満は食物摂取頻度によってもたらされるのではなく、運動習慣、テレビ視聴時間、ゲーム時間などの生活習慣が影響を与えている可能性を示唆した。従って児童肥満を防ぐには運動習慣を推進することが重要であろうと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究者が開発した栄養バランス管理装置及び栄養バランス管理プログラムは標準栄養バランス表をコンピュータ化したものである。対象者の生年月日を入力し、年齢に応じたエネルギー量における栄養バランス分析を行う。1週間のうちの3日間の理想的な食品材料配分(肉・魚・たまご・牛乳(乳製品)・豆(豆製品)・緑黄色野菜・淡色野菜・果物・穀類・油・砂糖の11項目)がイラストで表示されている。摂取した食品材料または献立名を入力すると黒丸に変換される。また、モデルよりも不足な場合は白丸、多く摂取した場合は赤丸で表示される。このソフトは特許申請中である(特願2009-177380)。食事調査人数を大幅に増やすことができるため、より信頼性のあるデータを得ることが可能になった。平成23年度は児童の肥満と食品材料摂取数の関連を調査し、非肥満児童の食品材料摂取数が肥満児童よりも有意に多いことを明らかにし、児童の肥満は食品摂取の頻度ではなく、運動習慣が大きく影響することを報告した(Satoh, A., Sasaki, S. et al., Diets of obese and non-obese children, Health, 3, 487-489, 2011)。この結果は運動が制限される可能性がある高齢肥満者、高齢糖尿病在宅療養者にとって食事コントロールが運動よりも重要な因子である可能性を示唆したといえる。現在65歳以上の要支援状態の高齢者約100人を対象とし、肥満(BMI25≧)、普通(18.5≦BMI<25)、やせ(BMI<18.5)における食品摂取頻度を分析し、運動習慣を含む生活習慣との関連についてまとめている。また、肥満及び糖尿病の在宅療養高齢者に食事指導を行っており、介入者の体重とHbA1cは改善傾向である。従って研究計画の進度はおおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.標準栄養バランス表ソフトのコンピュータープログラムの改良を行う。標準栄養バランス表ソフトにはすでに4000件の食事内容が内蔵されているが、更に入力食品項目の増大を図り2万件を目指す。平成23年度に把握できた新たな献立内容や食品名を入力し、入力データを大幅に増やし、プログラムを再編成する。現在は3日間の食事内容分析に約15分を要するが、データ数を増やすことでより短時間にかつスムーズに食事内容の分析が可能になる。仕様勝手の改良なども必要である。また、画面の拡大など被験者により分りやすい表示の工夫を行う。また、要支援状態の高齢者を対象にした食事摂取頻度調査地域包括支援センターの介護予防教室に参加している高齢者約100人を対象とし、肥満(BMI25≧)、普通18.5≦BMI<25)、やせ(BMI<18.5)における食品摂取頻度を分析し、運動習慣、食習慣などの生活習慣との関連についてまとめる。平成23年度の研究において非肥満児童は食品摂取頻度が肥満児童よりも多かった。その背景には非肥満児童の運動習慣の影響があり、児童の肥満を防ぐには運動習慣が重要であった。同様の調査を高齢者に行う。現在までに得られたデータではBMIが高くなるにしたがって食品摂取頻度が高くなり、運動習慣の有無には関連がない。従って高齢者の肥満を防ぎ改善するには食事内容の見直しが重要であると考えられるが、より信頼性のあるデータを得るために調査人数を増やして分析する。更に肥満及び糖尿病の在宅療養高齢者への食事指導を充実する。平成23年度に引き続き、標準栄養バランス表ソフトのコンピュータープログラムを用いて医師、保健師、訪問看護師の協力を得て食事指導に取り組む。肥満及び糖尿病在宅高齢者への食事指導を1か月に一度、6か月間行う。また、6か月間の食事指導を終了した高齢者については更に6か月間追跡調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.【プログラム作成に関する費用】1)単純化した標準栄養バランス表をもとに被験者の食事表から食品交換表と食品成分表をもとに黒丸をコンピューター入力するためのプログラム作成費が必要である。2)単純化した標準栄養バランス表の自動黒丸作成コンピューターのCD-ROMを作成する費用が必要である。3)単純化した標準栄養バランス表及び被験者の食事表及び黒丸変換表などを再編成するための消耗品が必要である。4)画面の大きさの改良、仕様の改良などの費用が必要である。5)特許取得のための費用が必要である。2.【謝金】1)介護予防教室に参加した高齢者への謝金が必要である。2)介護予防教室主催者への謝金が必要である。3)食事指導介入をする在宅糖尿病療養者への謝金が必要である。4)医師・保健師・訪問看護師への謝金が必要である。5)研究補助者へのデータ整理などに関する作業への謝金が必要である。3.【通信費】1)被験者と研究者間の食事指導のための通信費が必要である。2)医師・保健師・訪問看護師と研究者間のデータのやり取りのための通信費が必要である。4.【血液検査・受診費用】1)在宅糖尿病療養者の検査料金が必要である。医師による毎月(一人12か月)の血液検査他の料金、通院のための費用が必要である。5.【旅費】1)高齢者への生活習慣アンケート調査、3日間の食事内容記載に関する調査依頼のための旅費が必要である。2)在宅糖尿病療養者の研究協力者募集の旅費が必要である。3)学会発表(看護科学学会においての口頭発表)のための経費が必要である。4)データをまとめるための打ち合わせ費用が必要である。6.【論文作成】1)論文投稿(Health)、英文添削などの費用が必要である。
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