2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23600001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大槻 勤 東北大学, 電子光理学研究センター, 准教授 (50233193)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊永 英寿 東北大学, 電子光理学研究センター, 助教 (00435645)
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Keywords | 放射性ベリリウム / 半減期変化 / フラーレン / フッ化物 |
Research Abstract |
原子核壊変のひとつである軌道電子捕獲壊変[EC(electron capture)壊変]は、核位置に存在する軌道電子を核子に取り込んで壊変する現象で、その確率は核位置での電子密度に依存する。代表的なEC壊変核種である放射性ベリリウム(Be-7)において、核位置での2s電子の割合は、核位置電子全体の10%程度も占めると予想される。核位置の2s電子は化学形や金属結晶形によっても大きく影響を受け、極端な環境下で2s電子の核子への捕獲を制御できると、EC壊変するBe-7の半減期も変化させることができる。本研究テーマでは化学形や金属結晶形、温度等の因子を変えて、実験・理論両面から原子核と軌道電子間の相互作用を引き出し、EC壊変に関わる基礎的な知見を得ることを目的とする研究テーマである。 平成24年度に計画された放射性Be-7内包C70フラーレンやフッ素化合物の作製は平成23年3月11日の震災により加速器の稼働がすべて停止に至ったために不可能になった。現在再立ち上げにより稼働準備中である。また、非密封放射性同位元素を用いる室内で実験を行うが、福島第一原子力発電所の事故によって、被災した貯留槽が現在建設中である。これらの状況から研究計画は遅れつつあるが、平成25年度には実施可能な状況に漕ぎ着けたい。現在、サンプル作製のコールド実験(放射性同位体を用いない実験)によってテスト中である。また、Be-7内包C70に関しては他施設を用いてなんとか測定が行われた。特にフッ化ベリリウム(BeF2)は潮解性があるために乾燥アルゴンガス中などで処理が必要で、その技術開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年3月11日の震災により加速器の稼働が停止した。現在再立ち上げにより稼働準備中である。また、非密封放射性同位元素を用いる室内で実験を行うが、福島第一原子力発電所の事故によって、管理区域からの廃液貯留槽が破壊され、現在、地上型の新貯留槽を建設中である。 他の研究施設を用いて、放射性Be-7のC70へのインプラントを行い、その収率を求める実験が行われてきた。この結果、C70フラーレン内に内包されたBe-7の半減期測定実験が行われるに至った。現在、概ね終了予定である。また、理論的にBeアトムがC70内のどのようなポテンシャルにトラップされているか予測を行い、実験結果と比較する準備が進んでいる。フッ化ベリリウム(BeF2)の合成のコールド実験がすすんでいるが、放射性同位体を使った実験は平成25年度に貯留槽建設の竣工と同時にスタートさせる。また、Be-7を製造するための加速器も稼働予定である。 よって、現在の達成度は「やや遅れている」としたが、本年度中にC70内のBe-7の半減期が測定できたのでこれから解析に入る予定である。また、その他の実験(フッ化ベリリウム(BeF2)や金属Be)の測定実験も平行して準備が進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、非密封放射性同位元素使用施設の稼働の準備及びそのための非密封放射性同位元素用の貯留槽の稼働準備を行っている。本年の夏以降には測定の再開始を予定している。 また、東北大学サイクロトロンRIセンターへの装置移設を含めて研究再開を目指すことも考慮する。今年の前半は資料や情報の収集を行い、本実験の進捗に役立てる。 東北大学サイクロトロンRIセンター等の他施設を用いて、放射性Be-7のC82へのインプラント実験を行う予定である。また、理論的にBeアトムがC70内のどのようなポテンシャルにトラップされているか予測を行い、実験結果と比較する。フッ化ベリリウム(BeF2)の合成のコールド実験がすすんでいるが、放射性同位体を使った実験を行う。さらに金属内にインプラント実験とそのBe-7の半減期測定も行う予定である。特にBe-7内包C70に関しての解析を進め、論文に纏める予定である。 現在の進捗は「やや遅れている」が、本年度中にC70内のBe-7の半減期が測定でき、今後、解析予定である。また、その他の実験(フッ化ベリリウム(BeF2)や金属Be)の測定実験も平行して準備が進められ、次年度に達成予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は非密封放射性同位元素使用施設の稼働が済む見込みであるので、本実験計画に支障はない。また、他施設(サイクロトロンRIセンター)に検出器を移動して測定も試みる予定であり、計画が少し遅れがちであるが、実験装置のフル稼働によって、半減期測定を実現する。 この年度中にC70内のBe-7の半減期の測定結果を公表する。また、その他の実験(フッ化ベリリウム(BeF2)や金属Be)の測定実験も平行して進められている予定なので、この結果も得られる予定である。 本年度の研究費に関しては、金属ベリリウムの購入や新たなBe-7の製造器具、化学分離薬品などを購入する。また、調査のための旅費や研究成果発表のための旅費に充てる。前期に消耗品を購入し、加速器や貯留槽の復旧とともに直ちに実験を開始するよう準備を進める。
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