2012 Fiscal Year Research-status Report
要介護者を抱える家族と”終の棲家”としてのホームホスピス
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23593493
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Research Institution | Kumamoto Health Science University |
Principal Investigator |
竹熊 千晶 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (20312168)
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Keywords | 看取り / 介護負担 / 終の棲家 / ホームホスピス / ケア・システム |
Research Abstract |
本研究は、高齢化・多様化・複雑化する日本社会において、そこに暮らす人びとの生活構造や近隣、家族内の紐帯、身体観、死生観など地域の文化に根ざした”終の棲家”の在り方と、介護が必要になった時に住む場所としてのその”家”を包含した地域におけるケア・モデルを構築することをねらいとしている。 人びとが、老いや病い、障害のなかで介護が必要になった時、どこで、誰が、どのようにケアに関与できるのかを検討し、日本の社会のなかで持続可能なケア・システムを構築することを目的とする。 筆者らの研究グループは、これまでの研究の成果から看取りの場の選択肢の一つとして平成22年4月NPO法人として「老いと病いの文化研究所ホームホスピスわれもこう」を設立した。ここでいうホームホスピスとは、「本当の自宅ではないけれども、要介護の状態になっても最期まで安心していることのできるもう一つの家」のことである。空き家を改修した”家”で設立から3年が経過し、2名を看取り、7名の入居者がスタッフとともに生活している。さらに平成23年3月から、もう一軒のホームホスピスを開設し、すでに4名の入居者がいる。ほとんどが重度の要介護者であるが、ホームホスピスでの生活のなかで、認知症の問題行動が落ち着き、褥瘡が軽快したり、入居者の笑顔が増え、これまで介護負担の多かった家族が安心して生活される。少しずつではあるが、近隣住民の認知度も高まり、空き家の提供や地域住民からの相談や支援の申し出も増加した。このような入居者の変化、家族の変化、地域の変化を平成23年5月末にオーストラリアで行われるICNにおいて発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
設立から3年でホームホスピスの2軒目を開設し、地域住民のニーズも高い。平成24年度には全国にあるホームホスピスのシンポジウムを主催し、ホームホスピスの状況を議論した。ホームホスピスのなかで起こる入居者の変化、家族の変化、地域の変化を確認することができた。このようにアクション・リサーチとしてホームホスピスの活動は順調に行っているが、平成23年度に予定していた近隣住民への調査が、調査項目の検討や地域への事前準備に時間がかかり、実施できていない。また、ホームホスピスの活動そのものが、介護度が重く、そのケア内容の調整などに時間をとられ、内容の分析が進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
ホームホスピスとしての活動を継続させることが、まずこの研究の第一義的な方策であるため、ケアの実践についてはこれまでと同様にカンファレンスを行いながら進めていく。入居者の変化については莫大なデータがある。これを詳細に分析していくことと、家族から聞き取った内容についても、まとめていく。地域住民の変化についても同様である。ホームホスピスがあることでの、大まかな地域ケア・システムの概念図は作成したが、今後近隣住民への質問紙をもとにした面接調査を行い、さらに持続可能なモデルにしていく必要がある。このホームホスピスのある集落は52世帯約100名である。全戸訪問し、調査を行なうことが可能な範囲である。また、これまでケア実践を行ってきた課題から、地域住民も巻き込んだ災害時の避難訓練や認知症の徘徊模擬訓練などを計画している。 これらを通じて、これまで作成したモデルの検証を行っていくとともに、全国にある各地域特性に応じたホームホスピスについてもその差異と共通性を検証し、日本社会のなかで持続可能なケア・システムのモデルとして開発していく。 さらに、海外の学会発表において、今後高齢化が予想される社会のなかでもモデルとなることが期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、2軒目のホームホスピスのケア実践継続のための備品が必要となることが予想される。 平成24年度に予定していた調査のための調査員への謝金や交通費、住民や家族への謝礼、調査終了後のデータ整理、入力のためのアルバイト料も引き続き使用する。 オーストラリアでの学会発表や論文作成のための翻訳ソフトや翻訳料、ポスター作製のための経費も必要である。これまでの途中経過を国内での学会発表も予定しており交通費がかかる。 さらに今年度は、膨大なデータ整理のためのアルバイトや論文作成のための研究者の打ち合わせにかかる旅費などの費用が必要となる。
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