2012 Fiscal Year Research-status Report
高齢者のスピリチュアルケア実践のプロセスとその課題の検討
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23593488
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
国光 恵子 (竹田 恵子) 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 教授 (40265096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太湯 好子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (10190117)
小薮 智子 川崎医療短期大学, 看護科, 助教 (70435345)
實金 栄 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (50468295)
岡本 宣雄 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (40412267)
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Keywords | 高齢者 / スピリチュアリティ / スピリチュアルケア / アセスメントツール / 看護実践プロセス |
Research Abstract |
本研究の目的は、看護の独自性をふまえた高齢者のスピリチュアルケアの方略を構築し、その課題を明らかにすることである。平成24年度は、平成23年度の研究(高齢者のスピリチュアリティの特徴およびスピリチュアルケア実践の実態と課題の明確化)を継続するとともに、スピリチュアルケア実践プロセスツールの検討と実効性のあるスピリチュアルケアの方略の検討を目的に進めた。 療養中の高齢者のスピリチュアリティの特徴について、看護師により語られ事例を通して検討をした。その結果、「生きる意味・目的」「自己の存在価値」への問いや老いに対する捉え方や価値観、自律性の保障、「死と死にゆくことへの態度」が高齢者のスピリチュアリティの状態に影響していることが明らかになった。また、言語的コミュニケーションが困難な場合、高齢者の苦痛が精神的な苦痛かスピリチュアルな苦痛であるのかの判断が難しいことが示された。スピリチュアルケアについては、スピリチュアルティへの影響が大きい家族との関係性に注目した支援が重要であること、看護師や高齢者にかかわる他者のもつ高齢者観により、そのかかわりがスピリチュアルケアなる場合とスピリチュアルペインをもたらす場合があることが示された。さらに、言語的コミュニケーションが困難な高齢者に対しては、高齢者の苦痛がスピリチュアルペインであるか否かを問題にするよりも、その可能性を考え、目の前の高齢者その人に関心を向け、心の奥底にある思いに近づこうとすることの大切さが示唆された。そして、チームで高齢者へのスピリチュアルケアを提供するためには、看護師一人ひとりが把握している高齢患者のスピリチュアリティに関する情報を記録やカンファレンスで共有してアセスメントを行うことが課題として示された。 以上の結果およびスピリチュアルケアに関する講演をふまえて現在、アセスメントツールの検討を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度に実施した調査は、看護師が語る事例を通して高齢者のスピリチュアリティの特徴等について分析しようとするものであった。しかし、高齢者のスピリチュアルな側面を大切にした看護を実践していると看護管理者から推薦を受けた看護師を対象とした調査であり、看護師自身が“高齢者のスピリチュアリティ、スピリチュアルケア”として意識しているか否かは問題にしていなかった。さらに、認知症等の高齢者自身の特性から必ずしも言語的なコミュニケーションができる高齢者の事例ばかりではなかったため、SCAT(Steps for Coding and Theorization)という手法を用いて分析を行ったが、看護師により語られた内容が“高齢者のスピリチュアリティ、スピリチュアルケア”であるのかを常に検討する必要があり、一事例一事例の分析と分析結果の妥当性の検討に時間を要した。 さらに、高齢者のスピリチュアリティの特徴をふまえたスピリチュアルケアのアセスメントツールの作成に向け、緩和ケア領域でのスピリチュアルケアの研究および実践の第一人者である看護職者、および認知症看護の認定看護師による講演を聴くとともに研究遂行にあたっての助言を受けたが、高齢者の特性として非常に個人差が大きく多様であること、看護師のスピリチュアリティへの認識が様々なレベルであることから、同一のアセスメントツールで対応することが困難であるという課題が明らかになった。事例分析結果からも同様のことが考えられた。そのため、日々の実践に無理なく取り入れ、チームとしてスピリチュアルケアを実践するためには、入院時からの看護診断・立案・評価のプロセスにスピリチュアルな側面からのアセスメントを組み込むことが必要であると考えられたが、現在その課題解決に向けた検討に時間を要している状況にある。 以上の理由により、「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
アセスメントツールを作成する上で明らかになった課題の解決に向け、以下の方法で研究を進める予定である。本研究のメンバーに加えて看護師(③のフィールドとして予定している施設の看護師を含む)を対象に、①高齢者のスピリチュアリティに関連した看護診断についての講演(スピリチュアルアセスメントの実際:アセスメントツールとその用い方、および②高齢患者への日々の実践に活かすスピリチュアルアセスメントと介入の方法についての講演を実施し、スピリチュアルアセスメントおよびスピリチュアルケアに対する共通理解を得る。③現状のデータベースを活用したアセスメントが可能となるようなアセスメントツール(プロセスシートとガイドライン)の原案を作成し、グループ・フォーカスインタビューにより得られた意見を反映させた修正案を作成する予定である。この際、看護師の看護観がスピリチュアルケアの実践に反映されることが推察されたため、看護師へのスピリチュアルケアの浸透を並行して図っていく予定である。④③で作成されたアセスメントツールを用いた看護展開を依頼し、課題を検討し、修正を加える。なお、③および④のプロセスにおいて、スピリチュアルケアの専門家および老人看護専門看護師等の助言を得る予定である。 平成25年度は本研究の最終年度でもあり、アセスメントツールの作成と並行して、国内外の学会および学会誌等に研究成果を発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度までの研究費において予定と大きく異なったのは、物品費と旅費、その他である。しかしながら平成24年度のみでみると、講師旅費および講師謝金、その他が予定より減額となっている。その理由として、講師の招聘が平成24年度末から平成25年度はじめとなったこと、研究成果の発表が学会発表にとどまり、論文としてまとめられていないため、論文にまとめる際に使用する翻訳料が未使用となっているためである。 平成25年度は、今後の研究の推進方策に示した如く、日々の看護実践に無理なく組み込むことのできる高齢患者用スピリチュアルケアのセスメントツール(プロセスシートとガイドライン)を作成するとともに、本研究の成果を国内外の学会等で発表する。研究の遂行にあたり、以下①~⑦の費用が必要である。 ①アセスメントツールを作成し、活用するための講師謝金・講師旅費、および情報収集旅費②アセスメントシートの作成に当たり助言を得るための協力者謝金および協力者旅費③高齢者の特徴をふまえたスピリチュアルケアを展開するためのツール(プロセスシートとガイドライン)の印刷代④アセスメントツール(案)を実用可能なツールに修正を加えブラッシュアップする際の研究協力者への謝品、⑤研究成果を発表するための成果発表旅費⑥以上の他、論文作成時必要となる翻訳料や研究を進めるにあたって必要となる文具等。
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Research Products
(5 results)