2011 Fiscal Year Research-status Report
要介護者を抱える家族と"終の棲家"としてのホームホスピス
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23593493
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Research Institution | Kumamoto Health Science University |
Principal Investigator |
竹熊 千晶 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (20312168)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 看取り / 介護負担 / 終の棲家 / ホームホスピス / ケア・システム |
Research Abstract |
本研究は、高齢化・多様化・複雑化する日本社会において、そこに暮らす人びとの生活構造や近隣、家族内の紐帯、身体観、死生観など地域の文化に根ざした"終の棲家"の在り方と、介護が必要になった時に住む家としてのその"家"を包含した地域のなかでのケア・モデルを構築することをねらいとしている。人びとが、老いや病い、障害のなかで介護が必要になった時、どこで、誰が、どのようにケアに関与できるのかを検討し、日本の社会のなかで持続可能なケア・システムを構築することを目的とする。 筆者らの研究グループは、看取りの場の選択肢の一つとして平成22年4月「NPO法人老いと病いの文化研究所われもこう」(以下、「ホームホスピスわれもこう」)を設立した。ここでいうホームホスピスとは、「本当の自宅ではないけれども、要介護の状態になっても最期まで安心していることのできるもう一つの家」のことである。研究所として活動を開始し、これまでに2名を看取り、現在母屋に6名、離れに1名、計7名の入居者に対してケアを実施している。性別による内訳は、男性1名、女性6名である。年齢は75歳~96歳。介護度は要介護5が5名、要介護3が1名、要支援2が1名である。われもこうへの入居の契機は、「夫婦二人暮らしで、退院時に家での介護は困難であった」「グループホームに入所中に脳梗塞をおこし、病院に入院した」「介護する家族が昼間は仕事に出ており、長年の介護で披露が蓄積しており、これからの介護に不安があった」「有料老人ホームにいたが、認知症のため孤立がちであった」などである。地域の中にある空き家を改修し、そこをホームホスピスとして活用していくことで、ゴミ捨てや洗濯物干し、畑仕事など日々の生活の中で住民との関わりを持つことができ、近隣住民の意識が変化する言動がみられている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NPO法人のホームホスピスを設立し2年が経過した。これまで2名の看取りを行い、現在母屋に6名、離れに1名の入居者に対してケアを行っている。ほとんどが要介護5で重度の介護を必要としている。まずは、ホームホスピスを継続しケアを行っていることが、大きな成果であると考えられる。さらに、家族から入居にいたる経緯を聞き取ることで、家族成員が要介護になった時の心理的変化などもデータとして集めることができた。そうすることで、これまでの調査をもとにした研究の概念枠組みの整理に着手し、次年度に向けた住民に対する調査項目の検討を行っているところである。また、地域の中で空き家を改修した普通の家で、看取りまでのケアを継続していることで、近隣の住民も介護や看取りに対しての意識が変化する言動がみられており、研究としてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ホームホスピスの活動を継続することが、この研究の第一の方策であるため、ケアの実践について、今後も引き続き行っていく。これまで家族に対して入居の動機と入居後の気持ちの変化を聞き取ってきているが、平成24年度は家族に対する聞き取りのまとめを行っていく。さらに、ホームホスピスのある地域住民に対する面接調査を行う予定である。ホームホスピスの設立から2年が経過し、すでに近隣の住民の意識に変化が現れており、設立3年目に入ったところでホームホスピスに対しての意識や介護、看取りに対する意識を調査していくことは、これからの研究の重要な基礎データになっていくと思われる。「ホームホスピスわれもこう」のある集落は高齢化率50%を超えており、51世帯、約100名の人口である。全戸訪問し集落の成人全員に面接調査を行うことが可能な範囲であり、2年間での近隣住民の意識の変化も、レイニンガーの「見知らぬ人‐友人モデル」でいう所の、信頼のおけるデータ収集の段階であると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は大きな設備に関わる費用は発生しない。主な研究費使途は学会参加と調査に関わる旅費と調査に関わる謝金である。旅費としては、北海道で行われる看護管理学会での発表と東京で行われる看護科学学会への参加費、調査項目の検討のための共同研究者の会議参加の旅費、調査員の交通費などである。謝金としては、調査対象となる家族や住民への謝礼、調査期間の調査員への謝金、調査終了後のデータの整理と入力のためのアルバイト代などである。その他調査に必要な文具類などの消耗品、データ入力にためのICレコーダーやUSBなどの機器類の追加、研究内容に関する文献費などが必要となってくると思われる。
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Research Products
(1 results)