2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23600001
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大槻 勤 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (50233193)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊永 英寿 東北大学, 学内共同利用施設等, 助教 (00435645)
|
Keywords | 半減期 / 放射性ベリリウム / フラーレン / 自動測定装置 / 崩壊定数 / 放射性金属ベリリウム |
Research Abstract |
軌道電子捕獲崩壊[EC(electron capture)崩壊]は,核位置に存在する軌道電子を核内核子に取り込んで崩壊する現象で,その確率は原子核位置での電子密度に比例する.代表的なEC 崩壊核種である放射性ベリリウム(Be-7)原子では,核に近い1s や2s の電子雲は化学形や圧力、温度などの周りの環境の影響を最も受けやすい.C60やC70内に内包させて極端に温度を変化させるなど、Be-7原子を特殊な環境に置いて1sや2s電子を制御できると,Be-7の半減期も大きく変化すると期待される. そこで本研究の目的は量子ビーム(陽子や電子)を用いてBe-7を製造し,温度・化学形・結晶形等の因子を変えて,その半減期がどれほど大きく変化するか調べることである.まず,半年以上にわたり安定して半減期変化を測定できる装置を作成した(自動測定装置).次ぎに、放射性ベリリウム(Be-7)内包フラーレン(Be-7@C60やBe-7@C70)などの物質を作製して室温と5K でそのBe-7の半減期を詳細に調べる実験をおこなった.その結果,室温と5Kに冷却されたC60内のBe-7の半減期を比較すると1.5%も短くなることを見出した.この実験結果の解明に,全電子第一原理計算手法を用いた理論的解析を行った.Be-7がC60の中心に位置する場合には,化学結合しない中性原子として振る舞い,2s電子の核位置での電子密度が大きくなることが分かった.C70についても同様の実験を行い、その半減期変化がC60に比較してどれほど変化するか調べる。また、金属内やフッ化ベリリウム(BeF2)のBe-7についても同様の知見を得る。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年3月11日の震災によりBe-7を製造する加速器や自動測定装置だ大きなダメージを受けた。昨年末より加速期の再稼働が実現し、やっと実験が可能となった。測定の確認は2回以上行ってきたが、これまで行う予定だったC70内包Be-7や金属ベリリウム中のBe-7の半減期変化測定の確認が行われている。フッ化ベリリウム(BeF2)の実験はこの確認後に行う予定であり、当初の計画よりも遅れている。また、フッ化ベリリウム(BeF2)は潮解性があり、無水のフッ化ベリリウム(BeF2)を製造するための実験計画も練り直す必要が生じている。 当初の計画では3年で終了予定であったが、約2年以上も震災のために実験が遅れてしまったので、1年の延期を申請した。しかし、2年のブランクは非常に大きく、評価としては「やや遅れている」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでにサイズの違うフラーレンや,未検の化学形,金属結晶形において,温度等のパラメータを変えて半減期変化を系統的に調べてきた.今年度はこれらの実験結果を総括し、Be-7が内包されたC60やC70フラーレンについて,ケージの種類に依存したBe-7の半減期変化をもとにフラーレン内のポテンシャルの深さや幅が推測でき,半減期変化の大きさばかりでなく,フラーレンの電子状態の知見を導き、まとめる予定である.また,電子を剥ぎ取る力が最大のフッ素と7Beが化学結合するBeF2 について半減期をしらべ,電気陰性度の大きさと1s,2s電子の原子核位置での電子密度の関連を導出ことを試みる.さらに,超伝導転移する金属ニオブ(Nb)内で,Be-7減期変化を室温とT=5Kで調べ,全電子第一原理計算手法を用いて7Be の置かれたポテンシャルと,核位置での電子密度を求める.実験・理論両面から,化学形や金属結晶形,および温度による核外電子状態などの環境変化がEC 崩壊に及ぼす影響を調べる. 最終的にこれらの結果をまとめてレビューする予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年3月11日の震災によりBe-7を製造する加速器や自動測定装置だ大きなダメージを受けた。昨年末より加速期の再稼働が実現し、やっと実験が可能となった。 当初の計画では3年で終了予定であったが、約2年以上も震災のために実験が遅れてしまったので、1年の延期を申請した。 金属ベリリウムやその他の金属、フッ化ベリリウム(BeF2)の実験器具類の取得及び解析用コンピュータの取得と国内外の学会発表等の旅費に当てる。
|
Research Products
(3 results)