2013 Fiscal Year Research-status Report
高温超電導電流センサーとSQUIDを用いたビーム電流計の高感度化
Project/Area Number |
23600015
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
渡邉 環 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 専任技師 (30342877)
|
Keywords | 国際研究者交流 / ドイツ / スイス / アメリカ |
Research Abstract |
本研究の目的は、重イオンビームのDC電流を、非破壊で高感度に測定するビーム電流計を開発することである。現在、脳磁や心磁の測定に利用される超電導量子干渉素子SQUID (Superconducting Quantum Interference Device)をビーム電流計に応用したSQUIDモニターの開発を進めている。本研究では、臨界温度の高い高温超電導体を用い、冷凍機によって冷却を行っているため、装置はコンパクトになり、ランニングコストの大幅な低減が可能となる。既に完成したプロトタイプにおいては電流分解能が100 nAであるので、これをさらに高感度化し、小型化することが本研究の目的である。 本研究における高感度化の検出装置は、1.高温超電導SQUID 、2.高温超電導電流センサー、3.高透磁率マグネティックコア、によって構成されるが、平成24年度にこれらの装置の開発と製作を完了した。さらに、環境磁気ノイズの遮蔽強化のため、4.ミューメタル材を用いたSQUID冷却フォルダーを開発し、5.ノイズキャンセラを導入した。特に、2.高温超電導電流センサーの開発は、最も重要な課題であり、科研費の大半をこの研究に充てた。実用機の製作に先立ち、高温超電導のサンプルを用いた臨界温度、臨界電流の測定、X線による結晶構造の解析等、基礎的な調査を行った。その後、電力中央研究所で開発されたMgO基盤表面へのサンドブラスト法の適用、高温超伝導材の塗布装置の製作等、製作ノウハウを確立できた事は、本研究にとって大きな意義があった。 既存のSQUIDモニタープロトタイプを解体し、上記の高感度化検出装置と交換し、再組立て作業を終了した。今年より、実用機として使用するため、加速器施設のビームラインにインストールした。現在、サイクロトロンで加速されたウランビームの電流測定と解析を鋭意進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記した様に、本研究における高感度化の検出装置である、1.高温超電導SQUID 、2.高温超電導電流センサー、3.高透磁率マグネティックコア、 4.ミューメタル材によるSQUID冷却フォルダー、5.ノイズキャンセラは、その開発と製作を完了した。既存のSQUIDモニタープロトタイプを解体し、上記の高感度化の検出装置と交換後に、再組み立て作業を行った。実機としての使用を目指し、冷凍機を再稼働し、信号源を用いた模擬ビーム電流により、ゲインと周波数応答性の測定を行った。また、外部磁場を三軸磁場センサーにより検出し、それを三軸のコイルによりキャンセルするノイズキャンセラを用いることにより、DCおよびACの両面から磁気遮蔽率の測定を行った。そのデータを元に、環境磁気ノイズの解析と評価を行っている。これらの測定より、3.高透磁率マグネティックコアの使用は、ゲインを上げる利点がある一方、周波数特性が良くなく、さらにノイズを集めてしまう事も判明し、最終的には使用しないという結論に至った。また、ビームラインへ移設後の冷却過程では、輻射を防ぐためのスーパーインシュレーターの劣化により、SQUIDが超電導化する転移温度まで冷却することができず、冷却強化の改造作業が必要となった。 上記のような一部の仕様変更と追加作業も生じたが、交付申請書においては、SQUIDモニター実機への改造後、平成25年には「SQUIDモニター実機の試験」と予定しており、ウランビームの電流測定に成功しているので、本研究は「おおむね順調に進展している」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、理化学研究所の加速器施設へのインストールが終了し、サイクロトロンで加速されたウランビームの電流測定と解析を進めている。今後、データ取得と解析作業に並行してソフトウエアの開発を進める。得に、ビーム電流の周波数解析を行う事により、ビームに重畳するリップルの解析を行い、その原因を調査する。また、RIビームファクトリーにおいては、加速するイオン種によって異なる加速器を使用するので、これら幾つかの加速モード毎に測定を行い、加速器系のビーム安定度の知見を得る。さらに、SQUIDモニター実機に放射線用ドッチメーターを取り付け、耐放射線のデータを取得する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に、RIBFで加速されたビームを使用し、ビーム電流の測定を行うとともに学会に於いて発表の予定だったが、RIBFの実験開始が3月後半からとなったため、計画を変更し、ビーム電流の測定と解析を3月後半から6月まで行うこととしたため、次年度使用額が生じた。 ビーム電流の測定・解析と学会での発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることととしたい。
|
Research Products
(4 results)