2013 Fiscal Year Annual Research Report
里親不調により里子との離別を体験した里親のメンタルヘルスとそのケアに関する研究
Project/Area Number |
23593477
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
入江 拓 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 准教授 (30267877)
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Keywords | 養育里親 / 里親不調 / 措置変更 / 負担感 / 喪失体験 / 直接的暴力 / 構造的暴力 / 文化的暴力 |
Research Abstract |
里親不調による里子との離別という大きな喪失体験を余儀なくされた里親の「語り」を、「負担感」に焦点を当てながら質的記述的に分析し、その体験の構造を検討した。また、里親が社会の中でどのような構造の中に置かれているかを検討しながら、里親の「負担感」の支援に関する要点を整理した。 1.里親不調により里子との離別を体験した里親の措置変更前後の「負担感」は「悲嘆のプロセス」によって説明が可能であった。したがって、「負担感」の支援の要点は、離別(喪失)に伴う正常な「悲嘆のプロセス」が安全に行なえるような環境や人的資源が提供されることである。 2.里親を取り巻く構造を、「平和学」で提唱される「直接的暴力」「構造的暴力」「文化的暴力」の概念により検討した結果、「機能不全を起こすリスクの高い共同体としての里親家庭」「機能不全を起こしている児童養護のシステム」「里親をマイノリティとして扱う文化的力学・社会的要因」の三重構造があり、特に配慮を欠いた措置変更がおこなわれた場合、里親はそれを児童相談所からの可視的な「直接的暴力」として体験しやすい。そのような「直接的暴力」を下支えする不可視的な「構造的暴力」および「文化的暴力」の力学が、里親が子どもの養育に際して体験する日常の「負担感」に色濃く影響を及ぼし続けていた。 3.里親不調により措置変更を経験している里親の「負担感」は、里親が我が国ではマイノリティな存在であるという「環境因子」によって被る「障害」により体験させられているという側面も併せ持っており、措置変更による里子との離別に至る経過の途中もしくは、そのプロセス全体にわたって侵害されているのは、里親の「生活者としての権利」と「生きる力」であった。この様な状況下において、まさに里親はマイノリティとして味わう普遍性のある苦しみを「負担感」として体験しているという認識が支援する側には不可欠である。
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Research Products
(2 results)