2012 Fiscal Year Research-status Report
放射光による準安定リチウムイオンビームの生成と利用
Project/Area Number |
23600009
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
東 善郎 上智大学, 理工学部, 教授 (50270393)
|
Keywords | 原子分子物理 / 光イオン化 / ぺニングイオン化 / 光電子分光 / 放射光 |
Research Abstract |
2012年6月に高エネルギー加速器研究機構放射光実験施設において引き続き光イオン飛行時間分析装置(ToF)を転用した予備実験を行った。この予備実験において、flight tube およびMCP 前面の電位を通常と逆転(正にする)させることにより、本来の加速領域に導入したターゲットガスから生じたペニング電子を検出するというものである。リチウムイオン生成の後に、イオンは検出器方向に向かい、光電子は反対方向に排除される。今回は前年のように時間ゲートをかけるだけではなく、リストモードにてペにング電子発生の時間構造をより詳細に解析することができた。また、同光イオン飛行時間分析装置をもちいて、マンガン金属蒸気の光イオン分光測定も行った。 さらに、9月には、米国ローレンスバークレー国立研究所において放射光実験施設Advanced Light Sourceを行った。これは、光イオン化によって生成したリチウムイオンに対してターゲットガス(希ガス)を噴射して生ずるペニング電子を解析する試みであったが、通常の光電子によるバックグラウンドが大きく、目的のペニング電子を確実に検出することは困難であった。ただし、分光器調整作業のための測定を通じて、キセノン原子内殻光イオン化における光電子再捕獲とオージェー電子のPCI効果について興味深い知見が得られた。これは、光イオン化閾値に近い領域においてオージェー電子ピークにおける連続的なPCI効果から光電子捕獲によって、離散的なリュドベリ列構造が見られるようになるまでの漸次的な変化を明らかにしたものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度において、東日本大震災のため、放射光実験施設等における実験がほぼ全面的に停止したことの影響があった。さらには、米国ローレンスバークレー国立研究所におけるユーザータイムが予想より少なくしか得られなかった。また、同研究所のScienta半球型光電子アナライザーの整備状態がわるく、ビームタイムの大半を装置調整にもちいなければならなかった。最終年度において、今までの経験を生かして充分な成果を得ることを期待したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
米国ローレンスバークレー国立研究所における再度の測定を試みる。希ガスおよび各種の気相2原子分子について一連のペニング電子エネルギー分解測定を行う。イオンToFを併用してペニング過程による2原子分の解離フラグメントを測定する可能性をさぐる。また、上智大学において新しく購入したScientaR4000型光電子アナライザーに金属蒸気オーブンを加え、日本においても実験を可能にする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
米国Advanced Light Source, Berkeley における実験のための人員(研究者自身および大学院生)の旅費および機材運搬費として用いる。また、改良型のリチウム蒸気オーブンの製作にあてる。
|
Research Products
(2 results)