2011 Fiscal Year Research-status Report
地域在住高齢者における音や匂いを刺激とする新たな手法の回想法の効果
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23593478
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
梅本 充子 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 准教授 (50410692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野崎 玲子 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 講師 (40310544)
神保 太樹 昭和大学, 医学部, ポストドクター (60601317)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 老年看護学 / 地域在住高齢者 / 回想法 / 音 / 匂い / 介護予防 |
Research Abstract |
本研究では地域在住高齢者に対してグループ回想法を実施し,短期効果検証を行うことを目的とした。(1)アロマを併用したグループ回想法の実施対象:地域在住高齢者10名(F4名、M6名)年齢(71歳~86歳,平均77歳),期間(H23年6月21日~8月23日)方法:広報誌により参加者募集,週1回,1時間,計8回の施行。プログラムは,成長発達段階にそったテーマと季節の思い出を織り込み,毎回室内にアロマを使用した。統計解析はSPSS12バージョン(spss社)を使用。倫理的配慮:NPOシルバー総合研究所倫理審査を受けた。結果:介入前後の認知機能・QOLでは有意差は得られなかったもののQOLの6下位尺度に平均値の改善がみられ,「活力」「社会生活機能」,「日常役割機能(精神)」「心の健康」「体の痛み」は,介入後,国民標準値を大きく上回った。回想法に参加し,社会交流することで,体の痛みが緩和され,活力と気持ちの充実がみられていることが示された。TAS9法による加速度脈波測定では,血管状態に関わるスコアに有意な改善がみられた他,自律神経系の調整作用,すなわち抗ストレス性に関して改善傾向が観察された。このことから、TAS9では、血管状態の改善(心肺機能の改善)が示唆され,その原因として,回想法によって日常での慢性的ストレスの改善が得られたものと考えられる。今後,長期調査を行うことでより詳細な結果が得られる可能性もあると考えられた。(2)一般的回想法を実施一般対象:地域在住高齢者8名(F4名,M4名)年齢(65~74歳,平均71歳),期間(H23年11月30日~H24年1月24日)(解析対象者)結果:介入前後の認知機能・QOLでは有意差は得られなかったものの認知機能とQOLの「体の痛み」に平均値の改善がみられた。いずれの対象者も介入前から健康度や活動度が高く有意差が得られなかったものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、認知症の介護予防、非薬物療法の一つとして用いられる回想法の、より効果的な手法の確立を目的とするものである。23年度の予定では、非介入群の回想法グループの調査と一般的回想法グループの介入調査を行うことであった。しかし、非介入群の回想法グループの設定と調査ができなかった。また介入群の回想法グループにおいても4回の調査が、3回の調査(介入前2か月前の未調査)でおわった。さらに対象者も年齢的に若く60歳代から70歳代であり、活動度の高い高齢者が選定され、地域在住の高齢者のサンプルを十分反映しているとは言い難い状況であった。これらは、自治体の方ですでに回想法の日程や対象者の決定がされており、科研費の採択決定報告ではすでに間に合わなかったことが原因となった。次年度以降は、非介入群の回想法グループの設定や調査回数の問題、対象者の選定は自治体との協議のもと密に会議を行いながら設定をしたいと考えている。良好に進んでいるところもあり、パイロットスタディとして部屋に充満された匂いをもとに高齢者のストレス度や健康状況を介入前後で調査できた点は、次年度以降の研究に参考となるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)予備調査の高齢者における懐かしい音のアンケート結果から音源収集をおこなう。過去の音については、収集が困難であるし、放送局で使われたものは著作権料が莫大なので、音のコレクションを行っている方の協力を得るか、類似音を他から流用する。また音のサンプリングを研究者らで行う。音そのものは抽象性が高いので、類似音でも解決できると仮定するがこれについても検証を行う。(2)回想法最終回の8回目に音の思い出アルバムを作製する。すなわち「音の出る地図」を作製する。音の作製については、音源の分類(自然音、人工音)を行う。「音の出る地図」とは高齢者が自ら描いた懐かしい風景の絵をパソコンに取り込み、そこに音をリンクさせることによって、絵をクリックするとその音が聞けるものである。(3)過去に報告されているアロマセラピーの手技を参考として、どのような匂いを用いれば、認知症の方のQOL上昇や、症状の緩和及び改善に効果的であるかについて検討し、回想法のプログラムに取り入れて活用する。高齢者の懐かしい匂いについて音と同様に高齢者200人から300人にアンケートを行い、テーマごとや年齢別の上位5位くらいまでの匂いを決定し、香料作製をする「音」と同様に、「匂い」も過去の記憶を呼び起こすツールとして活用し、高齢者の介護予防と認知症ケアに役立てるための研究を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「音」及び「匂い」を刺激とする回想法と匂いを刺激とする回想法の有用性の検討を行う。一般の回想法と、「音」及び「匂い」を刺激とする回想法の効果を比較し、実際に有効に用いることができるかどうか検討する。 「音」を刺激とする回想法の新たな手法の開発について、回想法介入グループにおいて、最終日に音地図を作成し、懐かしい音を入れてその有用性を検討する。そのために、音を刺激とする回想法のCD作製(回想法のテーマごと、年代別の2パターンを作成)をおこなう。CD作製は、(株)シルバーチャンネルに依頼を行う。さらに「匂い」を刺激とする回想法の香料作製を行うための費用に研究費を使用する。高齢者が感じる懐かしい匂いをアンケートにより知るためのアンケート実施の研究補助【アルバイト】費や「音」及び「匂い」を刺激とする回想法の介入調査8回分の研究補助【アルバイト】費と備品、消耗品、参考とする施設訪問、研究補助費、交通費、学会発表のための費用として使用する。
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